「万古焼」という言葉を目にしたとき、あなたはどのように読みますか?多くの方が一度は「なんて読むんだろう?」と疑問に感じたことがあるかもしれません。この美しい焼き物は、日本の食卓や暮らしを豊かに彩る存在でありながら、その読み方や背景については意外と知られていないものです。
本記事では、万古焼の正しい読み方から、その名前の由来、そして300年以上の歴史を持つこの伝統工芸品が持つ独特の魅力や特徴、代表的な器までを詳しく解説します。万古焼の奥深さに触れ、日々の暮らしに温かみと彩りを加えてみませんか。
万古焼の正しい読み方と名前の由来

日本の伝統的な焼き物である「万古焼」。その読み方について、多くの方が迷うことがあります。ここでは、万古焼の正しい読み方と、その名前に込められた深い由来についてご紹介します。
「ばんこやき」が正解!意外と知らない読み方のポイント
「万古焼」の正しい読み方は「ばんこやき」です。漢字の見た目から「まんこやき」と読んでしまう方もいますが、これは誤りなので注意しましょう。三重県四日市市を中心に生産されるこの焼き物は、その読み方を知ることで、より一層親しみが湧くものです。友人や家族との会話で、さりげなく正しい読み方を披露すれば、きっと驚かれることでしょう。
なぜ「ばんこ」と読むのか?名前の由来を紐解く
万古焼の名前の由来は、江戸時代中期に桑名の豪商であり茶人でもあった沼波弄山(ぬなみろうざん)にあります。弄山は、自身の作品が「いつまでも永遠に伝わるように」という願いを込めて、「万古」または「万古不易(ばんこふえき)」という印を作品に押しました。この「万古不易」という言葉には、「何時の世までも栄える優れたやきもの」という意味が込められています。
弄山の屋号が「万古屋」だったことも、この名が定着した理由の一つとされています。この願いが込められた印が、やがて焼き物全体の名称として「万古焼」と呼ばれるようになったのです。
三重県四日市市が誇る万古焼の歴史と特徴

万古焼は、単に美しいだけでなく、その背景には長い歴史と独自の技術が息づいています。ここでは、万古焼がどのようにして生まれ、どのような特徴を持つに至ったのかを詳しく見ていきましょう。
万古焼の始まりから現代まで:その歴史をたどる
万古焼の歴史は、今から約300年前の江戸時代中期、元文年間(1736年~1740年)に遡ります。桑名の豪商・沼波弄山が、現在の三重県朝日町小向に窯を開き、茶器を焼き始めたのがその始まりです。弄山は京焼の技法を取り入れ、更紗模様やオランダ文字など異国情緒あふれる斬新なデザインの作品を生み出し、「古万古」と呼ばれ人気を博しました。
しかし、弄山の死後、万古焼は一時途絶えてしまいます。
その後、江戸時代後期に古物商の森有節・千秋兄弟によって再興され、煎茶の流行とともに急須づくりが盛んになります。明治時代に入ると、四日市市に窯業が定着し、「四日市万古焼」として発展を遂げました。特に、水害で困窮する住民を救うため、山中忠左衛門が製陶方法を公開し、地場産業として確立した功績は大きいでしょう。
大正時代には、磁器土と陶土を合わせた「半磁器」の開発に成功し、生産量が飛躍的に増加しました。そして昭和後期には、耐熱性を高める技術が進み、国内の土鍋生産量の約8割を占めるまでに成長し、1979年には国の伝統的工芸品に指定されています。
独特の魅力:万古焼の主な特徴と技法
万古焼の最大の魅力は、その優れた耐熱性にあります。これは、陶土にリチウム鉱石の一種である「ペタライト」を40~50%配合する独自の技法によるものです。この配合により、加熱時の膨張が少なくなり、直火や空焚きにも耐えうる丈夫な土鍋が生まれます。そのため、万古焼の土鍋は「割れにくい土鍋」として全国的に知られています。
また、万古焼は陶器と磁器の中間的な性質を持つ「半磁器」に分類され、陶器の温かみと磁器の硬質さを併せ持つ点が特徴です。使う土や釉薬の有無によって、色味や印象が大きく変わるため、非常に多様なデザインが楽しめます。特に、鉄分を多く含む赤土を釉薬をかけずに焼き締めた「紫泥(しでい)急須」は、使うほどに味わい深い光沢が増し、お茶の渋みをまろやかにする効果があると言われています。
日常を豊かにする万古焼の代表的な器

万古焼は、その優れた機能性と多様なデザインから、私たちの食卓や暮らしに欠かせない存在となっています。ここでは、万古焼を代表する人気の器をご紹介します。
食卓の主役「土鍋」:保温性と使いやすさの秘密
万古焼の土鍋は、国内生産の約8割を占めるほど、日本の食卓に深く浸透しています。その人気の秘密は、前述の通り、陶土に配合されたペタライトによる圧倒的な耐熱性にあります。直火はもちろん、オーブンや電子レンジにも対応できるものが多く、近年ではIH対応の土鍋も開発が進んでいます。
万古焼の土鍋は、熱が均一に伝わりやすく、遠赤外線効果で食材の芯までじっくりと火を通すため、料理をより美味しく仕上げます。また、保温性が高いため、温かい料理を長時間楽しむことができるのも魅力です。鍋料理だけでなく、ごはんを炊いたり、蒸し料理や煮込み料理、さらには焼き物にも使える多機能性も、多くの家庭で愛される理由でしょう。
お茶の時間を彩る「急須」:使い込むほどに増す味わい
土鍋と並び、万古焼を代表する器が急須です。特に、鉄分を多く含む紫褐色の土を釉薬なしで焼き締めた「紫泥急須」は、万古焼のシンボルとも言える存在です。この紫泥急須は、使い込むほどに表面に美しい光沢が生まれ、独特の風合いが増していきます。
万古焼の急須で淹れるお茶は、その味わいが格別だと言われています。急須の鉄分がお茶の渋み成分であるタンニンと反応し、お茶の甘みや旨みを引き出す効果があるためです。また、多様なデザインや柄の急須が作られており、伝統的なものからモダンなものまで、自分の好みに合った一品を見つける楽しみがあります。
その他にも多様な万古焼の器たち
万古焼の魅力は、土鍋や急須だけにとどまりません。食器や花器、酒器、茶道具、室内置物など、生活を彩る様々な器が作られています。半磁器の特性を活かした、陶器の柔らかさと磁器の硬質さを兼ね備えた食器は、食卓に温かみと洗練された雰囲気をもたらします。オーブンや電子レンジに対応した皿も増えており、日々の調理や食卓での使い勝手も抜群です。
近年では、タジン鍋、ごはん釜、炭コンロ、焼き芋鍋、パン焼き器など、特定の調理に特化したユニークな商品も開発されています。これらの多様な器は、万古焼が常に時代のニーズを捉え、新しいものづくりに挑戦し続けている証拠と言えるでしょう。
万古焼を長く愛用するための手入れと注意点

お気に入りの万古焼の器を長く大切に使うためには、適切なお手入れが欠かせません。ここでは、万古焼を初めて使う前の準備と、日々のお手入れ方法についてご紹介します。
初めて使う前に:目止めで長持ちさせるコツ
土鍋など、吸水性のある万古焼の器を初めて使う際には、「目止め(めどめ)」という作業を行うことをおすすめします。目止めとは、土鍋の細かい気孔をでんぷん質で塞ぎ、水漏れやひび割れを防ぎ、匂い移りを軽減するための大切な工程です。
具体的な方法は以下の通りです。
- 土鍋に8分目ほどの水を入れ、ごはんの残りや小麦粉(大さじ2杯程度)を加えてよく混ぜます。
- 弱火で15分から30分ほど煮沸します。
- 火を止めて自然に冷まし、完全に冷めたら中身を捨てて水洗いし、しっかりと乾燥させます。
この目止めを行うことで、土鍋がより丈夫になり、長く愛用できるようになります。特に土鍋ごはんを炊く前には、ぜひ試してみてください。
日々のお手入れ:洗い方と保管方法
万古焼の器を日々お手入れする際には、いくつかのポイントがあります。
- 使用後はすぐに洗う:料理を入れたまま長時間放置すると、匂いや色が移りやすくなります。使用後はできるだけ早く洗いましょう。
- 柔らかいスポンジで優しく洗う:金属たわしや研磨剤入りの洗剤は、器の表面を傷つける可能性があるため避けましょう。
- 洗剤は少量に:土鍋などは洗剤を吸い込みやすい性質があります。洗剤を使いすぎると匂いが残ることがあるため、少量に留めるか、重曹などを使うのも良い方法です。
- しっかりと乾燥させる:洗い終わったら、カビや匂いの原因にならないよう、風通しの良い場所で完全に乾燥させることが重要です。特に土鍋は、底面を上にして乾かすと良いでしょう。
- 収納場所:湿気の少ない場所で保管しましょう。重ねて収納する際は、器と器の間に布などを挟むと傷つきを防げます。
これらの手入れ方法を実践することで、万古焼の器はより長く、美しい状態を保ち、日々の食卓を豊かに彩り続けてくれるでしょう。
万古焼に関するよくある質問

万古焼について、多くの方が抱く疑問にお答えします。
万古焼はどこで買えますか?
万古焼は、主に三重県四日市市や菰野町にある窯元や問屋、専門の販売店で購入できます。また、百貨店や陶器専門店、オンラインショップでも幅広く取り扱われています。毎年5月中旬には、四日市市で「万古まつり」が開催され、多くの窯元が出展し、手頃な価格で様々な万古焼を購入できる機会があります。「ばんこの里会館」のような施設では、展示やショップがあり、万古焼の魅力を感じながら購入することも可能です。
万古焼の急須はなぜ人気なのですか?
万古焼の急須が人気を集める理由はいくつかあります。まず、鉄分を多く含む紫泥(しでい)の急須は、釉薬をかけずに焼き締めることで、お茶の渋みをまろやかにし、旨み成分を引き出す効果があると言われています。また、使い込むほどに味わい深い光沢が増し、経年変化を楽しめる点も魅力です。さらに、伝統的なものから現代的なデザインまで、多様な種類があり、好みに合わせて選べることも人気の理由です。
万古焼の土鍋はIH対応ですか?
はい、万古焼の土鍋にはIH対応の商品も多く開発されています。万古焼は優れた耐熱性を持つため、直火での使用はもちろんのこと、近年ではIH調理器の普及に合わせて、高度な技術を用いたIH対応土鍋の開発が盛んです。購入の際には、製品表示でIH対応かどうかを確認しましょう。
万古焼と他の焼き物との違いは何ですか?
万古焼の最大の特徴は、陶土にリチウム鉱石の一種である「ペタライト」を配合することで実現される高い耐熱性です。これにより、直火や空焚きにも耐えうる丈夫な土鍋が作られ、国内の土鍋生産量の大部分を占めています。また、陶器と磁器の中間的な性質を持つ半磁器に分類され、多様な表現が可能な点も他の焼き物との違いと言えるでしょう。
万古焼の魅力は何ですか?
万古焼の魅力は、その多様性と機能性にあります。耐熱性に優れ、土鍋や急須など実用的な器が豊富に揃っているため、日々の食卓で活躍します。また、伝統に縛られず、常に新しい技術やデザインを取り入れ、時代に合わせて変化し続けている点も大きな魅力です。使うほどに愛着が湧く、温かみのある風合いも、多くの人々を惹きつけてやみません。
まとめ
- 万古焼の正しい読み方は「ばんこやき」です。
- 名前の由来は、江戸時代の沼波弄山が作品に押した「万古不易」の印にあります。
- 万古焼は三重県四日市市を中心に生産される伝統工芸品です。
- 約300年の歴史を持ち、弄山による「古万古」から現代まで発展してきました。
- 最大の特徴は、ペタライト配合による優れた耐熱性です。
- 国内の土鍋生産量の約8割を万古焼が占めています。
- 土鍋は直火、オーブン、電子レンジ、IH対応のものもあります。
- 紫泥急須は、お茶の渋みをまろやかにし、旨みを引き出す効果があります。
- 食器や花器など、多様な種類の器が作られています。
- 初めて使う土鍋には「目止め」を行うと長持ちします。
- 使用後は柔らかいスポンジで洗い、しっかりと乾燥させることが大切です。
- 万古焼は窯元や専門店、オンラインショップ、万古まつりなどで購入可能です。
- 陶器と磁器の中間的な性質を持つ半磁器に分類されます。
- 多様なデザインと機能性、そして温かみのある風合いが魅力です。
- 常に時代のニーズを捉え、新しいものづくりに挑戦し続けています。
