古文を学ぶ中で、「さる」という言葉に出会うと、その多様な意味に戸惑う方も少なくないでしょう。現代語の「去る」や「猿」とは異なり、古語の「さる」は文脈によって様々な表情を見せます。本記事では、古語「さる」が持つ奥深い意味や活用、そして現代語との違いを分かりやすく解説します。
古語「さる」は現代語の「さる」とは全く違う?その奥深い意味とは

古語の「さる」は、現代語の「去る(立ち去る)」や「猿(動物)」といった意味合いだけでは捉えきれない、非常に多義的な言葉です。その意味は、動詞、連体詞、接続詞、さらには助動詞としても使われ、文脈によって大きく変わります。この複雑さが、古文読解の難しさの一つでもありますが、それぞれの意味を理解すれば、文章の深みをより感じられるようになるでしょう。
古語「さる」が持つ多様な意味の全体像
古語の「さる」は、大きく分けて動詞、連体詞、接続詞、助動詞の四つの品詞として使われます。動詞としては「去る」「避る」「戯る」「晒る・曝る」といった意味があり、それぞれがさらに複数の意味合いを持っています。連体詞としては「然る」と書き、「そのような」という意味で使われることが多く、接続詞の「さるは」は順接と逆接の両方の役割を担います。
また、助動詞として用いられる場合は、親しみや軽い尊敬の気持ちを表すことがあります。これらの多様な意味を一つずつ丁寧に見ていくことで、古文の読解がぐっと楽になるはずです。
現代語の「去る」「猿」との決定的な違い
現代語で「さる」と聞くと、「去る(立ち去る)」や「猿(動物)」を思い浮かべる方がほとんどでしょう。しかし、古語の「さる」は、これらの意味に加えて、「避ける」「たわむれる」「気が利く」「さらす」「そのような」「しかるべき」「~なさる」など、非常に幅広い意味を持っています。
特に、季節や時刻が「来る」「なる」という意味で使われる「去る」は、現代語の感覚とは真逆であるため、注意が必要です。例えば、「夕されば」は「夕方になると」という意味であり、現代語の「夕方が去る」とは全く異なります。この現代語とのギャップを理解することが、古語「さる」を正しく捉える第一歩となります。
動詞「さる」の主な意味と活用を詳しく知る

古語の動詞「さる」は、その漢字表記によって意味が大きく異なります。しかし、古文では漢字が振られていないことも多いため、文脈から意味を判断する力が求められます。ここでは、動詞「さる」の主要な意味と、それぞれの活用パターンについて詳しく見ていきましょう。
「去る」:離れる・立ち去る、季節や時刻が来る
動詞「去る」は、現代語の「去る」と同じく「離れる」「立ち去る」という意味で使われます。例えば、「都を去る」といった使い方です。しかし、古語特有の重要な意味として、「(季節や時刻が)来る」「なる」という用法があります。これは現代語の感覚とは逆なので、特に注意が必要です。
例えば、「夕されば」は「夕方になると」という意味で、多くの和歌や物語に登場します。この「来る」「なる」の意味は、時間の経過や季節の移り変わりを表す際に頻繁に用いられます。
「避る」:避ける・断る
「避る」と書かれる「さる」は、文字通り「よける」「避ける」という意味を持ちます。困難や厄介な事柄から身をかわす様子を表す際に使われます。また、「断る」「辞退する」という意味でも用いられることがあります。例えば、人からの誘いや申し出を丁寧に断る場面などで使われる表現です。
この意味合いの「さる」は、現代語の「避ける」に近い感覚で理解しやすいかもしれません。
「戯る」:たわむれる・気が利く・色気がある
「戯る」と書く「さる」は、非常に豊かな感情や様子を表す動詞です。主な意味は「たわむれる」「はしゃぐ」といった、無邪気で楽しげな様子です。さらに、「才気がある」「気が利く」「しゃれている」「風情がある」といった、知性や美意識を感じさせる意味でも使われます。また、人に対して「色気がある」という魅力を表現する際にも用いられることがあります。
この「戯る」は、人物の性格や場の雰囲気を描写する上で重要な役割を果たす言葉です。
「晒る・曝る」:さらされる・さらす
「晒る」または「曝る」と書かれる「さる」は、日や風雨に「さらされる」という意味を持ちます。自然の力に身を任せ、その影響を受ける様子を表します。また、他動詞として「日や風雨にさらす」という意味でも使われ、何かを意図的に外気に触れさせる状況を指します。この意味の「さる」は、自然描写や、物が風化していく様子などを表現する際に用いられることが多いです。
動詞「さる」の活用パターン
動詞「さる」は、その意味によって活用形が異なります。主にラ行四段活用とラ行下二段活用があります。例えば、「去る」「避る」「晒る・曝る」はラ行四段活用で、「ら・り・る・る・れ・れ」と活用します。一方、「戯る」はラ行下二段活用で、「れ・れ・る・るる・るれ・れよ」と活用します。
古文の動詞は、活用形によって文法的な役割や接続する助動詞が変わるため、どの活用をするのかを把握することは、正確な読解のために非常に大切です。
連体詞「さる」が示す「そのような」という表現

古語の「さる」は、動詞だけでなく連体詞としても頻繁に登場します。連体詞の「さる」は、主に「然る」と表記され、特定の事柄や状況を漠然と指し示す役割を持っています。この用法を理解することで、文章全体のニュアンスをより正確に捉えることができます。
「然る」:そのような・しかるべき・ある
連体詞の「さる」は、漢字で「然る」と書かれることが多く、その意味は主に「そのような」「そういう」「そんな」といった指示を表します。前に述べられた内容や、文脈から推測される状況を指し示す際に使われます。例えば、「さる折しも」であれば「そのような折に」となります。
また、「しかるべき」「相当な」「立派な」といった、ある基準や期待に合致する様子を表す意味もあります。これは、人や物事の質や程度を評価する際に用いられる表現です。さらに、漠然と「ある」「某(なにがし)」といった不特定の対象を指す場合にも使われることがあります。
連体詞「さる」の具体的な使い方と例文
連体詞「さる」は、名詞や体言に直接接続して使われます。具体的な例文を通して、その使い方を確認しましょう。
- 「みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さる折しも」
→「皆が物寂しく思っていて、都に愛しい人がいないわけではない。そのような折に」 - 「別当入道、さる人にて」
→「別当入道は、相当な(気の利く)人物であって」 - 「この在所にさる子細候ひて」
→「この土地にある事情がございまして」
これらの例文からわかるように、連体詞「さる」は、文脈に応じて「指示」「評価」「不特定」といった様々なニュアンスを付け加えることができます。特に「しかるべき」という表現は、現代語でも使われる「然るべき」に通じるものがあり、古語の知識が現代語の理解にもつながる例と言えるでしょう。
接続詞「さるは」が文章に与える順接と逆接の役割

古語には、「さる」に係助詞「は」が付いて一語化した「さるは」という接続詞も存在します。この「さるは」は、文章の流れにおいて順接と逆接の両方の意味を持つため、文脈を注意深く読み解く必要があります。
順接の意味:「そうであるのは」「それというのも実は」
接続詞「さるは」が順接の意味で使われる場合、主に「そうであるのは」「それというのも実は」「というのも」「その上」といった意味合いになります。これは、前の文で述べられた事柄の原因や理由を、後の文で補足説明する際に用いられます。例えば、ある状況が提示された後、「さるは」に続いてその状況に至った背景や根拠が語られる、といった使われ方をします。
- 「ねびゆかむさまゆかしき人かなと目とまり給ふ。さるは、限りなう心を尽くし聞こゆる人に、いとよう似奉れるが、まもらるるなりけり」
→「これから成長してゆく様子が見たい人だなあと、(源氏は若紫に)目がおとまりになる。それというのも実は、(源氏が)この上もなく心からお慕い申し上げている方(=藤壺)に、実によく似申し上げているので、自然と見つめないではいられなかった」
この例文では、源氏が若紫に目を奪われた理由を「さるは」以下で説明しており、順接の関係が明確に示されています。
逆接の意味:「そうではあるが」「そうはいうものの」
一方で、「さるは」は逆接の意味で使われることもあります。この場合、「そうではあるが」「そうはいうものの」「しかしながら」といった意味になり、前の文の内容とは反対の事柄や、それに付随する別の状況を提示する際に用いられます。順接と逆接の両方の意味を持つため、文脈全体を把握し、どちらの意味が適切かを判断する力が求められます。
- 「望みて預かれるなり。さるは、便りごとに物も絶えず得させたり」
→「(先方から)望んで(私の家を)預かったのである。そうではあるが、(預けた私の方から)機会のあるたびに、贈り物も絶えず与えてきた」
この例文では、家を預かったという事実に対し、「そうではあるが」と逆接のニュアンスで、さらに贈り物を与えていたという状況を付け加えています。接続詞「さるは」の使い分けは、古文読解の重要なコツの一つです。
助動詞「さる」で表す親しみや軽い尊敬の気持ち

古語の「さる」は、動詞や連体詞、接続詞としてだけでなく、助動詞としても使われることがあります。助動詞の「さる」は、現代語の敬語表現に近い役割を持ち、話し手の相手に対する気持ちを表す大切な要素です。
助動詞としての「さる」の機能と活用
助動詞「さる」は、主に動詞の未然形や連用形に接続して使われます。その機能は、親しみの気持ちや、軽い尊敬の意を表すことです。現代語の「~なさる」に近いニュアンスを持つと考えると理解しやすいでしょう。活用は「さら・さり・さる・(さる)・され・され(さい)」となります。この助動詞は、主に和歌や物語の中で、登場人物間の関係性や心情を表現する際に用いられます。
「~なさる」という敬意の表現
助動詞「さる」は、動詞に付くことで、その動作を行う人に対する話し手の親愛の情や、軽い敬意を示すことができます。例えば、「歌ひさる」であれば「歌いなさる」といった意味合いになります。これは、相手を敬いつつも、親しみを込めてその行動を表現する際に使われることが多いです。特に、身分の高い人物が、親しい間柄の相手に対して使う場合や、作者が作品中の人物に敬意を表す際に用いられることがあります。
助動詞「さる」を理解することで、古文における人間関係や感情の機微をより深く読み取ることが可能になります。
古語「さる」の識別が難しいと感じる時のコツ

古語の「さる」は、その多義性ゆえに、文脈によってどの意味で使われているのかを識別するのが難しいと感じる方もいるでしょう。しかし、いくつかのコツを押さえることで、正確な読解へとつながります。焦らず、一つずつ確認していくことが大切です。
文脈から意味を判断するコツ
「さる」の識別で最も重要なのは、やはり文脈全体を丁寧に読み解くことです。前後の文章がどのような内容であるか、誰が何を言っているのか、どのような状況で使われているのかを把握することで、おのずと適切な意味が見えてきます。例えば、時間や季節を表す言葉が近くにあれば「(季節や時刻が)来る」という意味の動詞「去る」の可能性が高く、具体的な事柄を指し示す言葉があれば「そのような」という意味の連体詞「然る」の可能性が高いでしょう。
また、人や物の様子を形容している場合は「戯る」の意味を疑うなど、文脈からの推測は非常に有効です。
活用形から品詞を特定する方法
「さる」の活用形を理解することも、品詞を特定する上で役立ちます。動詞の「さる」はラ行四段活用またはラ行下二段活用をします。例えば、連用形であれば「さり」「され」となります。一方、連体詞の「さる」は活用しません。助動詞の「さる」は「さら・さり・さる・(さる)・され・され(さい)」と活用します。このように、「さる」の後に続く助動詞や助詞、あるいは「さる」自体の形に注目することで、品詞を絞り込むことができます。
特に、動詞の活用形と連体詞の非活用形の違いは、識別の大きな手がかりとなります。
他の古語との組み合わせで意味を理解する
「さる」は、他の古語と組み合わされて使われることで、特定の意味合いを持つことがあります。例えば、「さるべき」は「しかるべき」「そうなるのが当然な」という意味の連語であり、「さること」は「そのようなこと」という意味の連語です。 これらの複合的な表現を覚えることで、「さる」単独では判断が難しかった場合でも、意味を特定しやすくなります。
古文単語は、単体で覚えるだけでなく、よく使われる組み合わせや慣用表現として理解を深めることが、読解力を高めるコツです。
よくある質問

- 古語のさるはどんな意味ですか?
- 古文のさるは動詞ですか?
- さるは助動詞ですか?
- さるは連体詞ですか?
- さるは古語でどういう意味ですか?
- さるは古語で何活用ですか?
- さるは古語で何段活用ですか?
- さるは古語で何動詞ですか?
- さるは古語で何形ですか?
- さ語の意味は?
古語のさるはどんな意味ですか?
古語の「さる」は、動詞、連体詞、接続詞、助動詞として使われ、非常に多くの意味を持ちます。動詞としては「離れる」「避ける」「たわむれる」「さらす」「(季節や時刻が)来る」など、連体詞としては「そのような」「しかるべき」、接続詞「さるは」は「それというのも実は」「そうではあるが」、助動詞としては「~なさる」といった意味があります。
古文のさるは動詞ですか?
はい、古文の「さる」は動詞として使われることがあります。動詞の「さる」には、「去る(離れる、来る)」「避る(避ける、断る)」「戯る(たわむれる、気が利く)」「晒る・曝る(さらす、さらされる)」などの意味があります。
さるは助動詞ですか?
はい、古文の「さる」は助動詞としても使われます。動詞の未然形や連用形に接続し、親しみの気持ちや軽い尊敬の意を表す「~なさる」といった意味合いになります。
さるは連体詞ですか?
はい、古文の「さる」は連体詞としても使われます。主に「然る」と表記され、「そのような」「しかるべき」「ある」といった意味で、名詞や体言に直接接続します。
さるは古語でどういう意味ですか?
古語の「さる」は、動詞、連体詞、接続詞、助動詞として使われ、文脈によって「離れる」「避ける」「たわむれる」「さらす」「(季節や時刻が)来る」「そのような」「しかるべき」「それというのも実は」「そうではあるが」「~なさる」など、多岐にわたる意味を持ちます。
さるは古語で何活用ですか?
動詞の「さる」は、意味によってラ行四段活用(去る、避る、晒る・曝る)またはラ行下二段活用(戯る)をします。助動詞の「さる」は「さら・さり・さる・(さる)・され・され(さい)」と活用します。
さるは古語で何段活用ですか?
動詞の「さる」は、ラ行四段活用とラ行下二段活用があります。助動詞の「さる」は、活用表で見るとラ行下二段活用に似た形をとりますが、品詞は助動詞です。
さるは古語で何動詞ですか?
古語の「さる」は、ラ行四段活用またはラ行下二段活用の動詞として使われます。例えば、「去る」「避る」「戯る」「晒る・曝る」といった動詞があります。
さるは古語で何形ですか?
「さる」という形は、動詞の終止形や連体形、助動詞の終止形や連体形、または連体詞として使われます。文脈によってどの形であるかを判断する必要があります。
さ語の意味は?
「さ語」という言葉は一般的ではありませんが、もし「さる」の誤変換であれば、上記の通り多岐にわたる意味があります。古語の「さる」は、動詞、連体詞、接続詞、助動詞として使われる非常に重要な言葉です。
まとめ
- 古語の「さる」は現代語の「去る」「猿」とは異なる多様な意味を持つ。
- 動詞「さる」には「去る」「避る」「戯る」「晒る・曝る」の四つの主要な意味がある。
- 動詞「去る」は「離れる・立ち去る」の他に「季節や時刻が来る」という意味も持つ。
- 動詞「避る」は「避ける・断る」という意味で使われる。
- 動詞「戯る」は「たわむれる・気が利く・色気がある」といった豊かな感情を表す。
- 動詞「晒る・曝る」は「さらされる・さらす」という意味で自然描写に用いられる。
- 動詞「さる」はラ行四段活用とラ行下二段活用に分かれる。
- 連体詞「然る(さる)」は「そのような・しかるべき・ある」という意味で名詞に接続する。
- 接続詞「さるは」は「それというのも実は」(順接)と「そうではあるが」(逆接)の両方の意味を持つ。
- 助動詞「さる」は「~なさる」と訳され、親しみや軽い尊敬の気持ちを表す。
- 「さる」の識別には文脈判断が最も重要である。
- 活用形や接続する語から品詞を特定するコツがある。
- 「さるべき」「さること」などの連語表現も識別の手がかりとなる。
- 現代語との意味のギャップを理解することが古文読解の第一歩となる。
- 古語「さる」の多義性を理解することで古文の奥深さを感じられる。
