日常生活で不意に転倒し、怪我をしてしまうことは大人でも珍しくありません。しかし、いざ怪我をしてしまうと、「何科の病院に行けばいいのか」「すぐに病院に行くべきか」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。適切な処置と病院選びは、怪我の回復を早め、後遺症を防ぐためにとても大切です。
本記事では、大人が転倒で怪我をした際に知っておきたい病院の選び方や応急処置、緊急性の判断基準について詳しく解説します。いざという時に慌てず対処できるよう、ぜひ参考にしてください。
転んで怪我をした時にまず確認することと応急処置

転倒して怪我をしたら、まずは落ち着いて状況を確認し、適切な応急処置を行うことが大切です。慌てて行動すると、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあります。
怪我の状況と体の状態を確認する
転倒直後は、まず自身の安全を確保し、怪我の状況を冷静に把握しましょう。出血の有無、痛みのある部位、腫れや変形の有無などを確認します。特に、頭を打った場合は意識の状態や吐き気、めまいがないか注意が必要です。
また、手足が動かせるか、体重をかけられるかなども確認し、無理に動かさないようにしましょう。周囲に人がいれば助けを求め、一人でいる場合は、すぐに動かずに少し様子を見ることも大切です。
応急処置の基本「RICE処置」
打撲や捻挫、骨折の可能性がある場合は、応急処置の基本である「RICE処置」を覚えておくと良いでしょう。RICEとは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取ったものです。患部を安静に保ち、氷などで冷やし、包帯などで軽く圧迫し、心臓より高い位置に挙げることで、腫れや痛みを抑えられます。
擦り傷や切り傷の場合は、まず水道水で傷口をきれいに洗い流し、砂や泥などの異物を取り除くことが重要です。消毒はせず、清潔なガーゼなどで保護しましょう。
大人が転倒で怪我をした場合の病院選び:何科を受診すべきか

転倒による怪我は多岐にわたるため、症状に応じて適切な診療科を選ぶことが重要です。誤った科を受診すると、診断や治療が遅れる可能性もあります。ここでは、主な怪我の種類と受診すべき科について解説します。
骨折・捻挫・打撲の疑いがある場合:整形外科
手足や体幹を強く打ち、痛みや腫れがひどい、変形がある、体重をかけられないといった場合は、骨折や捻挫、打撲の可能性があります。このような症状が見られる場合は、迷わず整形外科を受診しましょう。整形外科は、骨、関節、筋肉、靭帯、神経などの運動器の疾患を専門とする科であり、レントゲンやMRIなどの画像検査で正確な診断が可能です。
特に、30分ほど安静にした後でも痛みが強い、明らかに腫れている、左右差のある変形がある、内出血がみられる、痛みで歩けない・動かせないといった場合は、骨折の可能性が高いので早めに受診してください。
頭を強く打った場合:脳神経外科
転倒して頭を強く打った場合は、外見上は軽傷に見えても、脳に損傷を受けている可能性があります。頭痛、吐き気、めまい、意識がぼーっとする、けいれん、手足のしびれや脱力、ものが二重に見えるなどの症状がある場合は、速やかに脳神経外科のある病院を受診することが大切です。特に、70歳以上の高齢者の場合、頭を打ってから数週間から数ヶ月後に頭の中に血液がたまる「慢性硬膜下血腫」を発症することもあるため、注意が必要です。
擦り傷・切り傷・やけどの場合:外科または皮膚科
転倒による擦り傷や切り傷、やけどの場合は、外科や皮膚科を受診するのが一般的です。傷口が深く、出血が止まらない、異物が深く刺さっている、広範囲にわたるやけどなどの場合は、早めに医療機関で適切な処置を受けることが感染症予防や傷跡をきれいに治すためにも重要です。形成外科でも擦り傷や切り傷の治療を専門的に扱っており、傷跡を最小限にするための治療に力を入れています。
その他の症状や判断に迷う場合:総合病院の救急外来
複数の部位を怪我した、どの科を受診すべきか判断に迷う、症状が重く緊急性が高いと感じる場合は、総合病院の救急外来を受診することを検討しましょう。救急外来では、初期対応として様々な症状に対応できる体制が整っています。ただし、救急外来は緊急性の高い患者さんを優先するため、症状によっては長時間待つこともあります。
受診前に電話で相談し、指示を仰ぐのが良いでしょう。
病院に行くべきかどうかの判断基準

転倒による怪我の程度は様々であり、すべてのケースで緊急に病院に行く必要があるわけではありません。しかし、中にはすぐに医療機関を受診すべき危険な症状も存在します。ここでは、病院に行くべきかどうかの判断基準を解説します。
すぐに病院に行くべき危険な症状
以下のような症状が見られる場合は、自己判断せずにすぐに病院を受診してください。命に関わる重篤な怪我や、後遺症につながる可能性のある怪我のサインかもしれません。
- 意識が朦朧としている、呼びかけに反応が鈍い
- 頭痛が徐々に強くなる、激しい頭痛がする
- 吐き気や嘔吐が何度も続く
- 手足に力が入らない、しびれがある
- けいれんを起こしている
- 目が見えにくい、ものが二重に見える、焦点が定まらない
- 耳や鼻から水や血液が止まらない
- 骨が変形している、関節が異常な方向に曲がっている
- 大量に出血している、出血が止まらない
- 痛みが非常に強く、動かせない、体重をかけられない
- 胸や腹部を強く打ち、呼吸が苦しい、腹痛がひどい
これらの症状は、脳内出血や内臓損傷、重度の骨折など、緊急性の高い状態を示している可能性があります。特に頭部を打った場合は、症状が遅れて現れることもあるため、注意深く経過を観察することが重要です。
様子を見ても良いケースと注意点
軽度の打撲や擦り傷で、上記のような危険な症状が見られない場合は、自宅で応急処置をして様子を見ることも可能です。例えば、ぶつけた部分が少し腫れている程度で、痛みも我慢できる範囲であれば、RICE処置を行いながら数日様子を見ても良いでしょう。
しかし、数日経っても痛みが引かない、腫れがひどくなる、内出血が広がるなど、症状が悪化する場合は、念のため病院を受診することをおすすめします。自己判断で放置すると、思わぬ重症化や、適切な治療の遅れにつながる可能性もあります。特に高齢者の場合、軽微な転倒でも骨折につながりやすく、長期安静によるADL(日常生活動作)の低下を招くこともあるため、慎重な判断が求められます。
夜間や休日に怪我をした場合の対処法

夜間や休日に急な怪我をしてしまった場合、通常の診療時間外であるため、どこに相談し、どの病院に行けば良いか迷うことがあります。いざという時に困らないよう、対処法を知っておきましょう。
救急相談窓口の活用
「救急車を呼ぶべきか」「今すぐ病院に行くべきか」判断に迷った場合は、全国共通の電話相談窓口「#7119」(救急安心センター事業)を活用しましょう。医師、看護師、救急救命士などの専門家が、電話で症状を聞き取り、応急手当の方法や適切な医療機関の案内、緊急性が高いと判断した場合は救急車の要請など、状況に応じたアドバイスをしてくれます。
このサービスは、緊急性の高い傷病者が救急車を迅速に利用できるよう、救急車の適正利用を促す目的もあります。東京都では「東京消防庁救急相談センター」、子供の場合は「子供の健康相談室(#8000)」も利用できます。
休日・夜間診療を行う病院の探し方
救急相談窓口で病院受診を勧められた場合や、自分で病院を探す必要がある場合は、お住まいの地域の自治体ホームページや広報誌で、休日・夜間診療を行っている医療機関の情報を確認しましょう。多くの地域で、休日夜間急患診療所や、外科系初期救急病院などが設けられています。ただし、夜間・休日の時間外診療は、急な病気や怪我などの緊急性のある患者さんのために設置されているため、通常の診療とは異なり、必要な検査が受けられない場合や、割増料金が請求されることがあります。
受診する前に必ず電話で連絡し、症状を伝えて受け入れ可能か確認することが大切です。
病院受診時に準備しておくと良いものと伝えたいこと

病院を受診する際は、事前にいくつかの準備をしておくと、診察がスムーズに進み、適切な診断や治療につながります。また、医師に正確な情報を伝えることも非常に重要です。
受診時に持参するものリスト
病院へ行く際には、以下のものを準備しておくと安心です。
- 健康保険証、各種医療証(高齢者医療受給者証など)
- お薬手帳(服用中の薬がある場合)
- 診察券(以前に受診したことがある場合)
- 現金またはクレジットカード(医療費支払いのため)
- 筆記用具とメモ帳(医師の説明を記録するため)
- タオルやハンカチ(怪我の保護や清潔保持のため)
- 症状をメモしたもの(いつ、どこで、どのように転倒したか、どのような症状があるかなど)
特に、保険証がないと医療費が全額自己負担となる場合があるため、忘れずに持参しましょう。お薬手帳は、服用している薬と怪我の治療薬との飲み合わせなどを医師が判断する上で重要な情報となります。
医師に伝えるべき情報
診察時には、医師に以下の情報を具体的に伝えることで、より正確な診断につながります。
- いつ、どこで、どのように転倒したか
- 転倒時の状況(滑った、つまずいた、意識を失ったなど)
- 怪我をした部位と、どのような痛みがあるか(ズキズキする、ジンジンする、動かすと痛いなど)
- 腫れや内出血の有無、程度
- 頭を打った場合は、意識を失ったか、吐き気やめまい、頭痛などの症状があるか
- 持病やアレルギーの有無、現在服用している薬
- 過去に同じような怪我をしたことがあるか
- 応急処置として何をしたか
これらの情報を具体的に伝えることで、医師は怪我の状態を正確に把握し、適切な検査や治療方針を決定できます。特に、転倒時の状況や頭部打撲の有無は、診断に大きく影響するため、詳しく伝えるように心がけましょう。
よくある質問

- 転んで怪我をした場合、保険は適用されますか?
- 子供が転んだ場合と大人では受診する科は違いますか?
- 病院に行くのが遅れるとどうなりますか?
- 転倒による怪我の予防策はありますか?
- 軽い打撲でも病院に行った方が良いですか?
転んで怪我をした場合、保険は適用されますか?
はい、転倒による怪我の治療には、基本的に公的医療保険が適用されます。自己負担割合に応じて医療費を支払うことになります。また、加入している生命保険や傷害保険によっては、怪我による通院や入院に対して保険金が支払われる場合がありますので、ご自身の保険契約を確認してみることをおすすめします。
子供が転んだ場合と大人では受診する科は違いますか?
基本的な受診科は大人と大きくは変わりませんが、小児科医が常駐している小児整形外科や、小児専門の救急外来がある病院を選ぶと、より専門的な対応が期待できます。子供の場合、症状をうまく伝えられないこともあるため、保護者が注意深く観察し、異変があればすぐに医療機関を受診することが大切です。
病院に行くのが遅れるとどうなりますか?
怪我の種類にもよりますが、病院に行くのが遅れると、症状が悪化したり、適切な治療の開始が遅れたりするリスクがあります。例えば、骨折が放置されると、骨がずれたまま固まってしまい、手術が必要になったり、後遺症が残ったりする可能性もあります。また、感染症のリスクも高まります。特に、頭部打撲や内臓損傷など、見た目では分かりにくい怪我は、時間が経ってから重篤な症状が現れることもあるため、早めの受診が重要です。
転倒による怪我の予防策はありますか?
転倒予防には、日頃からの運動習慣で筋力を維持すること、バランス能力を高めるトレーニングを行うこと、住環境を整えることなどが有効です。具体的には、段差をなくす、滑りにくい靴を履く、手すりを設置する、足元を明るくするなどの対策が挙げられます。また、服用している薬によってはめまいやふらつきを引き起こし、転倒リスクを高めるものもあるため、医師や薬剤師に相談することも大切です。
軽い打撲でも病院に行った方が良いですか?
軽度の打撲で、痛みも軽く、腫れや変形がない場合は、自宅でRICE処置を行いながら様子を見ることも可能です。しかし、頭や胸、腹部を打撲した場合は、見えない部分に出血があったり、脳や臓器に損傷を受けていたりする可能性も考えられるため、軽度に見えても病院で診察を受ける方が無難です。また、痛みが徐々に強くなる、内出血が広がるなど、症状が悪化する場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
- 転倒で怪我をしたら、まず落ち着いて状況を確認し、安全を確保する。
- 打撲や捻挫、骨折の疑いがある場合は「RICE処置」で応急処置を行う。
- 骨折・捻挫・打撲の疑いがある場合は整形外科を受診する。
- 頭を強く打った場合は脳神経外科を受診し、意識状態や症状に注意する。
- 擦り傷・切り傷・やけどは外科または皮膚科、形成外科を受診する。
- 判断に迷う場合や重症の場合は総合病院の救急外来を検討する。
- 意識障害、激しい頭痛、嘔吐、手足のしびれ、変形などは緊急受診のサイン。
- 夜間や休日の怪我は「#7119」などの救急相談窓口を活用する。
- 休日・夜間診療を行う病院は事前に電話で確認してから受診する。
- 病院受診時には保険証、お薬手帳、症状メモを持参するとスムーズ。
- 医師には転倒時の状況、怪我の部位、具体的な症状を詳しく伝える。
- 病院に行くのが遅れると症状悪化や後遺症のリスクがある。
- 転倒予防には運動習慣、住環境の整備、薬の確認が大切。
- 軽い打撲でも頭部や体幹の場合は念のため受診を検討する。
- 適切な病院選びと迅速な対処が怪我の回復を早めるコツ。
