健康診断や病院での検査で「クレアチニンクリアランス」という言葉を聞いたことはありますか?この数値は、私たちの腎臓がどれだけ効率良く働いているかを示す大切な指標です。しかし、その「単位」が何を意味するのか、なぜその単位が使われるのか、疑問に感じる方も少なくないでしょう。本記事では、クレアチニンクリアランスの単位に焦点を当て、その意味や測定方法、そして腎臓の健康との関係について分かりやすく解説します。
ご自身の腎臓の健康状態を正しく理解し、日々の生活に役立てるための情報をお届けします。
クレアチニンクリアランスとは?腎臓の濾過能力を示す重要な指標

クレアチニンクリアランス(CcrまたはCrCl)は、腎臓の機能を評価するための重要な検査値の一つです。これは、血液中に含まれる老廃物であるクレアチニンが、腎臓によってどれだけ濾過され、尿中に排泄されたかを示す指標となります。具体的には、一定時間内に腎臓が血液からクレアチニンをどれだけ除去したかを算出し、腎臓の濾過能力を評価するものです。
この指標は、慢性腎臓病の早期発見や、薬剤投与量の調整など、医療現場で幅広く活用されています。
クレアチニンクリアランスの基本的な定義
クレアチニンクリアランスは、腎臓の糸球体と呼ばれる部分が、1分間にどれくらいの血液(血漿)を濾過しているかを示す数値です。この数値が高いほど腎臓の濾過機能が良好であることを意味し、低い場合は腎機能の低下が疑われます。
なぜクレアチニンが指標に使われるのか
クレアチニンは、筋肉を動かすエネルギー源であるクレアチンが代謝された後に生成される老廃物です。このクレアチニンは、体内でほぼ一定量が作られ、腎臓の糸球体で濾過された後、尿中にそのまま排泄されるという特徴があります。 腎臓の機能が低下すると、クレアチニンが十分に排泄されなくなり、血液中のクレアチニン濃度が高くなります。
そのため、血中のクレアチニン濃度を測定することで、腎臓の濾過機能の状態を推測できるのです。
クレアチニンクリアランスの単位は「mL/min」または「mL/min/1.73m²」
クレアチニンクリアランスの単位は、主に「mL/min(ミリリットル毎分)」または「mL/min/1.73m²(ミリリットル毎分毎1.73平方メートル)」が用いられます。これらの単位は、腎臓が1分間にどれだけの血液を濾過しているかを示すために使われます。
単位「mL/min」の意味とその重要性
「mL/min」という単位は、「1分間に何ミリリットルの血液(血漿)からクレアチニンが除去されたか」を表しています。これは、腎臓の濾過速度を直接的に示すものであり、数値が大きいほど腎臓の排泄機能が活発であることを意味します。 腎臓の機能が低下すると、この数値は小さくなります。
体表面積補正「/1.73m²」の理由と計算方法
クレアチニンクリアランスの値は、個人の体格(特に筋肉量)によって変動します。 そこで、体格による影響を補正し、より客観的に腎機能を評価するために「/1.73m²」という体表面積補正が行われます。1.73m²は日本人の平均的な体表面積とされており、この補正を行うことで、異なる体格の人の腎機能を比較しやすくなります。
体表面積は、身長と体重から計算されるのが一般的です。
その他の単位(L/dayなど)と使い分け
クレアチニンクリアランスの測定方法によっては、「L/day(リットル毎日)」という単位が使われることもあります。これは、24時間蓄尿法で測定された尿量に基づいて計算される場合に用いられる単位です。しかし、一般的に医療現場で腎機能の指標として広く使われるのは、より詳細な濾過速度を示す「mL/min」や「mL/min/1.73m²」です。
クレアチニンクリアランスの測定方法と計算式

クレアチニンクリアランスの測定には、主に24時間蓄尿による直接測定と、血清クレアチニン値を用いた推算式の2つの方法があります。それぞれの進め方や特徴を理解することは、検査結果を正しく読み解く上で大切です。
24時間蓄尿による直接測定の進め方
24時間蓄尿法は、その名の通り、24時間分の尿を全て集めることで、より正確なクレアチニンクリアランスを測定する方法です。 具体的には、まず検査開始時に一度排尿し、その尿は捨てます。その後、翌日の同じ時間まで全ての尿を専用の容器にためていきます。この間、血液検査も行い、血清クレアチニン濃度を測定します。
集めた尿の量と尿中のクレアチニン濃度、そして血清クレアチニン濃度を用いて、以下の計算式でクレアチニンクリアランスを算出します。
- CCr (mL/min) = (尿中クレアチニン濃度 × 1分間尿量) ÷ 血清クレアチニン濃度 × (1.73 ÷ 体表面積)
この方法は、日常生活下での腎機能をより正確に評価できるという強みがありますが、採尿忘れや漏れがあると検査精度が落ちるため、患者さんの協力が不可欠です。
血清クレアチニン値を用いた推算式の種類と特徴
24時間蓄尿が難しい場合や、より簡便に腎機能を評価したい場合には、血清クレアチニン値、年齢、性別、体重などを用いてクレアチニンクリアランスを推算する式が用いられます。代表的なものに「Cockcroft-Gault(コッククロフト・ゴールト)の式」があります。
- 男性:(140 – 年齢) × 体重 / (72 × 血清クレアチニン値)
- 女性:男性の計算式 × 0.85
この推算式は、採血のみで腎機能の目安がわかるため、スクリーニング検査や日常診療で広く利用されています。ただし、筋肉量が多い方や少ない方、高齢者など、個人の状態によっては実測値と異なる場合があるため、注意が必要です。
測定時の注意点と正確な結果を得るコツ
クレアチニンクリアランスの測定では、いくつかの注意点があります。24時間蓄尿法の場合、全ての尿を正確に集めることが最も重要です。また、採血前の激しい運動や肉の過剰摂取は、一時的にクレアチニン値を上昇させる可能性があるため、避けることが望ましいです。 薬の影響も考慮する必要があり、特定の薬剤はクレアチニン値に影響を与えることがあります。
正確な結果を得るためには、医師や看護師の指示をよく守り、不明な点があれば質問することが大切です。
クレアチニンクリアランスの基準値と結果の読み解き方

クレアチニンクリアランスの数値は、腎臓の健康状態を判断する上で非常に重要です。しかし、その基準値は年齢や性別によって異なり、また、数値の解釈には他の検査結果や全身状態も考慮する必要があります。
年齢や性別による基準値の違い
クレアチニンクリアランスの正常値は、一般的に成人で100~120 mL/min程度とされています。 しかし、年齢が上がるにつれて腎機能は自然と低下するため、高齢者では若年者よりも低い値が正常範囲内とみなされることがあります。 また、筋肉量の違いから、男性の方が女性よりもやや高値を示す傾向があります。 例えば、40歳以下の男性で116.5±5.1 mL/min、女性で115.0±3.9 mL/minといった目安が示されています。
値が低い場合の健康への影響と原因
クレアチニンクリアランスの値が低い場合は、腎機能の低下が強く疑われます。 腎機能が低下すると、体内の老廃物が十分に排泄されなくなり、体に様々な影響を及ぼす可能性があります。主な原因としては、慢性腎臓病(CKD)、急性腎炎、腎不全、心不全、ショック、尿路閉塞などが挙げられます。 初期段階では自覚症状がないことも多いため、定期的な検査で早期に発見することが大切です。
値が高い場合の解釈
クレアチニンクリアランスの値が基準値よりも高い場合、通常は腎機能が良好であることを示します。しかし、妊娠中や高タンパク食の摂取、特定の薬剤の影響などにより、一時的に高値を示すこともあります。 また、慢性腎不全が進行した一部のケースでは、尿細管からのクレアチニン分泌が増加し、見かけ上高値を示すことがあるため、注意が必要です。
高値だからといって必ずしも問題があるわけではありませんが、他の検査結果と合わせて総合的に判断することが重要です。
クレアチニンクリアランスとeGFR(推算糸球体濾過量)の違い

腎機能を評価する指標として、クレアチニンクリアランスの他にeGFR(推算糸球体濾過量)もよく耳にするでしょう。これら二つの指標はどちらも腎機能の評価に用いられますが、測定方法や特徴に違いがあります。
eGFRとは何か?その特徴と利便性
eGFRは、血清クレアチニン値、年齢、性別などから計算される、糸球体濾過量の推定値です。 採血のみで簡便に腎機能の目安がわかるため、健康診断や日常診療でのスクリーニング検査として広く利用されています。 eGFRは、慢性腎臓病の診断や病期分類に用いられる主要な指標の一つです。 ただし、筋肉量が極端に少ない方や多い方、妊娠中の女性など、特定の状況下では不正確になることがあります。
クレアチニンクリアランスとeGFRの使い分け
クレアチニンクリアランスは、24時間蓄尿を伴うため、eGFRよりも手間がかかりますが、より直接的に腎臓の濾過能力を反映する実測値に近い指標とされています。 特に、薬剤の投与量を厳密に調整する必要がある場合や、腎機能の正確な評価が求められる場合に用いられることが多いです。 一方、eGFRは簡便であるため、多くの人の腎機能をスクリーニングしたり、経時的な変化を追跡したりするのに適しています。
どちらの検査も腎機能の評価に役立ちますが、それぞれの特性を理解し、状況に応じて使い分けることが大切です。
それぞれの検査が示す腎機能の状態
クレアチニンクリアランスもeGFRも、腎臓が血液中の老廃物をどれだけ効率良く濾過しているかを示します。数値が低いほど腎機能が低下していることを意味し、慢性腎臓病の進行度を判断する上で重要な情報となります。 特に、クレアチニンクリアランスは初期の腎機能悪化を鋭敏に捉える特徴があると言われています。 両方の検査結果を総合的に評価することで、より正確な腎機能の状態を把握し、適切な治療や生活習慣の改善につなげることが可能になります。
腎臓の健康を守るためにできること

腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、機能が低下しても自覚症状が出にくい特徴があります。そのため、日頃から腎臓の健康を意識し、予防に努めることが非常に大切です。
生活習慣の見直しと腎臓病予防
腎臓病の予防には、健康的な生活習慣が欠かせません。バランスの取れた食事を心がけ、特に塩分の摂りすぎには注意しましょう。高血圧や糖尿病は腎臓病の大きなリスク因子となるため、これらの生活習慣病の管理も重要です。 適度な運動は全身の健康維持に役立ち、腎臓への負担を軽減することにもつながります。また、十分な水分補給も腎臓の働きを助ける上で大切です。
喫煙や過度な飲酒は腎臓に悪影響を及ぼす可能性があるため、控えるようにしましょう。
定期的な検査の重要性
腎臓病は早期発見・早期治療が非常に重要です。自覚症状がなくても、定期的に健康診断を受け、クレアチニンクリアランスやeGFRなどの腎機能を示す数値をチェックすることが大切です。 特に、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの持病がある方や、家族に腎臓病の既往がある方は、より積極的に検査を受けることをおすすめします。
検査結果に異常が見られた場合は、自己判断せずに速やかに医師に相談し、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
よくある質問

- クレアチニンクリアランスの検査はなぜ24時間蓄尿が必要なのですか?
- クレアチニンクリアランスの値が悪いと言われたらどうすればいいですか?
- eGFRとクレアチニンクリアランス、どちらを重視すべきですか?
- クレアチニンクリアランスの単位はなぜ「mL/min」なのですか?
- 体表面積補正はなぜ必要なのですか?
- クレアチニンクリアランスは食事の影響を受けますか?
- 薬の影響でクレアチニンクリアランスの値は変わりますか?
- クレアチニンクリアランスの正常値はいくつですか?
- クレアチニンクリアランスを改善する方法はありますか?
- 小児のクレアチニンクリアランスの基準値は大人と同じですか?
クレアチニンクリアランスの検査はなぜ24時間蓄尿が必要なのですか?
24時間蓄尿は、日常生活における腎臓の機能をより正確に評価するために必要です。クレアチニンの排泄量は、時間帯や活動量によって変動するため、短時間の採尿だけでは正確な値を把握しにくい場合があります。24時間分の尿を全て集めることで、これらの日内変動を平均化し、腎臓が1日を通してどれだけ老廃物を処理しているかを総合的に判断できます。
クレアチニンクリアランスの値が悪いと言われたらどうすればいいですか?
クレアチニンクリアランスの値が悪いと指摘された場合は、速やかに医師に相談し、詳しい検査を受けることが大切です。腎機能低下の原因を特定し、適切な治療を開始する必要があります。生活習慣の改善(塩分制限、適度な運動、禁煙など)や、基礎疾患(高血圧、糖尿病など)の管理も重要になります。
eGFRとクレアチニンクリアランス、どちらを重視すべきですか?
どちらも腎機能の重要な指標ですが、状況によって使い分けられます。eGFRは採血のみで簡便に推定できるため、スクリーニングや日常診療で広く用いられます。一方、クレアチニンクリアランスは24時間蓄尿が必要ですが、より直接的な腎機能の実測値に近いとされ、薬剤の投与量調整など、より厳密な評価が必要な場合に重視されることがあります。
医師は両方の情報を考慮して総合的に判断します。
クレアチニンクリアランスの単位はなぜ「mL/min」なのですか?
「mL/min」という単位は、「1分間に何ミリリットルの血液(血漿)からクレアチニンが除去されたか」という、腎臓の濾過速度を直接的に表すためです。これは、腎臓が一定時間内に処理できる血液の量を数値化することで、その機能を客観的に評価するために最も適した表現だからです。
体表面積補正はなぜ必要なのですか?
体表面積補正(/1.73m²)は、個人の体格差による影響を排除し、腎機能の評価を標準化するために必要です。クレアチニンクリアランスの値は、筋肉量が多い人ほど高くなる傾向があるため、体表面積で補正することで、異なる体格の人の腎機能を公平に比較できるようになります。
クレアチニンクリアランスは食事の影響を受けますか?
はい、食事の影響を受けることがあります。特に、採血前に大量の肉類を摂取すると、肉に含まれるクレアチンがクレアチニンに変化し、一時的に血清クレアチニン値が上昇することがあります。これにより、クレアチニンクリアランスが見かけ上低く算出される可能性があるため、検査前は食事内容に注意が必要です。
薬の影響でクレアチニンクリアランスの値は変わりますか?
はい、特定の薬剤はクレアチニンクリアランスの値に影響を与えることがあります。例えば、一部の抗菌薬や胃薬、脂質異常症治療薬などは、腎臓からのクレアチニン排泄を妨げ、血清クレアチニン値を上昇させることが知られています。 薬剤を服用している場合は、必ず医師にその旨を伝え、検査結果の解釈に役立ててもらいましょう。
クレアチニンクリアランスの正常値はいくつですか?
クレアチニンクリアランスの正常値は、年齢や性別によって異なりますが、一般的には成人で100~120 mL/min程度とされています。 加齢とともに腎機能は自然に低下するため、高齢者ではこの範囲よりも低い値が正常とみなされることもあります。
クレアチニンクリアランスを改善する方法はありますか?
クレアチニンクリアランスの改善は、腎機能低下の原因によって異なります。一般的には、高血圧や糖尿病などの基礎疾患を適切に管理し、塩分制限や適度な運動といった健康的な生活習慣を心がけることが重要です。 医師と相談し、個々の状態に合わせた治療や生活改善の計画を立てることが、腎機能の維持や改善につながります。
小児のクレアチニンクリアランスの基準値は大人と同じですか?
小児のクレアチニンクリアランスの基準値は、大人とは異なります。小児は成長段階にあり、体格や筋肉量が大人と異なるため、年齢に応じた基準値が設定されています。 小児の腎機能評価には、小児科医や腎臓専門医による専門的な判断が必要です。
まとめ
- クレアチニンクリアランスは腎臓の濾過能力を示す指標です。
- 単位は主に「mL/min」または「mL/min/1.73m²」が使われます。
- 「mL/min」は1分間の濾過速度を表します。
- 「/1.73m²」は体表面積で補正し、体格差の影響をなくします。
- クレアチニンは筋肉由来の老廃物で、腎臓で濾過されます。
- 測定には24時間蓄尿法と推算式があります。
- 24時間蓄尿法はより正確な実測値に近い方法です。
- 推算式は簡便で、スクリーニングに利用されます。
- 基準値は年齢や性別によって異なります。
- 値が低い場合は腎機能低下が疑われます。
- 値が高い場合は腎機能良好、または一時的な要因も。
- eGFRも腎機能指標ですが、測定方法が異なります。
- eGFRは簡便で、慢性腎臓病の診断に有用です。
- 生活習慣の見直しは腎臓病予防に大切です。
- 定期的な腎機能検査は早期発見につながります。
