肺気腫と診断され、日々の息苦しさや食欲不振に悩んでいませんか?「何を食べるべきか」「どう食べたら良いのか」と、食事について不安を感じる方も少なくないでしょう。しかし、食事は肺気腫の症状を和らげ、体力を維持するために非常に大切な要素です。本記事では、肺気腫の方の呼吸を楽にし、生活の質を高めるための食事のコツと、具体的な食べ物、そして実践的な献立例までを徹底解説します。
肺気腫と食事の深い関係性:なぜ栄養が重要なのか

肺気腫は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一つであり、肺の機能が徐々に低下していく病気です。この病気と診断された方にとって、食事は単なる栄養補給以上の意味を持ちます。適切な栄養管理は、症状の悪化を防ぎ、日々の活動を支える土台となるからです。
呼吸に必要なエネルギーが増える肺気腫の体
肺気腫の患者さんは、健康な人に比べて呼吸をするだけでも多くのエネルギーを消費します。これは、肺の機能が低下しているため、呼吸筋がより一生懸命働かなければならないからです。まるで常にジョギングをしているような状態だと考えると分かりやすいでしょう。そのため、健康な人よりも多くのエネルギーを食事から摂取する必要があります。
エネルギーが不足すると、体は筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとし、結果として筋力が低下してしまいます。特に呼吸筋が弱ると、さらに息苦しさが増すという悪循環に陥りかねません。
食欲不振と体重減少が招く悪循環
肺気腫が進行すると、膨らんだ肺が胃を圧迫し、食欲が低下しやすくなります。また、食事中に息切れを感じたり、食べること自体に疲れてしまったりすることもあります。これにより、十分な栄養を摂取できなくなり、体重が減少してしまうケースが少なくありません。体重減少は、全身の筋力低下を招き、呼吸筋も弱らせてしまいます。
その結果、さらに息切れがひどくなり、動くことが億劫になることで活動量が減り、食欲がさらに落ちるという悪循環に陥ってしまうのです。この悪循環を断ち切るためにも、意識的な栄養摂取が求められます。
適切な栄養管理が生活の質を高める
肺気腫の治療は、薬物療法や呼吸リハビリテーションが中心ですが、これらと並行して栄養管理も非常に重要な役割を担います。適切な栄養を摂ることで、体重を維持し、筋肉量を保つことが可能です。筋肉が維持されれば、呼吸筋も強く保たれ、息切れの軽減につながります。また、免疫力の向上にも役立ち、風邪などの感染症による症状の悪化を防ぐことにもつながるでしょう。
栄養状態が改善されることで、体力がつき、活動範囲が広がり、結果として生活の質(QOL)の向上に大きく貢献します。
肺気腫の方におすすめの食べ物と栄養素

肺気腫の症状を和らげ、体力を維持するためには、特定の栄養素を意識して食事に取り入れることが大切です。ここでは、特におすすめしたい食べ物と、その栄養素について詳しく見ていきましょう。
筋肉を維持する「たんぱく質」を積極的に摂る
たんぱく質は、呼吸筋を含む全身の筋肉を作るために不可欠な栄養素です。肺気腫の患者さんは、呼吸に多くのエネルギーを使うため、筋肉が分解されやすい状態にあります。そのため、意識して良質なたんぱく質を摂取し、筋肉量の維持に努めることが重要です。毎食、手のひらサイズのたんぱく質源を取り入れることを目標にしましょう。
- 肉類:鶏むね肉、ささみ、豚ヒレ肉など、脂身の少ない部位を選びましょう。牛肉の肩ロースなどもエネルギー源として有効です。
- 魚介類:青魚(サバ、イワシなど)は、抗炎症作用のあるEPAが豊富に含まれており、特におすすめです。白身魚も消化しやすく良い選択肢となります。
- 卵・大豆製品・乳製品:卵、豆腐、納豆、牛乳、ヨーグルト、チーズなどは、手軽にたんぱく質を補給できる優れた食品です。
効率よくエネルギーを補給する「脂質」の選び方
脂質は、少量で多くのエネルギーを摂取できる効率の良い栄養素です。また、体内で代謝される際に発生する二酸化炭素の量が糖質やたんぱく質に比べて少ないため、肺への負担を軽減する効果も期待できます。特に、やせ気味の方や食欲不振で十分な量が食べられない方には、積極的に取り入れてほしい栄養素です。
- 良質な植物油:オリーブ油、ごま油、アマニ油、えごま油などは、料理に風味とコクを加えながら、エネルギーアップに役立ちます。炒め物や揚げ物、ドレッシングとして活用しましょう。
- MCTオイルなどの活用:中鎖脂肪酸を多く含むMCTオイルは、一般的な油に比べて消化吸収が早く、速やかにエネルギーに変換されます。ご飯やサラダにかけるなど、手軽に取り入れられるのが魅力です。
体の調子を整える「ビタミン・ミネラル」
ビタミンやミネラルは、体の機能を正常に保ち、免疫力を高めるために欠かせない栄養素です。特に肺気腫の患者さんにとって重要なビタミンがいくつかあります。
- ビタミンCで肺の健康を支援:ビタミンCは強力な抗酸化作用を持ち、喫煙による肺へのダメージを軽減する可能性が示唆されています。不足するとCOPDの発症リスクを高めることも報告されています。野菜や果物から積極的に摂取しましょう。
- ビタミンDの抗炎症作用:ビタミンDは、肺の炎症を抑え、組織を保護する効果が期待されています。日光浴のほか、魚介類やきのこ類から摂取できます。
- EPA(エイコサペンタエン酸)で炎症を抑える:青魚に多く含まれるEPAは、体内の炎症を抑える働きがあります。肺の炎症を軽減し、症状の緩和に役立つ可能性があります。
水分補給で痰をスムーズに
十分な水分補給は、肺気腫の患者さんにとって非常に重要です。水分が不足すると、痰が粘り気を増して切れにくくなり、息苦しさや咳の原因となります。1日にコップ8~9杯(約1.8リットル)を目安に、こまめに水分を摂るように心がけましょう。特に温かい飲み物は、気管を広げ、痰を出しやすくする効果も期待できます。ただし、心臓に負担がある場合は、主治医に適切な水分量を確認してください。
肺気腫の方が避けるべき、または控えたい食べ物

肺気腫の症状を悪化させないためには、摂取を控えるべき、または注意が必要な食べ物もあります。これらを意識することで、より快適な食生活を送れるでしょう。
お腹にガスがたまりやすい食品
お腹にガスがたまりやすい食品は、胃が膨らみ、横隔膜を圧迫して息苦しさを増す原因となります。肺気腫の患者さんは、すでに肺が膨張していることが多いため、胃の圧迫は呼吸困難をさらに悪化させる可能性があります。そのため、これらの食品はできるだけ避けるのが賢明です。
- 炭酸飲料:ビールやサイダーなど、ガスを含む飲み物は胃を膨らませます。
- イモ類:さつまいも、じゃがいもなどは、消化の過程でガスを発生させやすいとされています。
- 豆類:一部の豆類もガスを発生させやすいことがあります。
- 栗:栗も消化しにくい場合があり、ガスがたまる原因となることがあります。
塩分が多い食品
塩分の摂りすぎは、体内に水分をため込み、「むくみ」の原因となることがあります。むくみは心臓に負担をかけ、新たな息切れを引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。特に心臓に持病がある場合は、厳重な塩分管理が求められます。
- 漬物や汁物:味噌汁やスープ、ラーメンの汁などは塩分が多く含まれます。
- 麺類:うどんやそば、ラーメンなどの麺類も、汁まで飲むと塩分過多になりがちです。
- 加工食品やインスタント食品:ハム、ソーセージ、練り物、レトルト食品、カップ麺などは、保存性を高めるために塩分が多く使われています。
調味料を使う際は、かけるよりも少量をつけて食べる、減塩タイプの調味料を選ぶなどの工夫をしましょう。
炭水化物の摂りすぎに注意
炭水化物は主要なエネルギー源ですが、体内で代謝される際に比較的多くの二酸化炭素を発生させます。肺気腫の患者さんは、二酸化炭素を体外に排出する機能が低下しているため、炭水化物の摂りすぎは肺に負担をかける可能性があります。主食のご飯やパン、麺類などを食べすぎると、息苦しさが強まることがあるため、適量を心がけましょう。
その分、たんぱく質や脂質を含むおかずを増やすことで、栄養バランスを整え、呼吸を楽にすることにつながります。
息苦しさを和らげる食事のコツと実践的な工夫

肺気腫の患者さんにとって、食事は単に「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」も非常に重要です。息苦しさや疲労感がある中でも、効率よく栄養を摂取し、快適に食事を楽しむための実践的なコツをご紹介します。
少量ずつ回数を分けて食べる「分食」
一度にたくさんの量を食べると、胃が膨らんで横隔膜を圧迫し、息苦しさが増すことがあります。これを避けるために、1回の食事量を減らし、1日5~6回に分けて食べる「分食」がおすすめです。朝昼晩の3食に加えて、午前と午後に軽食(間食)を取り入れることで、無理なく必要なエネルギーと栄養素を摂取できます。間食には、おにぎりやサンドイッチ、ヨーグルト、チーズ、ゆで卵、果物などが適しています。
食べやすい調理方法と食材選び
食事の準備や食べることに疲れてしまうこともあるでしょう。そんな時は、調理方法や食材を工夫することで、負担を減らし、食事を楽しみやすくなります。口当たりが良く、喉ごしの良いものを選ぶのも良いコツです。
- 柔らかく調理する:肉は細かく切ったり、煮込んだりして柔らかくしましょう。野菜も火を通して柔らかくすると食べやすくなります。
- 油を上手に使う:ゆでる、蒸すだけでなく、炒め物や揚げ物を取り入れたり、煮物に油を加えてコクを出したりすることで、少量でもエネルギーを効率よく摂取できます。
- 風味や香りを活用する:食欲がない時は、香りの良い食材(ハーブ、スパイス、ごま油など)を使ったり、酸味のあるドレッシングを加えたりすると、食欲が刺激されることがあります。
- 一口大に切る:食べやすい大きさに切ることで、噛む回数を減らし、疲労を軽減できます。
食事の時間を快適にする環境づくり
食事の環境を整えることも、食欲増進や快適な食事につながります。ちょっとした工夫で、食事の時間がより良いものになるでしょう。
- 十分な休息をとる:食事の前に少し休憩をとることで、疲労感を軽減し、落ち着いて食事に臨めます。
- 姿勢を整える:テーブルと椅子の高さを調節し、楽な姿勢で食事ができるようにしましょう。前かがみにならないように、背もたれのある椅子を使うのも良いでしょう。
- ゆっくりとよく噛む:急いで食べると空気を飲み込みやすくなり、お腹が張る原因になります。ゆっくりとよく噛んで食べることを心がけましょう。
- 好きなものから食べる:食欲がない時でも、好きなものやエネルギーの高いものから先に食べることで、効率よく栄養を摂取できます。
栄養補助食品や流動食の賢い利用方法
どうしても食欲がない時や、通常の食事だけでは必要な栄養量が満たせない場合は、栄養補助食品や流動食を上手に活用するのも有効な方法です。これらは、少量で高カロリー・高たんぱく質を摂取できるよう工夫されています。
- 栄養調整食品:ゼリー飲料、栄養バー、プロテイン飲料など、手軽に摂取できるものが多くあります。
- 医療用栄養剤:主治医や管理栄養士に相談し、ご自身の状態に合った医療用栄養剤を利用することも可能です。
これらの食品は、食事の補助として活用し、決して通常の食事の代わりにするものではありません。必ず医師や管理栄養士に相談し、適切な製品を選び、利用方法を確認しましょう。
よくある質問

- 肺気腫の食事で、特に意識すべき栄養素は何ですか?
- 食欲がない時でも食べやすいものはありますか?
- 肺気腫の食事で、避けるべき飲み物はありますか?
- 肥満の場合と痩せている場合で食事のコツは変わりますか?
- 自炊が難しい場合、どのような食事の選択肢がありますか?
肺気腫の食事で、特に意識すべき栄養素は何ですか?
肺気腫の食事では、特に「たんぱく質」と「脂質」を意識して摂取することが重要です。たんぱく質は筋肉の維持に、脂質は効率的なエネルギー補給に役立ちます。また、ビタミンCやビタミンD、EPAなどのビタミン・ミネラルも、体の調子を整え、炎症を抑えるために大切な栄養素です。
食欲がない時でも食べやすいものはありますか?
食欲がない時は、口当たりが良く、喉ごしの良いものが食べやすい傾向にあります。例えば、ゼリー、プリン、アイスクリーム、茶碗蒸し、ヨーグルト、スープなどがおすすめです。また、少量でも高カロリーな栄養補助食品を活用するのも良い方法です。
肺気腫の食事で、避けるべき飲み物はありますか?
お腹にガスがたまりやすい炭酸飲料(ビール、サイダーなど)は、胃を膨らませて息苦しさを増す可能性があるため、避けるのがおすすめです。また、塩分が多い汁物や加工食品も、むくみや心臓への負担を考慮し、控えめにしましょう。
肥満の場合と痩せている場合で食事のコツは変わりますか?
はい、体重の状態によって食事のコツは異なります。痩せ気味の場合は、高カロリー・高たんぱく質の食事を心がけ、脂質を上手に利用してエネルギーを補給することが大切です。一方、肥満気味の場合は、皮下脂肪が横隔膜の動きを妨げ、呼吸を困難にすることがあるため、低カロリーで栄養価の高い食事を心がけ、適度な運動と合わせて体重を落とす必要があります。
いずれの場合も、適正体重の維持が重要です。
自炊が難しい場合、どのような食事の選択肢がありますか?
自炊が難しい場合は、無理せず市販のお惣菜や宅配サービスを活用しましょう。スーパーやコンビニエンスストアで手軽に購入できる高たんぱく質・高カロリーの食品(鶏肉の加工品、乳製品、栄養調整食品など)を取り入れるのも良い方法です。また、バランスの取れた食事を届けてくれる宅配サービスも増えていますので、活用を検討してみてください。
大切なのは、しっかり食べる習慣を作ることです。
まとめ
- 肺気腫では呼吸に多くのエネルギーを消費する。
- 食欲不振や体重減少が症状を悪化させる。
- 適切な栄養管理が生活の質を高める。
- たんぱく質は筋肉維持に不可欠な栄養素。
- 脂質は効率の良いエネルギー源となる。
- ビタミンCは肺の健康を支援する。
- ビタミンDは抗炎症作用が期待される。
- EPAは炎症を抑える働きがある。
- 十分な水分補給で痰を出しやすくする。
- ガスがたまりやすい食品は避ける。
- 塩分が多い食品は控えめにする。
- 炭水化物の摂りすぎに注意が必要。
- 少量ずつ回数を分けて食べる「分食」が有効。
- 食べやすい調理方法や食材選びを工夫する。
- 栄養補助食品は賢く利用する。
- 医師や管理栄養士への相談が大切。
