広大な宇宙に魅せられ、その謎を解き明かしたい、あるいは宇宙を舞台に活躍する技術を開発したいと考える高校生は多いのではないでしょうか。しかし、「宇宙」と一口に言っても、学べる分野は多岐にわたり、どの大学でどのような学びができるのか、具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。
本記事では、宇宙について深く学べる国公立大学に焦点を当て、その多様な学問分野から具体的な大学名、そして将来の進路までを徹底的に解説します。あなたの興味や目標に合った大学を見つけ、宇宙への夢を実現するための第一歩を踏み出すための参考にしてください。
宇宙を学ぶとは?多様な学問分野を知る

宇宙に関する学問は、大きく分けて「宇宙科学系」と「宇宙工学系」の二つに分類できます。それぞれの分野で研究対象やアプローチが異なり、あなたの興味がどこにあるかによって選ぶべき道が変わってきます。
宇宙科学系:宇宙の謎を解き明かす学問
宇宙科学系では、宇宙の成り立ちや法則、そこに存在する天体や物質の性質などを探求します。観測や理論構築を通じて、人類がまだ知らない宇宙の真実に迫る、非常にロマンあふれる分野です。
天文学・宇宙物理学
天文学や宇宙物理学は、星や銀河、ブラックホールといった宇宙に存在するあらゆる天体を研究対象とします。望遠鏡を使った観測データや、物理学の法則に基づいた理論的な計算を駆使し、宇宙の誕生から進化、そして未来の姿までを解き明かそうとします。例えば、系外惑星の発見や宇宙の膨張のメカニズムの解明などが、この分野の大きなテーマです。
東北大学の理学部宇宙地球物理学科・天文学専攻では、系外惑星、恒星、銀河、活動銀河核、銀河団、宇宙論など、天文学のほとんどの分野をカバーし、理論・観測による総合的な研究・教育を展開しています。
地球惑星科学
地球惑星科学は、地球はもちろん、太陽系の他の惑星や衛星、小惑星などを研究対象とします。惑星の形成過程、大気や海洋の動き、地質構造、生命の起源など、多角的な視点から惑星の特性を調べます。地球の過去や未来を予測する上で重要な役割を担う学問であり、宇宙における生命の可能性を探る研究も含まれます。
東京科学大学(旧東京工業大学)の理学院地球惑星科学系や東京大学の理学部地球惑星環境学科などで学ぶことができます。
宇宙工学系:宇宙を「利用する」技術を学ぶ学問
宇宙工学系は、宇宙空間を人類の活動の場として活用するための技術開発に焦点を当てます。ロケットや人工衛星、探査機などの設計・開発から運用まで、実践的な知識と技術が求められる分野です。
航空宇宙工学
航空宇宙工学は、航空機と宇宙機の両方を対象とし、それらの設計、製造、運用に関する技術を学びます。具体的には、ロケットの推進システム、人工衛星の軌道制御、宇宙空間での材料の挙動、航空機の空力特性など、幅広い知識が必要です。実際に宇宙へ物を運び、活動させるための基盤となる技術を習得します。
大阪公立大学の工学部航空宇宙工学科では、航空機や宇宙機の開発に必要な流体力学、構造工学、推進工学、制御工学、宇宙工学、システム工学など多岐にわたる分野を教育・研究の専門領域としています。
宇宙機システム工学
宇宙機システム工学は、人工衛星や探査機といった宇宙機全体を一つのシステムとして捉え、その設計、開発、試験、運用までを一貫して学びます。通信システム、電源システム、姿勢制御システムなど、様々な要素技術を統合し、宇宙空間で確実に機能するシステムを構築する能力を養います。JAXAとの連携が強い大学では、実際のプロジェクトに触れる機会も多くあります。
総合研究大学院大学の宇宙科学コースでは、宇宙物理学、太陽系科学、そして宇宙工学に関する理論研究、観測データの解析、および研究開発の実践を通じて高度な教育研究指導を行っています。
宇宙について学べる国公立大学一覧
日本全国には、宇宙に関する多様な学問を学べる国公立大学が数多く存在します。ここでは、地域別に主な大学とその特徴を紹介します。
北海道・東北地方の大学
- 北海道大学(理学部 物理学科): 宇宙物理学や天文学に関する研究室があります。
- 東北大学(理学部 宇宙地球物理学科・天文学専攻、工学部 航空宇宙工学科): 天文学、宇宙物理学、航空宇宙工学のいずれも深く学べる国内有数の大学です。
- 山形大学(理学部): 地球・宇宙科学を学べる学科があります。
- 北見工業大学(工学部): 地球・宇宙科学に関連する分野を学ぶことができます。
- 室蘭工業大学(工学部): 航空宇宙工学に関連する研究が行われています。
- 弘前大学(理工学部 数物科学科): 宇宙科学(天文学)系の研究室があります。
関東地方の大学
- 東京大学(理学部 物理学科・天文学専攻、工学部 航空宇宙工学科): 宇宙科学、宇宙工学ともに国内最高峰の研究が行われています。
- 東京科学大学(旧東京工業大学)(理学院 地球惑星科学系): 地球惑星科学分野で最先端の研究をしています。
- 東京都立大学(システムデザイン学部 航空宇宙システム工学域、理学部 物理学科): 航空宇宙システム工学や宇宙物理学を学ぶことができます。
- 筑波大学(理工学群): 航空宇宙工学や地球科学に関連する研究室があります。
- 横浜国立大学(理工学部): 航空宇宙工学に関連する研究室があります。
- 茨城大学(理学部 理学科): 宇宙科学(天文学)系の研究室があります。
- 千葉大学(理学部): 地球科学や宇宙科学に関連する研究室があります。
- 東京農工大学(工学部): 航空宇宙工学に関連する研究が行われています。
中部地方の大学
- 名古屋大学(理学部 物理学科、工学部 航空宇宙工学科): 宇宙物理学、航空宇宙工学ともに活発な研究が行われています。
- 静岡大学(理学部、工学部): 宇宙科学や航空宇宙工学に関連する研究室があります。
- 信州大学(理学部): 宇宙科学に関連する研究室があります。
- 富山大学(理学部、工学部): 宇宙・地球学や航空宇宙工学に関連する研究室があります。
- 岐阜大学(工学部): 航空宇宙工学に関連する研究室があります。
- 前橋工科大学(工学部): リモートセンシング研究室などで宇宙情報科学を学ぶことができます。
近畿地方の大学
- 京都大学(理学部 物理学科、工学部 物理工学科 宇宙基礎工学コース): 宇宙物理学、宇宙工学ともに高いレベルで学ぶことができます。
- 大阪大学(理学部 物理学科、工学部 航空宇宙工学科): 宇宙物理学や航空宇宙工学の研究が盛んです。
- 大阪公立大学(工学部 航空宇宙工学科、理学部 物理学科): 航空宇宙工学、宇宙物理学、重力波物理学など、幅広い宇宙関連分野を学ぶことができます。
- 神戸大学(理学部 物理学科): 宇宙科学(天文学)系の研究室があります。
- 奈良女子大学(理学部): 宇宙・地球学に関連する研究室があります。
中国・四国地方の大学
- 広島大学(理学部 物理科学科): 宇宙科学(天文学)系の研究室があります。
- 山口大学(工学部): 航空宇宙工学に関連する研究室があります。
- 鳥取大学(工学部 機械物理系学科 航空宇宙工学プログラム): 航空宇宙工学の技術者に必要な総合的素養を身につけることを目指します。
- 徳島大学(理工学部): 宇宙・地球学に関連する研究室があります。
- 高知工科大学(システム工学群): 航空宇宙エネルギーコースなどで研究を続けることができます。
九州・沖縄地方の大学
- 九州大学(工学部 航空宇宙工学科): 航空宇宙工学の研究が盛んです。
- 九州工業大学(工学部): 航空宇宙工学の研究が行われています。
- 鹿児島大学(理学部): 宇宙科学に関連する研究室があります。
- 琉球大学(理学部): 地球・宇宙科学を学べる学科があります。
大学選びのコツ:あなたに合う「宇宙」を見つけるために
多くの国公立大学で宇宙に関する学びができることが分かりましたが、その中から自分に最適な大学を選ぶには、いくつかのコツがあります。後悔のない大学選びをするために、以下の点を考慮してみてください。
研究内容とカリキュラムの確認
大学や学部によって、宇宙に関する研究の重点は大きく異なります。天体の観測や理論研究に興味があるなら天文学や宇宙物理学、ロケットや人工衛星の開発に携わりたいなら航空宇宙工学といったように、あなたの興味がどの分野にあるのかを明確にすることが大切です。
各大学のウェブサイトで、研究室の紹介や教員の専門分野、開講されている専門科目を詳しく確認しましょう。オープンキャンパスや大学説明会に参加して、直接教員や学生から話を聞くのも良い方法です。
研究設備やJAXAとの連携体制
宇宙に関する研究は、高性能な観測装置や実験設備が不可欠です。大学がどのような研究設備を持っているか、また、JAXA(宇宙航空研究開発機構)や国立天文台などの外部機関とどのような連携をしているかを確認することも重要です。JAXAは大学と連携して宇宙人材教育プログラムを実施しており、最先端の宇宙プロジェクトに触れる機会がある大学もあります。
特に、大学院での研究を視野に入れている場合は、研究環境が充実しているかどうかが、その後の研究成果やキャリアに大きく影響します。
卒業後の進路とキャリアパス
宇宙を学んだ後の進路は、研究者、技術者、教育者など多岐にわたります。航空宇宙産業、IT・通信業界、官公庁、教育機関などが主な就職先です。多くの学生が大学院に進学し、より専門的な知識と研究能力を身につけてから社会に出る傾向にあります。
志望する大学の卒業生の進路実績や、どのような企業や機関に就職しているかを調べてみましょう。将来の目標と大学での学びがどのように繋がるのかを具体的にイメージすることで、モチベーションを高めることにも繋がります。
宇宙を学ぶための準備:高校生のうちにできること
宇宙を学べる国公立大学への進学を目指す高校生にとって、今からできる準備はたくさんあります。特に重要なのは、理数系科目の基礎をしっかりと固めることと、宇宙への興味を深めることです。
理数系科目の基礎を固める
宇宙科学系、宇宙工学系ともに、物理学、数学、化学といった理数系科目の知識が不可欠です。特に、物理と数学は宇宙を学ぶ上での土台となるため、高校の授業でしっかりと理解を深め、応用力を養うことが大切です。
大学によっては、高校で履修する数学IIIやC、物理が必須となる場合がほとんどです。これらの科目を苦手意識なく学習できるよう、日々の学習に力を入れましょう。基礎がしっかりしていれば、大学での専門的な学びもスムーズに進められます。
宇宙に関する情報収集と興味を深める
宇宙に関する書籍を読んだり、科学館やプラネタリウムに足を運んだりして、宇宙への興味をさらに深めましょう。JAXAのウェブサイトや国立天文台の公開情報には、最新の研究成果や宇宙に関する興味深い情報が豊富にあります。
また、宇宙に関するニュースやドキュメンタリー番組を見るのも良い刺激になります。幅広い知識を吸収し、なぜ宇宙に興味を持ったのか、何を学びたいのかを具体的に考えることで、大学での学びの方向性が見えてくるはずです。
よくある質問

- 宇宙を学べる大学の入試は難しいですか?
- 文系でも宇宙を学べる大学はありますか?
- 宇宙関連の仕事に就くには、大学院への進学は必須ですか?
- JAXAで働くにはどのような大学に進学すれば良いですか?
- 宇宙飛行士になるための大学はありますか?
宇宙を学べる大学の入試は難しいですか?
宇宙を学べる国公立大学は、理系の中でも特に人気が高く、競争率も高い傾向にあります。特に東京大学や京都大学、名古屋大学などの難関大学では、高い学力が求められます。しかし、大学や学部、入試方式によって難易度は異なります。自身の学力レベルと照らし合わせながら、複数の大学を検討することが大切です。また、後期日程を実施している大学もあるため、選択肢を広げるためにも確認しておきましょう。
文系でも宇宙を学べる大学はありますか?
宇宙に関する学問は理系分野が中心ですが、一部の大学では文理融合の視点から宇宙を学ぶ機会を提供している場合があります。例えば、宇宙政策や宇宙法、宇宙ビジネスといった分野は、文系の知識も必要とされます。ただし、国公立大学で純粋な文系学部として宇宙を専門的に学べるケースは稀です。多くの場合、理系学部で基礎を学んだ上で、大学院などで文理融合的な研究に進むか、教養学部などで幅広い知識を身につける形になります。
興味がある場合は、各大学のカリキュラムを個別に確認することをおすすめします。
宇宙関連の仕事に就くには、大学院への進学は必須ですか?
宇宙関連の専門職、特に研究者や高度な技術開発に携わる場合は、大学院(修士課程、博士課程)への進学が強く推奨されます。大学院では、学部で学んだ基礎知識をさらに深め、特定の専門分野で自ら研究を進める能力を養うためです。多くの大学で、宇宙関連学部の卒業生の過半数が大学院に進学しています。一方で、学部卒でも就職できる職種もありますが、キャリアの選択肢や専門性の深さを考えると、大学院進学は大きな強みとなるでしょう。
JAXAで働くにはどのような大学に進学すれば良いですか?
JAXA(宇宙航空研究開発機構)で働くには、宇宙科学系または宇宙工学系の専門知識が求められます。そのため、本記事で紹介したような国公立大学の理学部や工学部で、宇宙物理学、天文学、航空宇宙工学、地球惑星科学などを学ぶのが一般的な方法です。JAXAは多様な専門分野の人材を求めているため、特定の大学に限定されるわけではありませんが、JAXAと連携している大学や、宇宙関連の研究が盛んな大学を選ぶことは、JAXAへの就職を目指す上で有利に働く可能性があります。
大学院まで進学し、専門性を高めることが、JAXAへの道を開く重要な一歩となるでしょう。
宇宙飛行士になるための大学はありますか?
宇宙飛行士になるための「特定の大学」というものはありません。宇宙飛行士の選抜基準は非常に多岐にわたり、理学、工学、医学など幅広い分野での高度な専門知識と経験が求められます。JAXAの宇宙飛行士候補者選抜では、自然科学系の大学を卒業し、3年以上の実務経験があることなどが応募条件の一つとされています。そのため、まずは宇宙科学や宇宙工学など、宇宙に関連する分野で専門性を高められる大学に進学し、その後、大学院での研究や実社会での経験を積むことが重要です。
身体能力や精神力も不可欠な要素であり、総合的な人間力が問われる職業です。
まとめ
- 宇宙を学べる国公立大学は全国に多数存在し、その学びは「宇宙科学系」と「宇宙工学系」に大別される。
- 宇宙科学系では、天文学・宇宙物理学、地球惑星科学を通じて宇宙の謎や法則を探求する。
- 宇宙工学系では、航空宇宙工学、宇宙機システム工学を通じて宇宙利用の技術開発を目指す。
- 北海道から沖縄まで、各地域に宇宙関連の学部や研究室を持つ国公立大学がある。
- 大学選びでは、自身の興味に合った研究内容やカリキュラム、研究設備、JAXAとの連携体制を確認することが重要。
- 卒業後は、航空宇宙産業、研究機関、IT業界など多様な進路があり、大学院進学が有利な場合が多い。
- 高校生のうちに理数系科目の基礎を固め、宇宙に関する情報収集を通じて興味を深めることが大切。
- 宇宙を学べる大学の入試は競争率が高い傾向にあるが、自身の目標に合った大学選びが成功の鍵となる。
- 宇宙飛行士になるための特定の大学はなく、幅広い専門知識と実務経験、そして総合的な人間力が求められる。
- JAXAで働くには、宇宙科学系または宇宙工学系の専門性を高められる大学・大学院への進学が有効。
- 文系で宇宙を専門的に学べる国公立大学は少ないが、文理融合の視点から宇宙政策などを学ぶ道もある。
- 大学のウェブサイトやオープンキャンパスで、具体的な研究内容や雰囲気を知ることが後悔のない選択に繋がる。
- 宇宙への情熱を持ち続け、着実に学びを進めることが夢の実現への第一歩となる。
- 宇宙の学びは、人類の未来を切り拓く可能性を秘めている。
- あなたの宇宙への探求心が、新たな発見や技術革新に繋がることを期待する。
