大切な方を亡くされた際、故人への弔意やご遺族への慰めの気持ちを伝える「お供え花」。しかし、「御供花」という言葉の正しい読み方や、贈る際のマナーについて、迷ってしまう方も少なくないのではないでしょうか。本記事では、そんなお供え花に関する疑問を全て解決できるよう、読み方からその意味、宗教ごとの違い、適切な選び方、そして手配の進め方まで、詳しく解説します。
「御供花」の正しい読み方と込められた意味

故人への最後の贈り物として、葬儀や法事の場を彩るお供え花。その呼び方には、いくつかの種類があり、それぞれに深い意味が込められています。ここでは、「御供花」の正しい読み方と、その背景にある故人への想いについて掘り下げていきましょう。
「御供花」は「きょうか」と「くげ」どちらが正しい?
「御供花」という言葉は、主に「きょうか」または「くげ」と読みます。どちらの読み方も間違いではありませんが、それぞれに由来が異なります。「きょうか」は、通夜や葬儀において故人の冥福を祈り、弔意を表すために供える生花を指すのが一般的です。 一方、「くげ」は、もともと仏堂で仏の徳を表すために供える花を指す言葉でした。
現在では、どちらの読み方も故人へ供える生花を意味する言葉として広く使われていますので、状況に応じて使い分けても問題ありません。
「御供花」が持つ故人への深い想い
お供え花は、単なる会場の装飾ではありません。故人の霊を慰め、安らかな旅立ちを願う気持ちが込められた、大切な供養の一つです。 悲しみの中にいるご遺族にとっても、多くの花に囲まれて故人を見送ることは、ささやかな慰めとなるでしょう。 また、遠方で葬儀に参列できない場合や、香典を辞退された際にも、お供え花を贈ることで故人への感謝と弔意を伝える重要な手段となります。
葬儀・法事で贈るお供え花の種類と選び方

お供え花を選ぶ際には、故人やご遺族の宗教・宗派、そして地域の慣習を尊重することが大切です。ここでは、宗教ごとのマナーや、避けるべき花の種類、そして故人を偲ぶ気持ちを伝えるためのおすすめのお花について解説します。
宗教・宗派で異なるお供え花のマナー
日本で行われる葬儀は仏式が多いですが、神式やキリスト教式では、お供え花のマナーが異なります。贈る前に、必ず故人やご遺族の宗教・宗派を確認するようにしましょう。これにより、意図せずマナー違反となることを防げます。
仏式のお供え花
仏式では、祭壇を飾る花として、籠花やフラワースタンドを贈るのが一般的です。 白色を基調とし、菊、ユリ、カーネーション、胡蝶蘭などがよく用いられます。 四十九日までは白一色でまとめるのが無難ですが、それ以降は淡いピンクや紫、黄色などの差し色を加えても良いとされています。
地域によっては、強い香りと毒性で邪気を払うとされる「樒(しきみ)」を供える慣習もあります。
神式のお供え花
神式では、かつては「榊(さかき)」をお供えとして用いるのが一般的でした。 しかし近年では、喪主が榊を供え、それ以外の参列者は花を贈るケースが増えています。 仏式と同様に、菊やカーネーション、ユリなどの白い花をメインとし、淡い黄色やピンクなどを差し色とした落ち着いた色調が好まれます。 ただし、仏式でよく用いられる胡蝶蘭は、神式ではあまり使われません。
キリスト教式のお供え花
キリスト教では、お供え花は遺族を慰めることを目的としています。 そのため、祭壇を花で飾らないこともあり、贈る場合は自宅など遺体を安置している場所に送ることが多いです。 白のユリがよく用いられますが、蘭やカーネーションなど洋花がメインとなります。 仏式や神式で使われる菊はあまり用いられず、色花が多く使われる傾向にあります。
また、名札をつけないのが一般的である点も特徴です。
避けるべきお供え花の種類と理由
お供え花には、故人への敬意を示すために避けるべき花がいくつか存在します。これらの花は、特定のイメージや宗教的な考えから不適切とされることがあります。
- トゲのある花(バラ、アザミなど):殺生や怪我を連想させるため、縁起が悪いとされます。 もし故人が好きだった場合は、トゲを取り除いてから供えるのが良いでしょう。
- 香りの強い花(ユリ、バラなど):お参りの際に香りが目立ちすぎることがあるため、避けるのが無難です。
- 毒のある花(シャクナゲなど):「仏様に毒を盛る」という考えにつながる恐れがあるため、供えないのがマナーです。
- 一日花(ムクゲなど):一日でしおれてしまうことから、「無常」を連想させるため、避けた方が良いとされます。
- 赤色の花:血や慶事を連想させるため、お悔やみの場には不向きとされています。
故人を偲ぶ気持ちを伝えるおすすめのお花
お供え花として一般的に選ばれるのは、菊、ユリ、カーネーション、胡蝶蘭などです。 これらの花は日持ちが良く、落ち着いた雰囲気があるため、弔いの場に適しています。近年では、故人が生前に好きだった花や、遺族の希望を尊重して、ルールにとらわれないお供え花を選ぶ方も増えてきました。 ただし、その場合でも、トゲや香りの強さ、毒性など、避けるべきとされる花の特性には注意が必要です。
故人を想う気持ちを大切にしつつ、マナーに配慮した花選びを心がけましょう。
お供え花を贈る際のマナーと手配の進め方

お供え花を贈る際には、金額の相場や贈るタイミング、名札の書き方など、いくつかのマナーがあります。これらを事前に把握しておくことで、失礼なく故人への弔意を伝えることができます。
お供え花の相場と「1基」「1対」の考え方
お供え花の費用相場は、故人との関係性や地域、花の種類によって異なりますが、一般的には7,000円から30,000円程度です。 故人との関係が深い親族の場合は1万円以上、友人・知人の場合は7,000円から1万円が相場とされています。 お供え花の数え方は「1基(いっき)」または「1対(いっつい)」です。
1基は1つ、1対は2つの花籠やスタンドを指します。本来は祭壇の両端に飾ることから1対で贈るのがマナーとされていましたが、近年では葬儀の小規模化に伴い、1基で贈っても失礼にはあたらないという考えが広まっています。 高額すぎるお供え花は、かえってご遺族に気を遣わせてしまう可能性もあるため、相場から大きく外れない金額を選ぶことが大切です。
誰がいつまでにお供え花を贈るべきか
お供え花は、故人の親族や友人、知人など、故人と親交のあった方が贈ることが一般的です。 遠方で葬儀に参列できない場合や、香典を辞退された際に、弔意を示す手段として贈ることもあります。 贈るタイミングは、通夜当日の午前中までに葬儀場に届くように手配するのが安心です。 通夜に間に合わない場合でも、通夜の日のうちに到着すれば、翌日の葬儀で飾ってもらうことが可能です。
葬儀に飾れないほど到着が遅れることのないよう、余裕を持って手配しましょう。
名札(立札)の書き方と注意点
お供え花には、誰から贈られたものかを示す名札(立札)を添えるのが一般的です。名札には、贈り主の名前や故人との関係性を記載します。個人で贈る場合はフルネームを、会社や団体で贈る場合は会社名や団体名、役職、代表者名を記載します。連名で贈る場合は、目上の人から順に右から記載するのがマナーです。ただし、キリスト教式の葬儀では、名札をつけないのが一般的であるため注意が必要です。
また、ご遺族が香典や供花を辞退されている場合もあるため、事前に確認することが大切です。
葬儀社を通じた手配が安心な理由
お供え花の手配は、葬儀社に直接依頼するのが最も確実で安心な方法です。 葬儀社は、会場のレイアウトや祭壇のデザインに合わせて花を準備するため、外部の花屋に依頼すると、会場の雰囲気に合わない花が届いてしまう可能性があります。また、葬儀社によっては、供花の種類やサイズ、金額が統一されている場合もあります。 事前に葬儀社に連絡し、供花を受け付けているか、どのような花が適切かを確認することで、スムーズに手配を進められます。
供花・枕花・献花・花輪の違いを理解する

葬儀やお悔やみの場で目にする「花」には、お供え花以外にも様々な種類があります。それぞれに役割や意味合いが異なるため、混同しないよう理解しておくことが大切です。
故人の枕元に飾る「枕花(まくらばな)」
枕花(まくらばな)は、故人が亡くなってから通夜が始まるまでの間に、故人の枕元に飾る花です。 故人やご遺族と特に縁の深かった方が贈ることが多く、哀悼の気持ちを込めて、故人と共に悲しみを分かち合うという意味合いがあります。 枕花は、遺体と一緒に移動するため、小ぶりな花籠やアレンジメントを選ぶのが一般的です。
訃報を聞いたら、できるだけ早く手配し、ご自宅や安置場所へ届けましょう。
参列者が手向ける「献花(けんか)」
献花(けんか)は、キリスト教式や無宗教式の葬儀でよく行われる儀式で、参列者が故人にお別れの意を込めて一輪ずつ花を手向ける行為を指します。 仏式の葬儀における焼香と同じ意味合いを持ち、故人への敬意を表すものです。 献花に用いられる花は、通常、葬儀を執り行う側が用意します。 お悔やみの気持ちを伝えるお供え花とは異なり、献花はお別れを伝える意味合いが強いのが特徴です。
式場外に飾る「花輪(はなわ)」
花輪(はなわ)は、生花や造花を円や輪の形にアレンジした大きな飾りで、主に葬儀会場の入り口や屋外に飾られます。 お供え花と同様に弔意を表すものですが、その形状や飾られる場所が異なります。 会社や団体、親族代表が贈ることが多く、地域によってはスペースの都合上、設置が禁止されている場合もあるため、事前に確認が必要です。
お供え花が祭壇周りを飾るのに対し、花輪は会場の外観を荘厳にする役割を担います。
お供え物全般を指す「供物(くもつ)」
供物(くもつ)は、「くもつ」と読み、葬儀や法要の際に故人への感謝や遺族への弔意を表すために贈るお供えの品全般を指します。 果物やお菓子、飲み物などが一般的で、祭壇に飾られます。 お供え花も供物の一種ですが、供物は花だけでなく、食べ物や飲み物など幅広い品物を含みます。 仏式では肉類や海産物などの殺生を連想させるものはタブーとされており、キリスト教式では供物を飾る習慣がないため、贈らないのが一般的です。
よくある質問

お供え花に関する疑問は尽きないものです。ここでは、皆様からよく寄せられる質問にお答えします。
家族葬でもお供え花を贈っても良いですか?
家族葬は、ご遺族の意向で香典や供花を辞退されるケースが多いため、贈る前に必ずご遺族や葬儀社に確認しましょう。 もし辞退されている場合は、その意向を尊重し、無理に贈ることは避けるのがマナーです。 後日、改めて弔問に伺う際に、手土産として日持ちのするお菓子などをお渡しするのも良いでしょう。
お供え花のお礼は必要ですか?
香典と同様に、お供え花をいただいた場合は、ご遺族からお礼状と返礼品を贈るのが一般的です。 返礼品の相場は、いただいたお供え花の金額の2分の1から3分の1程度が目安です。 品物としては、石鹸やお茶、お菓子などの「消えもの」や、タオル、ハンカチなどがよく選ばれます。 四十九日法要が明けた後、なるべく早めに感謝の気持ちを伝えましょう。
お供え花は造花でも良いですか?
基本的には生花をお供えするのが望ましいとされていますが、近年では造花やプリザーブドフラワーをお供えしても問題ないとされるケースが増えています。 特に、お墓や仏壇に常に美しい花を供えたい場合や、水やりなどの手間を省きたい場合に選ばれることがあります。 ただし、葬儀会場によっては生花のみと指定されている場合もあるため、事前に確認が必要です。
四十九日以降のお供え花の色に決まりはありますか?
四十九日までは、故人を悼む気持ちを表すために白を基調としたお供え花が一般的です。 四十九日以降は、故人の冥福を祈りつつ、少しずつ日常に戻っていくという意味合いから、白に加えて淡い色合い(黄、紫、ピンクなど)の花を取り入れても良いとされています。 故人が好きだった色や花を選ぶことで、より故人を偲ぶ気持ちを伝えられるでしょう。
遠方からお供え花を贈る場合、どうすれば良いですか?
遠方からお供え花を贈る場合は、まず葬儀を執り行う葬儀社に連絡し、供花を受け付けているか、どのような手配方法があるかを確認しましょう。 葬儀社を通じて手配することで、会場のルールに沿った花を確実に届けることができます。 また、インターネットの花屋や専門業者を利用する際は、葬儀社名、斎場名、喪主の名前、葬儀日時などの情報を正確に伝えることが重要です。
まとめ
- 「御供花」の読み方は「きょうか」または「くげ」が一般的です。
- お供え花は故人の冥福を祈り、遺族を慰める大切な意味があります。
- 仏式では菊やユリ、カーネーション、胡蝶蘭がよく用いられます。
- 神式では榊と共に白い花が、キリスト教式では洋花が主流です。
- トゲのある花や香りの強い花、毒のある花は避けるのがマナーです。
- お供え花の相場は7,000円から30,000円程度が目安です。
- 数え方は「1基」または「1対」で、近年は1基も許容されます。
- 通夜当日の午前中までに葬儀場へ届くよう手配するのが安心です。
- 名札には贈り主の名前を記載し、キリスト教式ではつけません。
- 手配は葬儀社を通じて行うのが最も確実です。
- 「枕花」は故人の枕元に飾る花で、小ぶりなものが適しています。
- 「献花」は参列者が手向ける一輪の花で、キリスト教式で一般的です。
- 「花輪」は式場外に飾る大きな飾りで、会社や団体が贈ることが多いです。
- 「供物」は花を含むお供え物全般を指し、「くもつ」と読みます。
- 家族葬では供花を辞退される場合があるため、事前確認が重要です。
- お供え花へのお礼は、返礼品とお礼状を贈るのがマナーです。
