「80歳で自分の歯は何本残っているのだろう?」と気になっている方はいませんか?年齢を重ねるにつれて歯の健康は気になるものです。特に80歳という節目では、平均的な歯の本数や、健康な歯を維持するための方法について知りたいと思う方も多いでしょう。
本記事では、80歳での歯の本数平均や、厚生労働省と日本歯科医師会が推進する「8020運動」について詳しく解説します。さらに、歯を失う原因や、健康な歯を長く保つための口腔ケアのコツ、そしてもし歯を失ってしまった場合の選択肢まで、幅広くご紹介します。この記事を読んで、ご自身の歯の健康を見つめ直し、豊かな食生活と健康寿命の延伸を目指しましょう。
80歳での歯の本数平均と「8020運動」の目標

80歳になったとき、自分の歯が何本残っているのかは、多くの方が関心を持つテーマです。ここでは、具体的な平均本数と、健康な歯を維持するための目標として掲げられている「8020運動」について掘り下げていきます。
80歳で平均何本の歯が残っている?
一般的に、高齢になると残っている自分の歯の数は少なくなる傾向にあります。後期高齢者(75歳以上)の平均残存歯数は約16本とされており、約3割の人が総入れ歯を使っているというデータもあります。しかし、昔に比べると歯の喪失状況は改善傾向にあり、国際的に見ても日本人の高齢者は比較的歯が残っていると言えるでしょう。
また、80歳を過ぎた方の平均残存歯数は約10本程度という報告もありますが、これはあくまで平均であり、個人差が大きいのが実情です。
歯の寿命は平均して50年~65年とされており、特に60歳を超えると歯を失う本数が増える傾向にあります。特に奥歯は前歯よりも平均して10年程度早く失われることもあります。自分の歯が多く残っていることは、食事を美味しく楽しめるだけでなく、全身の健康にも深く関わってくるため、日頃からのケアが非常に大切です。
「8020運動」とは?その重要性を知る
「8020(ハチ・マル・ニイ・マル)運動」とは、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という目標を掲げた国民運動です。この運動は、1989年(平成元年)に厚生省(当時)と日本歯科医師会が提唱し、開始されました。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができ、生涯にわたって自分の歯で食べる楽しみを味わえるという願いが込められています。
「8020運動」の達成率は年々向上しており、2011年には「歯科口腔保健の推進に関する法律」が制定されるなど、口腔ケアへの関心が高まっています。歯が多く残ることで、ごはんを美味しく食べられ、しっかり栄養を摂ることが可能です。さらに、よく噛むことは脳を刺激し、認知症の予防にもつながると言われています。健康な歯を維持することは、全身の健康を守るためにも非常に重要であり、健康寿命の延伸に直結すると考えられています。
歯を失う主な原因と高齢者の口腔トラブル

年齢を重ねると、歯を失うリスクは高まります。その主な原因を知ることは、効果的な予防策を講じる上で欠かせません。ここでは、高齢者の歯の喪失につながる主な口腔トラブルについて解説します。
歯周病と虫歯が高齢者の歯を奪う
高齢者が歯を失う二大原因は、虫歯と歯周病です。特に歯周病は、高齢者にとって歯を失う第一の原因とされています。加齢とともに歯周病にかかる人の割合が高まるのは、歯ぐきの血行不良や免疫力の低下、唾液の減少などが原因です。歯周病が進行している人の割合が最も高いのは65~74歳で、75歳以上になると歯を失う人が多いため、その割合は減少していきます。
歯周病は、歯垢(プラーク)や歯石に生息する細菌が歯ぐきに炎症を起こし、歯を支える骨を溶かす病気です。日本では15歳以上の人の約50%が歯周病になっていると言われています。歯周病は、放置すると歯を失う原因となるだけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす生活習慣病の一つです。また、高齢者に虫歯が多い理由は、加齢に伴う唾液分泌量の減少や、不十分な歯磨きによる歯垢の蓄積、糖分の多い食品の摂取などが挙げられます。
唾液には口の中を洗い流す自浄作用や、酸を中和する緩衝作用がありますが、唾液の減少によりこれらの機能が低下し、虫歯のリスクが高まるのです。
加齢による口腔機能の低下とオーラルフレイル
加齢は、歯や歯周組織だけでなく、口腔機能全体に変化をもたらします。噛み合わせの力の減少や咀嚼能力の低下、唾液の性質の変化や分泌量の減少などが挙げられます。これらの変化は、虫歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、さらに深刻な問題を引き起こす可能性があります。
近年注目されているのが「オーラルフレイル」です。オーラルフレイルとは、口腔機能の軽微な衰えを指し、放置すると全身の虚弱(フレイル)や要介護状態につながる可能性があるという考え方です。具体的には、滑舌が悪くなる、食べこぼしが増える、むせやすくなる、硬い食べ物が噛みにくい、口の中が乾燥するといった症状が挙げられます。
オーラルフレイルの早期発見と適切な対応は、健康寿命の延伸に直結すると言われています。口腔機能の衰えは、身体的、精神的、社会的な健康と大きな関わりを持っているため、日頃から意識してケアすることが大切です。
歯の喪失が全身の健康に与える影響
歯を失うことは、単に食べ物が噛みにくくなるだけでなく、全身の健康に多大な影響を及ぼします。歯の喪失は、栄養摂取への影響、認知症のリスク増加、全身疾患との関連など、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
まず、歯を失うと食べ物を十分に咀嚼できなくなり、栄養バランスが崩れることがあります。特に高齢者では、栄養不足が筋力低下や免疫力低下を招き、健康寿命を短縮する要因となります。また、歯の残存本数と認知症の発症には明確な関連があるとする研究が多くあります。歯が少ない人は、歯が多い人に比べて認知症の発症リスクが約2倍になるという報告もあります。
噛む行為は脳の血流を促進し、神経細胞を活性化させる重要な役割を担っており、特に記憶を司る海馬への刺激は認知症予防に深く関係していると考えられています。
さらに、歯周病は口の中だけの病気ではなく、全身の病気と密接に関係していることが分かっています。歯周病菌は血流を介して体内を巡り、糖尿病、心筋梗塞、動脈硬化、脳梗塞などのさまざまな疾患を引き起こす可能性があります。また、高齢者の死亡原因にもつながる誤嚥性肺炎のリスクも高まります。このように、歯の健康は全身の健康と深く結びついており、歯を失うことは健康寿命を大きく左右する重要な問題なのです。
80歳になっても健康な歯を保つための口腔ケア

80歳になっても自分の歯で美味しく食事をするためには、日頃からの適切な口腔ケアが不可欠です。ここでは、健康な歯を長く維持するための具体的なコツをご紹介します。
日常の歯磨き習慣を見直す
毎日の歯磨きは、虫歯や歯周病を予防する上で最も基本的なケアです。しかし、ただ磨くだけでなく、正しい方法で丁寧に磨くことが重要になります。高齢になると、歯ぐきが下がり歯の根元が露出しやすくなるため、歯と歯ぐきの境目や歯と歯のすき間に汚れが溜まりやすくなります。
歯ブラシは、柔らかな毛を持つものを選び、力を入れすぎずに小刻みに動かして、歯の1本1本を丁寧に磨くように心がけましょう。歯間ブラシやデンタルフロスを併用することで、歯ブラシだけでは届きにくい歯と歯の間の歯垢を効果的に除去できます。また、高齢者は唾液の分泌量が減少しやすいため、口腔内が乾燥しがちです。唾液腺マッサージや保湿剤の活用も、口腔内の乾燥を防ぎ、虫歯や歯周病のリスクを減らすのに役立ちます。
入れ歯を使用している場合は、入れ歯の清掃も非常に重要です。入れ歯に付着した汚れが歯周病の原因になったり、合っていない入れ歯を使い続けることで歯ぐきに慢性的な刺激が加わり、炎症を引き起こすこともあります。毎食後に義歯用ブラシで丁寧に洗浄し、就寝中は専用の洗浄剤に浸して保管するなど、清潔を保つようにしましょう。
定期的な歯科検診とプロフェッショナルケアの重要性
日々のセルフケアだけでは、口の中のトラブルを完全に防ぐことは難しいものです。そこで重要になるのが、定期的な歯科検診と歯科医院でのプロフェッショナルケアです。歯科医院では、自分では気づきにくい初期の虫歯や歯周病を発見し、適切な治療を受けることができます。
プロフェッショナルケアでは、歯科衛生士による専門的なクリーニングで、歯ブラシでは落としきれない歯石やバイオフィルムを除去します。これにより、歯周病の進行を食い止め、健康な状態を維持することが可能です。また、噛み合わせのチェックや、入れ歯の調整、口腔機能の評価なども行い、一人ひとりの状態に合わせたアドバイスを受けることができます。
定期的な歯科検診は、歯の健康を長く保つための「予防のための習慣」として、積極的に取り入れるべきです。
食生活と生活習慣が歯の健康に与える影響
歯の健康は、日々の食生活や生活習慣と密接に関わっています。バランスの取れた食事は、歯や歯ぐきを強く保つために不可欠です。特にカルシウム、ビタミンD、ビタミンC、タンパク質の摂取は、歯と歯ぐきの健康に重要です。一方で、砂糖や酸性飲料の過剰な摂取は、虫歯のリスクを高めるため、摂取量を制限することが推奨されます。
よく噛むことも、歯の健康にとって非常に大切です。咀嚼は、食べ物を噛み砕くだけでなく、唾液の分泌を促し、口腔内の環境を整える役割も担っています。特に高齢者にとっては、しっかりと噛むことが認知症予防にもつながるとされています。そのため、食事の際にはよく噛むことを意識し、柔らかいものばかり食べる習慣を避けるようにしましょう。
喫煙は、歯周病のリスクを高め、治療の効果を低下させることが知られています。禁煙は、歯の健康だけでなく、全身の健康にとっても良い影響をもたらします。また、ストレスも免疫力の低下を通じて歯周病を悪化させる要因となるため、適切なストレス管理も大切です。これらの食生活と生活習慣を見直すことで、80歳になっても健康な歯を維持し、豊かな生活を送るための土台を築くことができます。
歯を失ってしまった場合の選択肢

どんなに気をつけていても、加齢や病気によって歯を失ってしまうことはあります。しかし、現代の歯科医療には、失った歯の機能を補い、快適な生活を取り戻すための様々な選択肢があります。ここでは、主な治療法である入れ歯、インプラント、ブリッジについて解説します。
入れ歯の種類と特徴
入れ歯(義歯)は、失った歯を補うための最も一般的な方法の一つです。大きく分けて、全ての歯を失った場合に用いる「総入れ歯」と、一部の歯が残っている場合に用いる「部分入れ歯」があります。
入れ歯のメリットは、比較的費用が抑えられることや、外科手術が不要であることです。また、取り外しができるため、清掃がしやすいという特徴もあります。しかし、デメリットとしては、噛む力が天然歯に比べて劣ること、異物感があること、定期的に調整や作り直しが必要になることなどが挙げられます。特に、顎の骨は歯がなくなると徐々に痩せていくため、入れ歯が合わなくなり、痛みを感じたり、ずれやすくなったりすることがあります。
そのため、定期的に歯科医院でチェックを受け、調整や修理、新製を行うことが大切です。
インプラント治療のメリットとデメリット
インプラント治療は、歯を失った部分の顎の骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を取り付ける治療法です。インプラントは、まるで自分の歯のようにしっかりと噛めるようになる点が最大のメリットです。周囲の健康な歯を削る必要がなく、独立した歯として機能するため、他の歯に負担をかけません。また、見た目も自然で、審美性にも優れています。
インプラント治療は年齢の上限がなく、80代や90代でも手術を受けることは可能です。しかし、高齢者の場合は、骨密度の低下や全身の健康状態が大きく影響するため、事前の診断が非常に重要になります。糖尿病や高血圧などの持病がある場合、インプラント手術のリスクが高まるため、事前に医師と相談し、病状をコントロールすることが必要です。
デメリットとしては、外科手術が必要であること、費用が高額になること、治療期間が長くなること、そして術後の適切なメンテナンスが不可欠であることなどが挙げられます。特に、高齢になると通院が困難になる場合もあり、定期的なメンテナンスを怠るとインプラント周囲炎などのリスクが高まります。
ブリッジ治療の選択肢
ブリッジは、失った歯の両隣に残っている歯を削り、それを土台として連結した人工の歯を橋のように架ける治療法です。固定式であるため、入れ歯のような取り外しの手間がなく、比較的違和感が少ないというメリットがあります。また、インプラントに比べて治療期間が短く、費用も抑えられる傾向にあります。
しかし、ブリッジのデメリットは、健康な歯を削る必要がある点です。土台となる歯に負担がかかるため、長期的に見るとその歯の寿命を縮める可能性があります。また、歯を失った本数や位置によっては適用できない場合もあります。ブリッジの下に食べかすが詰まりやすく、清掃がしにくいと虫歯や歯周病のリスクが高まるため、丁寧な口腔ケアが求められます。
よくある質問

ここでは、80歳での歯の健康に関してよく寄せられる質問にお答えします。
80歳で歯が全くないのは普通ですか?
80歳で歯が全くない状態は、決して「普通」ではありません。厚生労働省と日本歯科医師会が推進する「8020運動」では、80歳で20本以上の自分の歯を残すことを目標としています。多くの高齢者が歯を失う主な原因は虫歯や歯周病であり、適切な口腔ケアと定期的な歯科検診によって、歯の喪失を防ぐことは十分に可能です。
もし歯が全くない場合は、入れ歯やインプラントなどの治療法で噛む機能を回復させることが、全身の健康維持にとって非常に重要になります。
歯が少ないと認知症になりやすいですか?
はい、歯が少ないと認知症になりやすいという研究結果が多数報告されています。噛む行為は脳への血流を促進し、神経細胞を活性化させる重要な役割を担っています。特に記憶を司る海馬への刺激は、認知症予防に深く関係していると考えられています。歯を失い、噛む力が衰えると、この脳への刺激が減少し、認知機能が低下するリスクが高まると言われています。
歯がほとんど残っていない方は、20本以上歯が残っている方に比べて約2倍、認知症になりやすいという報告もあります。失った歯を放置せず、義歯などで噛める状態を回復させることが、認知症予防にもつながります。
歯周病は治りますか?
歯周病は、初期の段階であればスケーリングやセルフケアの見直しによって改善が可能です。しかし、一度進行してしまった歯周病(歯周炎)は、完全に元の状態に「完治」させるのは非常に難しい病気です。これは、一度失われた歯を支える骨が完全には元に戻らないためです。しかし、適切な治療と継続的なケアによって、病気の進行を食い止め、炎症を抑え、健康な状態を維持し続けること、すなわち「コントロール」することは十分に可能です。
定期的な歯科検診とプロフェッショナルケア、そして日々の丁寧な歯磨きが、歯周病の進行を抑えるコツとなります。
歯の健康は健康寿命にどう影響しますか?
歯の健康は、健康寿命に大きく影響します。東北大学大学院歯学研究科の調査によると、20本以上の歯を持つ高齢者は、歯がほとんどない高齢者と比較して、健康寿命が長く、要介護期間が短いことが明らかになりました。特に85歳以上では、20本以上歯がある人は、そうでない人に比べて健康寿命が男性で92日、女性で70日も長いという結果が出ています。
歯を失うと、食べ物を十分に咀嚼できなくなり、栄養バランスが崩れる可能性があります。栄養不足は筋力低下や免疫力低下を招き、健康寿命を短縮する要因となります。また、よく噛むことは脳を刺激し、認知症の予防にもつながるため、歯の健康は全身の健康維持に不可欠です。
高齢者の口腔ケアで特に注意すべき点は何ですか?
高齢者の口腔ケアでは、いくつかの注意点があります。まず、加齢に伴い唾液の分泌量が減少するため、口腔内が乾燥しやすくなります。これにより、虫歯や歯周病のリスクが高まるため、保湿剤の活用やこまめな水分補給が大切です。また、歯ぐきが下がり、歯の根元が露出することで、知覚過敏が起こりやすくなることもあります。
柔らかい歯ブラシを使用し、優しく磨くようにしましょう。
さらに、嚥下機能(飲み込む力)の低下により、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。口腔ケアの際は、体を起こして行い、食べかすや唾液の誤嚥を防ぐ工夫が必要です。入れ歯を使用している場合は、入れ歯の清掃だけでなく、粘膜の清掃も忘れずに行いましょう。認知症などで自分で口腔ケアが難しい場合は、介護者が優しく声をかけながらサポートし、無理強いしないことが長続きさせるコツです。
まとめ
- 80歳での歯の本数平均は個人差が大きいものの、約10~16本という報告があります。
- 「8020運動」は80歳で20本以上の自分の歯を残すことを目標とする国民運動です。
- 20本以上の歯があれば、豊かな食生活と健康寿命の延伸につながります。
- 高齢者が歯を失う主な原因は歯周病と虫歯です。
- 加齢による唾液減少や免疫力低下が歯周病・虫歯のリスクを高めます。
- 口腔機能の衰え「オーラルフレイル」は全身の健康に影響を与えます。
- 歯の喪失は栄養不足や認知症リスクの増加につながります。
- 毎日の丁寧な歯磨きと歯間ケアが口腔健康の基本です。
- 定期的な歯科検診とプロフェッショナルケアは歯の健康維持に不可欠です。
- バランスの取れた食生活と禁煙などの生活習慣が歯の健康を支えます。
- 入れ歯は費用を抑えられますが、噛む力や異物感に課題があります。
- インプラントは天然歯に近い噛み心地ですが、外科手術と費用が必要です。
- ブリッジは固定式で違和感が少ないですが、健康な歯を削る必要があります。
- 歯が全くない場合でも、義歯などで噛む機能を回復させることが大切です。
- 高齢者の口腔ケアでは、誤嚥防止や口腔乾燥対策が特に重要です。
