公務員として働く中で、服務規律の遵守は非常に重要です。しかし、時には意図せず、あるいは不注意から規律違反を犯してしまうこともあるかもしれません。その際に科される懲戒処分の一つに「戒告」があります。
「戒告」という言葉は耳にしたことがあっても、具体的にどのような行為が戒告の対象となるのか、また、戒告処分が自身のキャリアにどのような影響を与えるのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。不安を感じている方もいるかもしれません。
本記事では、公務員の戒告処分について、その定義から具体的な事例、そして処分が与える影響、さらには他の懲戒処分や訓告との違いまで、網羅的に解説します。この記事を通して、戒告処分に関する疑問を解消し、安心して職務に専念するための知識を深めていきましょう。
公務員の戒告処分とは?その意味と懲戒処分における位置づけ

公務員にとって「戒告」とは、どのような意味を持つのでしょうか。まずは、その基本的な定義と、懲戒処分全体の中で戒告がどのような位置づけにあるのかを理解することが大切です。
戒告処分の定義と目的
戒告処分は、公務員が服務規律に違反した場合に科される懲戒処分の一つです。その目的は、違反行為の責任を明確にし、将来の再発防止を厳しく戒めることにあります。具体的には、文書または口頭で厳重な注意が与えられます。
この処分は、公務員としての自覚を促し、組織全体の規律と秩序を維持するために行われるものです。違反行為の軽重や情状を考慮して決定されます。
懲戒処分における戒告の位置づけ
公務員の懲戒処分には、法律で定められた4つの種類があります。処分の軽い順に、「戒告」「減給」「停職」「免職」です。戒告は、この中で最も軽い処分であり、公務員としての身分を失うことはありません。
しかし、最も軽い処分とはいえ、その影響は決して無視できるものではありません。戒告は、公務員としての信用に関わる重要な処分として位置づけられています。
実際にあった公務員の戒告事例を具体的に紹介

どのような行為が戒告処分の対象となるのか、具体的な事例を知ることは、自身の行動を振り返り、未然に防ぐための大切な一歩となります。ここでは、実際にあった公務員の戒告事例をいくつかご紹介します。
職務怠慢・服務規律違反に関する事例
公務員が職務上の義務を怠ったり、服務規律に違反したりした結果、戒告処分を受けるケースは少なくありません。例えば、正当な理由なく勤務時間の始めや終わりに繰り返し遅刻や早退をした場合が挙げられます。
また、病気休暇や特別休暇について虚偽の申請をした職員も戒告処分の対象となります。 勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせた場合も、戒告処分が下されることがあります。
これらの行為は、職務専念義務や信用失墜行為の禁止に抵触すると判断されることが多いです。
ハラスメント・不適切な言動に関する事例
職場におけるハラスメントや不適切な言動も、戒告処分の原因となります。例えば、相手の意に反することを認識しながら、わいせつな言辞などの性的な言動を行った職員は、戒告処分を受ける可能性があります。
他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した場合も、戒告処分となることがあります。 職場の人間関係を円滑に保つことは、公務員として重要な責務の一つです。
情報管理・公金官物取扱いに関する事例
公務員は職務上知り得た情報の管理や公金の取り扱いについて厳格な義務を負っています。職務上知ることのできた秘密を漏らしたが、公務の運営に重大な支障を生じさせるほどではない場合や、情報セキュリティ対策を怠った結果、秘密が漏えいし公務に支障を生じさせた場合も戒告処分となることがあります。
公金や官物を紛失したり、重大な過失により盗難に遭わせたりした場合も戒告処分が下されることがあります。 また、持ち出しが禁止されている人事評価票が入ったUSBメモリーを許可なく自宅に持ち出し、紛失した事例も戒告処分となっています。
これらの事例は、情報管理の重要性と、公務員としての責任の重さを物語っています。
その他、様々な戒告事例
上記以外にも、公務員としてふさわしくない行為に対して戒告処分が下されることがあります。例えば、事実をねつ造して虚偽の報告を行った場合や、政治的目的を有する文書を配布した場合などが該当します。
暴行を加え、またはけんかをした職員が人を傷害するに至らなかった場合や、故意に他人の物を損壊した場合も、減給または戒告処分となることがあります。 公務員は、職務内外を問わず、社会からの信頼を損なわない行動が求められます。
戒告処分が公務員に与える影響とは?

戒告処分は最も軽い懲戒処分とされていますが、公務員のキャリアに全く影響がないわけではありません。ここでは、戒告処分が公務員に与える具体的な影響について詳しく見ていきましょう。
戒告処分が人事評価に与える影響
戒告処分は、公務員の人事記録に記録されるため、その後の人事評価に影響を与える可能性があります。賞与(ボーナス)の査定でマイナス評価を受けることも考えられます。
人事評価は、昇進や昇給に直結するため、戒告処分が間接的に長期的なキャリア形成に影響を及ぼすことは十分にあり得ます。一度の処分が、その後の評価に影を落とす可能性を理解しておくべきでしょう。
昇進・昇給への影響
戒告処分は、昇進や昇給が遅れる「昇給延伸」の原因となることがあります。特に管理職への昇進を目指す場合、過去の懲戒処分の履歴が大きな障壁となる可能性も指摘されています。
また、戒告処分を受けた日から1年を経過しない者は、特別昇給の適用除外となる規定もあります。 これは、戒告処分が単なる注意で終わらない、具体的な不利益を伴うことを示しています。
退職金や年金への影響は?
戒告処分自体が直接的に退職金や年金を不支給にするものではありません。しかし、懲戒処分に付された者に対しては、退職手当や共済年金などの制度に関する法令において、手当の不支給や減額、昇給査定における取り扱いなどの措置が定められている場合があります。
そのため、戒告処分が間接的に退職金や年金の額に影響を及ぼす可能性も考慮に入れる必要があります。
戒告処分の記録と期間
戒告処分は人事記録に登録され、一定期間その記録が残ります。この記録が、将来の人事評価や昇進、昇給に影響を及ぼすことがあるため、軽視できない処分です。
記録が残る期間は、組織や処分の内容によって異なりますが、その間は常に自身の行動が評価される対象となることを意識する必要があります。
戒告処分と他の懲戒処分(減給・停職・免職)との違い

公務員の懲戒処分には、戒告以外にも「減給」「停職」「免職」があります。それぞれの処分がどのような内容で、戒告と何が異なるのかを理解することは、懲戒処分全体の重さを把握する上で重要です。
減給処分との違い
減給処分は、一定期間、給与を減額して支給する処分です。国家公務員の場合、1年以下の期間で、基本給の月額の5分の1以下に相当する額が減額されます。
戒告は給与の減額を伴わない厳重注意であるのに対し、減給は直接的な金銭的制裁を伴う点で異なります。 減給は、戒告よりも一歩踏み込んだ、より重い処分と言えるでしょう。
停職処分との違い
停職処分は、一定期間、職務に従事させず、その間の給与は支給されない処分です。期間は1日以上1年以下と定められています。
戒告は職務を継続できるのに対し、停職は職務から離れ、無給となる点で大きく異なります。 停職期間中は、公務員としての身分は保持されますが、職務を行うことはできません。
免職処分との違い
免職処分は、公務員としての身分を失わせる最も重い処分です。民間企業の懲戒解雇に相当し、退職金が全額または一部不支給となることがあります。
戒告が身分を維持する処分であるのに対し、免職は公務員としての地位を完全に失う点で最も重い処分です。 免職処分は、公務員としてのキャリアを完全に断ち切るものです。
戒告処分と訓告(訓戒・厳重注意)の違い

戒告と似た言葉に「訓告」や「訓戒」「厳重注意」といったものがあります。これらは懲戒処分と混同されがちですが、法的な位置づけが異なります。その違いを明確に理解しておきましょう。
訓告・訓戒・厳重注意とは
訓告、訓戒、厳重注意といった措置は、公務員に対する注意指導の一つですが、懲戒処分にはあたりません。これらは制裁の性格を持たない厳重注意であり、戒告よりも軽い位置づけとされています。
多くの場合、口頭または文書で注意が与えられますが、法律に基づく強制力を持つ処分ではありません。
戒告との決定的な違い
戒告が国家公務員法や地方公務員法に基づいて行われる「懲戒処分」であるのに対し、訓告などは法律上の懲戒処分ではない点が決定的な違いです。そのため、訓告などは給与や昇給に直接的な影響を与えないことが多いですが、記録に残る可能性や査定に影響する可能性はゼロではありません。
戒告は法的な不利益を伴う可能性があるのに対し、訓告などはあくまで行政上の措置であり、その影響はより限定的であると言えます。
戒告処分を受けた場合の対処法と心構え

もし戒告処分を受けてしまった場合、どのように対処し、どのような心構えで臨むべきでしょうか。適切な対応を取ることで、その後の影響を最小限に抑えることができます。
処分内容の確認と反省
戒告処分を受けた際は、まず処分理由を記載した説明書をよく読み、自身の行為がどのような規律違反に該当したのかを正確に理解することが大切です。処分内容を真摯に受け止め、深く反省する姿勢が求められます。
なぜそのような行為に至ったのか、原因を深く掘り下げて考えることが、再発防止の第一歩となります。
再発防止策の検討と実行
反省にとどまらず、今後同じ過ちを繰り返さないための具体的な再発防止策を検討し、実行に移すことが重要です。職務に対する意識を改め、服務規律の遵守を徹底するよう努めましょう。
例えば、業務手順の見直し、情報管理の徹底、コミュニケーション方法の改善など、具体的な行動計画を立てることが有効です。
相談窓口や弁護士への相談
処分内容に納得がいかない場合や、今後の対応に不安がある場合は、一人で抱え込まずに相談窓口や労働問題に詳しい弁護士に相談することも一つの方法です。不当な処分であると考える場合は、取消訴訟を検討することも可能です。
専門家の意見を聞くことで、冷静に状況を判断し、適切な対応を選択できるでしょう。
公務員が戒告処分を避けるためのポイント
戒告処分は、公務員としてのキャリアに少なからず影響を与えるものです。できる限り戒告処分を避けるためには、日頃からの意識と行動が重要になります。ここでは、戒告処分を避けるためのポイントをご紹介します。
服務規律の遵守を徹底する
公務員は、国家公務員法や地方公務員法、関連する条例や規則など、多くの服務規律を遵守する義務があります。これらの規定を日頃から確認し、職務上の義務や禁止事項を正確に理解しておくことが、戒告処分を避けるための基本です。
不明な点があれば、上司や関係部署に確認するなど、積極的に知識を深める努力をしましょう。
職場でのコミュニケーションを円滑にする
ハラスメントや不適切な言動による戒告処分を避けるためには、職場での円滑なコミュニケーションが不可欠です。相手の立場や感情を尊重し、誤解を招くような言動は慎むよう心がけましょう。
日頃から良好な人間関係を築くことで、トラブルを未然に防ぎ、問題が発生した場合でも早期に解決できる可能性が高まります。
問題行動の早期発見と改善
自身の勤務態度や行動に問題がないか、常に客観的に振り返る習慣を持つことが大切です。もし問題行動に気づいた場合は、早期に改善するよう努め、必要であれば上司や同僚に相談して助けを求めることも重要です。
小さな問題のうちに対処することで、大きな処分へと発展するのを防ぐことができます。
よくある質問

- 戒告処分は軽い処分ですか?
- 戒告処分は履歴に残りますか?
- 戒告処分で給料は減りますか?
- 戒告処分を受けた後、昇進はできますか?
- 戒告処分は取り消せますか?
- 戒告処分と訓告の違いは何ですか?
- 戒告処分を受けた公務員の数はどれくらいですか?
戒告処分は軽い処分ですか?
懲戒処分の中では最も軽い処分とされていますが、人事記録に残り、昇給や昇進に影響を与える可能性があるため、決して軽視できるものではありません。
戒告処分は履歴に残りますか?
はい、戒告処分は人事記録に登録され、履歴に残ります。この記録は、将来の人事評価や昇進に影響を及ぼすことがあります。
戒告処分で給料は減りますか?
戒告処分自体で直接的に給料が減ることはありません。しかし、昇給が遅れたり、賞与の査定に影響したりすることで、結果的に収入に影響が出る可能性はあります。
戒告処分を受けた後、昇進はできますか?
昇進が不可能になるわけではありませんが、戒告処分を受けたことで昇進が遅れる、あるいは管理職への昇進が難しくなるなどの影響が出る可能性は高いです。
戒告処分は取り消せますか?
処分内容に不服がある場合、行政庁への不服審査請求を行い、その後に取消訴訟を提起することで、処分の取り消しを求めることが可能です。
戒告処分と訓告の違いは何ですか?
戒告は法律に基づいた懲戒処分ですが、訓告は懲戒処分ではなく、制裁の性格を持たない厳重注意です。訓告の方が戒告よりも軽い位置づけとされています。
戒告処分を受けた公務員の数はどれくらいですか?
人事院の発表によると、令和7年には国家公務員で56人が戒告処分を受けています。また、総務省のデータでは、令和5年度に地方公務員で1,549人が戒告処分を受けています。
まとめ
- 公務員の戒告処分は、服務規律違反に対する懲戒処分の一つです。
- 戒告は、懲戒処分の中で最も軽い処分として位置づけられています。
- 文書または口頭で厳重な注意が与えられ、将来の再発防止を戒めることが目的です。
- 職務怠慢、ハラスメント、情報管理違反などが戒告の主な事例です。
- 戒告処分は人事記録に残り、人事評価に影響を与えます。
- 昇進や昇給が遅れる「昇給延伸」の原因となる可能性があります。
- 退職金や年金に間接的な影響が出ることもあります。
- 減給、停職、免職は戒告よりも重い懲戒処分です。
- 減給は給与減額、停職は無給での職務停止、免職は身分喪失を伴います。
- 訓告は懲戒処分ではなく、戒告よりも軽い行政上の注意です。
- 処分を受けた際は、内容を理解し真摯に反省することが大切です。
- 再発防止策を具体的に検討し、実行に移すことが求められます。
- 不服がある場合は、相談窓口や弁護士への相談も検討しましょう。
- 日頃から服務規律を遵守し、円滑なコミュニケーションを心がけることが重要です。
- 問題行動は早期に発見し、改善に努めることで処分を避けられます。
- 公務員として社会からの信頼を損なわない行動が常に求められます。
