2018年に公開された日中合作映画『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』は、遣唐使として唐に渡った若き日の空海と詩人・白楽天が、長安を揺るがす怪事件の謎を追う歴史ファンタジー作品です。総製作費150億円という破格のスケールで制作され、公開前から大きな注目を集めました。しかし、その一方で「ひどい」という厳しい評価も耳にするかもしれません。
本記事では、なぜこの映画が賛否両論を巻き起こしたのか、その理由と見どころを深掘りします。映画をまだ観ていない方も、すでに観て疑問を感じている方も、ぜひ最後まで読んで、作品への理解を深めてください。
空海映画が「ひどい」と言われる主な理由とは？
『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』が一部の観客から「ひどい」という評価を受ける背景には、いくつかの共通した意見が見られます。特に、歴史上の人物である空海を題材にしていることへの期待と、実際の映画内容とのギャップが大きな要因となっているようです。
史実との乖離が激しいという声
この映画が「ひどい」と感じる理由の一つに、史実の空海像との大きな違いが挙げられます。多くの人が抱く空海のイメージは、真言宗の開祖であり、密教を日本に伝えた偉大な僧侶というものでしょう。しかし、映画は夢枕獏の小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』を原作とした
歴史ファンタジーであり、史実の伝記映画ではありません。
そのため、歴史的な正確さを期待して鑑賞した観客からは、「空海の伝記ではない」「史実と違いすぎる」といった戸惑いの声が上がりました。映画に登場する空海は、謎めいた事件を解決する探偵のような役割を担っており、密教の修行や教えに深く踏み込む描写は限定的です。
ストーリー展開の分かりにくさ
映画のストーリー展開が複雑で分かりにくいという意見も少なくありません。唐の都・長安で次々と起こる怪事件、妖猫の呪い、そして楊貴妃の死の真相という複数の要素が絡み合い、物語は進んでいきます。特に、序盤のホラーテイストから中盤の歴史ミステリー、そして終盤の悲劇的な愛の物語へと展開していく構成は、一部の観客にとって
物語の軸が見えにくいと感じられたようです。
登場人物が多く、それぞれの思惑が交錯するため、一度の鑑賞では全体像を把握しづらいという感想も聞かれます。物語の背景にある唐の文化や歴史に関する知識がないと、さらに理解が難しくなる可能性もあります。
CGや演出に対する賛否両論
総製作費150億円を投じた本作は、その壮大なスケールと映像美が大きな魅力とされていますが、CGや演出に関しては賛否両論があります。特に、妖猫の描写や幻術の表現など、ファンタジー要素の強い部分のCGに対しては、「安っぽい」「不自然」といった批判的な意見も一部で見受けられました。一方で、東京ドーム8個分とも言われる広大なセットで再現された長安の街並みや、豪華絢爛な「極楽の宴」のシーンなどは、その
圧倒的な迫力と美しさが高く評価されています。
演出面でも、チェン・カイコー監督ならではの壮大な世界観は、観る人によって評価が分かれるポイントと言えるでしょう。
登場人物の描写に対する不満
登場人物の描写についても、一部で不満の声が上がっています。特に主人公である空海に関しては、「何を考えているのか分からない」「飄々としすぎている」といった意見が見られました。染谷将太が演じる空海は、悟りを開いたような
抑制された演技が特徴的ですが、感情移入しにくいと感じる観客もいたようです。
また、楊貴妃や白楽天といった主要な登場人物たちの内面描写が浅いと感じる声や、それぞれのキャラクターが物語の中で果たす役割が不明瞭だという指摘もありました。原作小説を読んでいない観客にとっては、キャラクターの背景や動機が伝わりにくい部分があったのかもしれません。
しかし、空海映画にはこんな魅力も！良い評価のポイント
「ひどい」という声がある一方で、『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』は多くの観客から絶賛され、その魅力に引き込まれた人も少なくありません。この映画が持つ独自の魅力や、高く評価されているポイントを見ていきましょう。
圧倒的な映像美と世界観の構築
本作の最大の魅力は、なんと言ってもその
圧倒的な映像美と壮大な世界観です。中国湖北省襄陽市に東京ドーム8個分もの巨大なセットを6年かけて建設し、唐の都・長安を忠実に再現したことは、まさに圧巻の一言です。CGだけに頼らず、実際に作り込まれたセットでの撮影は、観客を1200年前の唐の時代へと誘います。
特に、豪華絢爛な「極楽の宴」のシーンは、その色彩感覚とスケール感で多くの観客を魅了しました。チェン・カイコー監督が作り上げた幻想的で美しい映像は、まさに「東洋の雰囲気たっぷりのファンタジー」と評されるにふさわしいものです。
俳優陣の熱演と存在感
日中を代表する豪華俳優陣の熱演も、この映画の大きな見どころです。主演の染谷将太は、海外作品初挑戦ながら、9ヶ月間かけて中国語を猛勉強し、劇中のセリフを全て中国語で演じ切りました。彼の
飄々とした空海像は、観客に強い印象を与えています。また、詩人・白楽天を演じたホアン・シュアン、阿倍仲麻呂役の阿部寛、楊貴妃役のチャン・ロンロンなど、日中の実力派俳優たちがそれぞれの役柄に深みを与え、物語に引き込みます。
彼らの存在感が、壮大な物語を支える重要な要素となっています。
歴史ファンタジーとしての新たな視点
本作は、史実の空海を描く伝記映画ではなく、夢枕獏の小説を原作とした
歴史ファンタジーとして捉えることで、その真価を発揮します。歴史上の人物や出来事をベースにしつつも、妖術や幻術といった超常的な要素を大胆に取り入れ、ミステリーとして再構築されています。このアプローチは、歴史に新たな解釈を加え、観客に新鮮な驚きと想像力を掻き立てるものです。
史実にとらわれず、壮大な物語と美しい映像、そして謎解きを楽しむという視点で鑑賞すれば、この映画が持つ独特の魅力を存分に味わえるでしょう。
空海映画を観る前に知っておきたいこと
『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』をより深く楽しむためには、いくつかのポイントを事前に押さえておくことがおすすめです。これらの情報を知ることで、映画に対する期待値を適切に調整し、作品の持つ魅力を最大限に引き出すことができるでしょう。
原作小説と映画の違いを理解する
この映画は、夢枕獏の長編伝奇小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』を原作としています。そのため、史実の空海を描いたドキュメンタリーや伝記映画とは異なり、
フィクションとしての要素が強く盛り込まれています。原作小説は、空海と白楽天が妖猫の謎を追うというミステリー要素が強く、歴史上の人物を題材にした壮大なファンタジーとして描かれています。
映画もこの路線を踏襲しており、歴史的な正確さよりも、物語の面白さや映像表現に重きを置いています。事前にこの点を理解しておくことで、「史実と違う」というギャップに戸惑うことなく、作品の世界観に没入しやすくなります。
期待値を調整して鑑賞するコツ
映画を観る前に、どのような作品であるかという
期待値を調整することは、鑑賞体験をより良いものにするための重要なコツです。もしあなたが、空海の生涯や密教の教えを深く掘り下げた歴史ドラマを期待しているなら、本作は期待外れに感じるかもしれません。しかし、壮大なスケールで描かれる古代中国の幻想的な世界、謎が謎を呼ぶミステリー、そして美しい映像と豪華な俳優陣が織りなすエンターテインメント作品として捉えれば、きっと楽しめるはずです。
歴史ファンタジーとして、純粋に物語と映像美を堪能する気持ちで劇場に足を運んでみてください。
よくある質問
- Q1: 空海映画の正式名称は何ですか？
- Q2: 空海映画の監督は誰ですか？
- Q3: 空海映画の主演は誰ですか？
- Q4: 空海映画は史実に基づいていますか？
- Q5: 空海映画の制作費はいくらですか？
- Q6: 空海映画の興行収入はどのくらいでしたか？
- Q7: 空海映画はどこで視聴できますか？
- Q8: 空海映画の原作はありますか？
- Q9: 空海映画の楊貴妃役は誰ですか？
- Q10: 空海映画の阿倍仲麻呂役は誰ですか？
Q1: 空海映画の正式名称は何ですか？
A1: 映画の正式名称は『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』です。
Q2: 空海映画の監督は誰ですか？
A2: 本作の監督は、中国の巨匠チェン・カイコー（陳凱歌）です。
Q3: 空海映画の主演は誰ですか？
A3: 主演の空海役は、日本の俳優である染谷将太が務めています。
Q4: 空海映画は史実に基づいていますか？
A4: 映画は夢枕獏の小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』を原作とした歴史ファンタジーであり、厳密な史実に基づいた伝記映画ではありません。
Q5: 空海映画の制作費はいくらですか？
A5: 総製作費は約150億円とされています。
Q6: 空海映画の興行収入はどのくらいでしたか？
A6: 日本での興行収入は約17.0億円、中国では約5.3億人民元（約89億円）を記録しました。
Q7: 空海映画はどこで視聴できますか？
A7: 現在はDVDやBlu-rayでの販売・レンタルが行われているほか、一部の動画配信サービスで視聴可能です。具体的な配信状況は各サービスでご確認ください。
Q8: 空海映画の原作はありますか？
A8: はい、夢枕獏の長編伝奇小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』が原作です。
Q9: 空海映画の楊貴妃役は誰ですか？
A9: 楊貴妃役は、台湾の女優チャン・ロンロン（張榕容）が演じています。
Q10: 空海映画の阿倍仲麻呂役は誰ですか？
A10: 阿倍仲麻呂役は、日本の俳優である阿部寛が演じています。
まとめ
- 『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』は日中合作の歴史ファンタジー映画。
- 総製作費150億円を投じた壮大なスケールが特徴。
- 「ひどい」という評価は史実との乖離やストーリーの分かりにくさに起因。
- 史実の空海伝記ではなく、夢枕獏の小説が原作のフィクション。
- 圧倒的な映像美と長安の巨大セットは高く評価される点。
- 豪華俳優陣の熱演、特に染谷将太の中国語演技は注目に値する。
- 歴史ファンタジーとして鑑賞することで、作品の魅力が深まる。
- 妖猫の呪いや楊貴妃の死の謎を追うミステリー要素が強い。
- チェン・カイコー監督ならではの幻想的な世界観が展開。
- 期待値を「歴史ファンタジー」として調整すると楽しめる。
- 映像技術と物語のバランスが評価を分けるポイント。
- 中国での興行収入は日本を大きく上回った。
- 観る人によって評価が大きく異なる作品。
- 事前に原作やジャンルを理解すると鑑賞体験が向上する。
- 賛否両論あるが、一度は観てほしい話題作。