後頭部にしこりを見つけて不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。触ってみると「コリコリする」「痛みがある」「大きくなってきた」など、さまざまな状態があるでしょう。多くの場合、心配のない良性のしこりですが、中には医療機関での診察が必要なケースもあります。
本記事では、後頭部のリンパ節にできるしこりの原因から、注意すべき症状、そして適切な受診先や診断・治療の進め方まで、詳しく解説します。ご自身のしこりの状態と照らし合わせながら、ぜひ最後までお読みください。
後頭部リンパ節のしこりとは?まずは落ち着いて状況を把握しましょう

後頭部にしこりを感じたとき、まず「これは何だろう?」と不安になるのは当然のことです。しかし、しこりの全てが深刻な病気というわけではありません。まずは、後頭部にあるリンパ節の基本的な役割と、なぜ腫れてしこりになるのかを理解することが大切です。
後頭部リンパ節の役割と腫れる仕組み
私たちの体には、免疫機能をつかさどる「リンパ系」が全身に張り巡らされています。リンパ管の中を流れるリンパ液は、体内の老廃物や細菌、ウイルスなどを回収し、途中に点在する「リンパ節」でそれらをろ過する役割を担っています。後頭部にもリンパ節があり、頭頂部や後頭部の表層から流れてくるリンパ液を受け止めています。
このリンパ節は、体内に侵入した細菌やウイルスと戦う免疫細胞が集まる場所です。そのため、頭皮や頭頸部で炎症や感染が起こると、リンパ節が反応して腫れ、しこりとして触れるようになるのです。 これは、体が異物と戦っている証拠であり、多くは一時的な反応です。通常、リンパ節は直径1cm以下の豆のような形をしていますが、炎症が起きると大きくなることがあります。
後頭部リンパ節のしこり:考えられる良性の原因

後頭部のしこりの多くは、命に関わることのない良性のものです。ここでは、特に頻繁に見られる良性の原因について詳しく見ていきましょう。
炎症性リンパ節炎(細菌性・ウイルス性)
リンパ節の腫れで最も多い原因は、細菌やウイルスによる感染症に伴う炎症です。これを「リンパ節炎」と呼びます。 風邪や扁桃炎、頭皮の湿疹やニキビ、虫歯などが原因で、その炎症がリンパ節に波及して腫れることがあります。
細菌性のリンパ節炎では、しこりが赤く腫れて熱を持ち、押すと痛むことが多いです。発熱を伴うこともあります。 一方、ウイルス性のリンパ節炎は、細菌性に比べて痛みや発熱が軽度で、複数のリンパ節が腫れる傾向があります。 多くの場合、原因となる感染症が治まれば、リンパ節の腫れも自然に小さくなっていきます。
脂肪腫
脂肪腫は、皮膚の下にできる良性の脂肪の塊です。触ると柔らかく、皮膚の下でスルスルと動くのが特徴です。 通常は痛みを伴いませんが、大きくなると神経や筋肉を圧迫して違和感を感じることもあります。 脂肪腫は自然に消えることはなく、時間の経過とともに少しずつ大きくなる性質があります。 気になる場合は、形成外科や皮膚科での切除が検討されます。
粉瘤(アテローム)
粉瘤(ふんりゅう)は、皮膚の下にできる袋状のしこりで、皮脂や角質などの老廃物が溜まって発生します。 中央に黒い点(開口部)が見えることがあり、押すと悪臭を伴う液体が出てくることもあります。 良性のしこりですが、炎症を起こすと赤く腫れ上がり、痛みや膿を伴うことがあります。 炎症がひどい場合は、抗生剤での治療後に手術で袋ごと摘出するのが一般的です。
小児に見られる生理的なリンパ節の腫れ
お子さんの首や後頭部にしこりを見つけて心配になる保護者の方も多いでしょう。しかし、元気な子どもでも首や後頭部に小豆大のリンパ節の腫れを感じることは珍しくありません。 これは、子どもの免疫機能が活発であるためで、ほとんどの場合は正常なリンパ節の腫れであり、特に治療は必要ありません。 ただし、発熱や痛みがある場合、またはしこりが一つだけで大きく触れる場合は、感染症の可能性も考えられるため、小児科を受診することをおすすめします。
その他の良性疾患
後頭部のしこりには、他にもいくつかの良性疾患が考えられます。例えば、菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)は、若い女性に多く見られる良性のリンパ節炎です。 また、サルコイドーシスやキャッスルマン病といった、全身性の炎症性疾患がリンパ節の腫れを引き起こすこともあります。 これらの疾患も、専門医による適切な診断と治療が必要です。
後頭部リンパ節のしこり:見逃せない悪性の原因

良性のしこりが多い一方で、まれに悪性の病気が隠れていることもあります。特に注意が必要な悪性の原因について解説します。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、リンパ球ががん化した病気で、リンパ節が腫れてしこりとして現れることがあります。 後頭部や首のリンパ節にできる悪性リンパ腫のしこりは、硬く、触ってもあまり動かず、痛みを伴わないことが多いのが特徴です。 しかし、急激に大きくなる場合には痛みを感じることもあります。 発熱、寝汗、体重減少、倦怠感などの全身症状を伴うこともあり、これらの症状が見られる場合は早急な医療機関の受診が重要です。
がんのリンパ節転移
体のどこかにできたがんが、リンパ液の流れに乗ってリンパ節に転移することがあります。 後頭部のリンパ節に転移する場合、しこりは硬く、周囲の組織と癒着して動きにくいのが特徴です。 最初は痛みがなくても、大きくなるにつれて痛みを感じることもあります。 頭頸部のがんだけでなく、胃がんなど遠隔臓器のがんが転移することもあります。
原発巣の特定と、転移したリンパ節の治療が必要です。
皮膚がん
まれに、頭皮や後頭部に皮膚がんが発生し、しこりとして感じられることがあります。 特に、悪性黒色腫(メラノーマ)や基底細胞がん、扁平上皮がんなどが考えられます。 出血しやすい、かさぶたが取れても再び盛り上がる、色が不均一などの症状が見られる場合は注意が必要です。 見た目だけでは良性のしこりと区別がつきにくいこともあるため、皮膚科や形成外科での詳しい検査が大切になります。
こんな症状は要注意!すぐに医療機関を受診すべき目安

後頭部のしこりは、多くが良性で心配ないものですが、中には専門医の診察を早めに受けるべきサインもあります。ご自身のしこりの状態をよく観察し、以下のポイントに当てはまる場合は医療機関を受診しましょう。
しこりの特徴から判断するコツ
- しこりが硬い、または触っても動かない場合: 良性のしこりは柔らかく、皮膚の下で動くことが多いですが、悪性のしこりは硬く、周囲の組織に固定されている傾向があります。
- しこりが急速に大きくなっている、または2~3週間以上続く場合: 通常の炎症による腫れは数週間で治まることが多いですが、しこりが徐々に大きくなったり、長期間消えない場合は注意が必要です。
- しこりが2.5cm以上と大きい場合: リンパ節の腫れが1.5cm以上になると悪性腫瘍の可能性が高まると言われています。
- しこりに痛みがない場合: 炎症性のしこりは痛みを伴うことが多いですが、悪性リンパ腫やがんの転移では痛みが少ないことがあります。
- しこりから膿が出ている、または表面の皮膚が赤くなっている場合: 炎症が強く、化膿している可能性があります。
全身症状に注目する
しこりだけでなく、全身に現れる症状も重要な判断材料となります。
- 発熱が続く、または上がったり下がったりする場合: 感染症の可能性もありますが、悪性リンパ腫などでも発熱が見られます。
- 原因不明の体重減少やひどい寝汗がある場合: これらは悪性リンパ腫の典型的な症状です。
- 強い倦怠感や疲労感が続く場合: 全身性の疾患が原因である可能性も考えられます。
- 喉の痛み、声のかすれ、飲み込みにくさ、耳の痛み、聞こえの悪さなどを伴う場合: 頭頸部のがんの可能性も考慮し、早めの受診が大切です。
受診を迷ったら専門家へ相談を
「もしかしたら」という不安な気持ちを抱え続けることは、心身の負担になります。少しでも気になる症状がある場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、専門家のアドバイスを求めることが大切です。 早期に診断を受けることで、適切な治療へとつながり、安心を得られるでしょう。
後頭部リンパ節のしこり、何科を受診すべき?

後頭部のしこりを見つけたとき、「何科に行けばいいのだろう?」と迷う方も多いでしょう。しこりの原因によって適切な診療科が異なりますが、まずは以下の専門科を検討してみてください。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科
首や頭部のリンパ節の腫れは、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の専門領域です。 風邪や扁桃炎、中耳炎など、頭頸部領域の感染症が原因でリンパ節が腫れることが多いため、まずはこの科を受診するのがおすすめです。 医師は触診に加え、ファイバースコープやエコー検査などで頭頸部を入念に検査し、原因を特定します。
皮膚科
しこりが赤く腫れて痛む、膿が出ている、または皮膚の表面に変化が見られる場合は、皮膚科の受診が適しています。 粉瘤(アテローム)や皮膚がん、頭皮の感染症などが疑われる場合に、皮膚科医が適切な診断と治療を行います。 小さな脂肪腫であれば皮膚科で切除できることもあります。
内科
しこりだけでなく、発熱や体重減少、倦怠感など全身症状を伴う場合は、内科を受診することも考えられます。 全身性の感染症や、悪性リンパ腫など血液系の疾患が疑われる場合に、内科医が初期診断を行い、必要に応じて専門医への紹介を行います。
形成外科
ぶつけた覚えがないのにできた、痛みのないしこりやこぶは、脂肪腫や粉瘤などの腫瘍性の病変であることが多く、形成外科での診断や手術が最適です。 形成外科では、傷跡が目立たないように配慮した手術が行われるため、美容的な側面も重視したい場合に良い選択肢となります。
病院での診断と治療の進め方

医療機関を受診すると、医師はしこりの状態を詳しく診察し、原因を特定するための検査を行います。ここでは、一般的な診断と治療の進め方について解説します。
正確な診断のための検査
まず、医師はしこりの大きさ、硬さ、可動性、痛みや熱の有無などを確認する問診と触診を行います。 その後、必要に応じて以下の検査が実施されます。
- 血液検査: 白血球数や炎症反応(CRP)、LDHなどの数値を調べ、感染症や悪性腫瘍の可能性を探ります。
- 画像検査: エコー(超音波)検査でしこりの内部構造や血流を確認したり、CTやMRIでしこりの位置、大きさ、周囲の組織との関係を詳しく調べたりします。
- 生検(組織検査): 最も確実な診断方法で、しこりの一部または全体を採取し、病理組織学的に詳しく調べます。悪性腫瘍が疑われる場合に特に重要です。
これらの検査を組み合わせることで、しこりの正確な原因を特定し、適切な治療方針を決定します。
原因に応じた治療方法
しこりの原因によって治療方法は大きく異なります。
- 炎症性リンパ節炎の場合: 細菌感染が原因であれば、抗生物質が処方されます。 ウイルス感染の場合は、症状を和らげる対症療法を行いながら、自然に治まるのを待ちます。
- 脂肪腫や粉瘤の場合: 基本的には外科的切除が主な治療方法です。 小さなものであれば日帰り手術で対応可能な場合もあります。
- 悪性リンパ腫やがんの転移の場合: がんの種類や進行度に応じて、手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)などが単独または組み合わせて行われます。
医師は検査結果に基づき、患者さんの状態に合わせた最適な治療計画を提案してくれます。不安な点があれば、遠慮せずに医師に質問し、納得した上で治療を進めることが大切です。
よくある質問

- 後頭部のしこりは自然に治りますか?
- 後頭部のしこりで痛くない場合は大丈夫ですか?
- 後頭部のしこりで悪性の特徴は?
- 後頭部のリンパ節の腫れはストレスが原因ですか?
- 後頭部のリンパ節の腫れはどれくらいで治る?
- 後頭部のリンパ節の腫れは子供にもありますか?
後頭部のしこりは自然に治りますか?
後頭部のしこりが炎症性リンパ節炎によるものであれば、原因となる感染症が治まるにつれて自然に小さくなることが多いです。 しかし、脂肪腫や粉瘤は自然に消えることはありません。 また、悪性のしこりは放置すると進行するため、自己判断せずに医療機関を受診することが重要です。
後頭部のしこりで痛くない場合は大丈夫ですか?
痛くないしこりでも、必ずしも大丈夫とは限りません。脂肪腫や粉瘤は通常痛みがありませんが、悪性リンパ腫やがんの転移によるしこりも、初期には痛みを伴わないことが多いからです。 痛みの有無だけで良性か悪性かを判断することは難しいため、気になる場合は医療機関で診察を受けましょう。
後頭部のしこりで悪性の特徴は?
悪性のしこりの特徴としては、一般的に「硬い」「触っても動かない(固定されている)」「痛みが少ない、または全くない」「急速に大きくなる」「2~3週間以上続く」などが挙げられます。 また、発熱、体重減少、寝汗などの全身症状を伴うこともあります。
後頭部のリンパ節の腫れはストレスが原因ですか?
直接的にストレスがリンパ節を腫れさせるわけではありませんが、ストレスや寝不足、喫煙習慣などによって免疫力が低下すると、細菌やウイルスに感染しやすくなり、結果としてリンパ節が腫れることがあります。 ストレスが原因で体調を崩していると感じる場合は、医療機関で相談してみましょう。
後頭部のリンパ節の腫れはどれくらいで治る?
炎症性リンパ節炎の場合、原因となる感染症が治まれば、通常1週間から数週間程度で腫れは引いていきます。 しかし、慢性化すると数ヶ月続くこともあります。 2~3週間以上腫れが続く場合や、症状が悪化する場合は、医療機関を受診してください。
後頭部のリンパ節の腫れは子供にもありますか?
はい、子どもにも後頭部のリンパ節の腫れはよく見られます。 子どもは免疫機能が活発なため、風邪などの軽い感染症でもリンパ節が腫れやすい傾向があります。多くは生理的なもので心配ありませんが、発熱や痛みがある場合、またはしこりが一つだけで大きく触れる場合は、小児科を受診することをおすすめします。
まとめ
- 後頭部のしこりはリンパ節の腫れであることが多いです。
- リンパ節は免疫機能の一部で、感染や炎症で腫れます。
- 良性の原因にはリンパ節炎、脂肪腫、粉瘤などがあります。
- 悪性の原因には悪性リンパ腫、がんの転移、皮膚がんがあります。
- しこりが硬い、動かない、大きい、急速に増大する場合は要注意です。
- 発熱、体重減少、寝汗などの全身症状にも注意しましょう。
- 2~3週間以上続くしこりは医療機関を受診する目安です。
- 受診先は耳鼻咽喉科、皮膚科、内科、形成外科が考えられます。
- 診断には触診、血液検査、画像検査、生検などがあります。
- 治療は原因に応じ、薬物療法や外科的切除が行われます。
- 脂肪腫や粉瘤は自然に消えることはありません。
- 痛みがなくても悪性の可能性は否定できません。
- ストレスが免疫力低下を招き、リンパ節の腫れにつながることもあります。
- 子どものリンパ節の腫れは生理的な場合が多いです。
- 不安を感じたら、早めに専門医に相談することが大切です。
