青森県に古くから伝わる郷土菓子「くじら餅」。その独特のもちもちとした食感と素朴な甘さは、多くの人々に愛され続けています。本記事では、そんな青森くじら餅をご家庭で手作りしたいと願う方のために、材料の選び方から詳しい作り方、美味しく仕上げるためのコツまで、徹底的に解説します。
遠い故郷の味を懐かしむ方も、初めてその魅力に触れる方も、この解説を参考に、ぜひ青森の伝統の味をご自身の手で再現してみてください。きっと、心温まるひとときを過ごせることでしょう。
青森くじら餅とは?その魅力と歴史

青森くじら餅は、もち米とうるち米の粉を主原料とし、砂糖やくるみを加えて蒸し上げた、素朴ながらも奥深い味わいの和菓子です。特に青森県では、鯵ヶ沢町や浅虫温泉地域で古くから親しまれてきました。その魅力は、何と言ってもその独特の食感にあります。口に入れると、もちもちとした弾力がありながらも歯切れが良く、上品な甘さが広がります。
名前の由来には諸説あります。一つは、日持ちが良いことから「久しく持つ良い餅」という意味の「久持良餅(くじらもち)」が語源という説です。また、見た目が鯨の肉に似ているから、あるいは昔はもっと大きなサイズで作られていたため鯨に例えられたという説もあります。 青森のくじら餅は、江戸時代に北前船によって京都から伝えられた京菓子がルーツとされており、その歴史は300年以上にも及びます。
地域によって「鯨餅」や「久慈良餅」と漢字表記が異なる場合もありますが、基本的には同じ伝統の味を指しています。
青森くじら餅作りに必要な材料と道具

青森くじら餅をご家庭で作るために、まずは必要な材料と道具を揃えましょう。シンプルな材料で作れるのが魅力ですが、それぞれの分量を正確に計量することが、美味しいくじら餅を作るための大切なコツです。
材料リスト(パウンド型1台分目安)
- もち粉:160g
- 上新粉:40g
- 黒糖:100g(粉末状がおすすめです)
- 砂糖:大さじ2(黒糖のみでも可能です)
- 水:200ml
- 醤油:小さじ1
- 塩:ひとつまみ
- くるみ(ロースト済みのもの):50g(お好みで増減してください)
- こしあん:75g(お好みで加えても良いでしょう)
もち粉と上新粉のバランスが、もちもちとした食感を生み出す重要なポイントです。黒糖は粉末状のものを選ぶと、水に溶けやすく、生地に均一に混ざりやすくなります。くるみは、香ばしさを引き出すためにロースト済みのものを使用するか、ご自身で軽くローストすると良いでしょう。
必要な道具
- 大きめのボウル
- 泡立て器またはゴムベラ
- 蒸し器(または深めの鍋と蒸し皿)
- パウンド型(20.8×8×5.8cm程度が目安)
- クッキングシート
- 竹串
- 計量カップ、計量スプーン
蒸し器がない場合は、深めの鍋に蒸し皿をセットし、蓋をして代用することも可能です。牛乳パックを型として利用する工夫も紹介されています。 型に敷くクッキングシートは、後で餅を取り出しやすくするために、型のサイズに合わせて準備しておきましょう。
基本の青森くじら餅の作り方ステップバイステップ

ここからは、青森くじら餅の基本的な作り方を、一つひとつの工程を追って詳しく解説します。焦らず、丁寧に作業を進めることで、きっと美味しいくじら餅が完成します。
下準備をしっかり行うコツ
まず、くるみは粗く刻んでおきましょう。食感を残したい場合は大きめに、なめらかな口当たりにしたい場合は細かく刻むと良いでしょう。次に、パウンド型にクッキングシートを敷き詰めます。シートが型にぴったりと沿うように、角まできれいに敷くことが、後で餅をきれいに取り出すための大切な準備です。
蒸し器にはたっぷりの水を入れ、火にかけて湯気を立てておきます。蒸し器が十分に温まっている状態で生地を入れることで、均一に蒸し上がります。
生地を混ぜる工程とポイント
大きめのボウルにもち粉、上新粉、黒糖、砂糖、塩を入れ、泡立て器でよく混ぜ合わせます。粉類が均一に混ざることで、ムラのない生地になります。次に、水を少しずつ加えながら、ゴムベラで混ぜていきます。一度に水を加えるとダマになりやすいので、少しずつ様子を見ながら混ぜるのがコツです。全体がなめらかになり、耳たぶくらいの柔らかさになったら、醤油を加えてさらに混ぜ合わせます。
こしあんを加える場合は、このタイミングで一緒に混ぜ込むと良いでしょう。生地がまとまり、ツヤが出てきたら、刻んだくるみを加えて全体に混ぜ込みます。
蒸し器を使った最適な蒸し方
準備しておいた型に生地を流し入れ、表面を平らにならします。生地を入れた型を、湯気が十分に上がっている蒸し器に入れます。強火で25分から30分ほど蒸しましょう。 蒸している途中で蓋を開けると温度が下がり、生地がうまく膨らまないことがあるため、蒸し上がりの時間までは開けないように注意してください。竹串を刺してみて、生地がついてこなければ蒸し上がりです。
もし生地がついてくるようであれば、さらに5分から10分ほど蒸し時間を延長してください。
冷まし方と美しい切り方
蒸し上がったくじら餅は、型に入れたまま粗熱を取ります。熱いうちに型から出すと崩れやすいので、完全に冷めるまで待ちましょう。冷めたら型から取り出し、クッキングシートを剥がします。包丁を水で濡らしながら切ると、餅がくっつきにくく、きれいに切り分けられます。お好みの厚さや形に切り分けてください。一般的には、食べやすいように1cm程度の厚さに切ることが多いです。
切り口が美しいと、見た目も一層美味しそうに見えます。
青森くじら餅をより美味しく作るためのコツ

青森くじら餅はシンプルな材料で作るからこそ、ちょっとした工夫で格段に美味しくなります。ここでは、さらに美味しく仕上げるためのコツをご紹介します。
生地の硬さ調整
生地の硬さは、くじら餅の食感を左右する重要な要素です。水の量はレシピの目安を参考にしつつも、粉の種類や湿度によって微調整が必要です。混ぜ合わせた生地が、耳たぶくらいの柔らかさになるのが理想的です。もし生地が硬すぎる場合は、水を少量ずつ加えて調整し、柔らかすぎる場合は、もち粉か上新粉を少量加えて調整しましょう。
生地が適切な硬さになることで、もちもちとした弾力のある仕上がりになります。
風味を豊かにする工夫
青森くじら餅は、黒糖とくるみの風味が特徴ですが、さらに風味を豊かにする工夫もできます。例えば、生地に少量の生姜汁を加えることで、上品な香りが加わり、より洗練された味わいになります。 また、くるみを軽くローストしてから加えることで、香ばしさが一層引き立ちます。使用する醤油も、風味の良いものを選ぶと、全体の味が引き締まります。
これらの工夫は、くじら餅の奥深い味わいを高めることにつながります。
失敗しないための注意点
くじら餅作りで失敗しないためには、いくつかの注意点があります。まず、蒸し時間はしっかりと確保することです。中まで火が通っていないと、生焼けの食感になってしまいます。竹串を刺して生地がついてこないか、必ず確認しましょう。また、蒸し上がった餅は、熱いうちに触ると火傷の恐れがあるだけでなく、形が崩れやすいので、完全に冷めてから切り分けることが大切です。
焦らず、各工程を丁寧に進めることが、失敗を避けるための鍵となります。
くじら餅のアレンジレシピと楽しみ方

伝統的な青森くじら餅も美味しいですが、少しアレンジを加えることで、さらに楽しみ方が広がります。また、美味しく保存して長く味わう方法も知っておきましょう。
黒糖以外の味付け
青森くじら餅は黒糖が一般的ですが、白砂糖や醤油味、味噌味など、地域や家庭によって様々な味付けがあります。 例えば、黒糖の代わりにきな粉を混ぜ込んだり、抹茶を加えて風味豊かな抹茶くじら餅にするのもおすすめです。また、中にあんこを包み込んだり、刻んだドライフルーツを混ぜ込んだりするのも良いでしょう。自分好みの味を見つけることで、くじら餅の楽しみ方が広がります。
季節の素材を取り入れる
季節ごとに旬の素材を取り入れることで、くじら餅をさらに楽しめます。例えば、春には桜の葉の塩漬けを混ぜ込んだり、夏にはレモンや柚子の皮を加えて爽やかな風味にしたりするのも良いでしょう。秋には栗の甘露煮を混ぜ込んだり、冬にはシナモンなどのスパイスを加えて温かみのある味わいにするのもおすすめです。これらのアレンジは、季節感を味わうだけでなく、くじら餅の新たな魅力を発見するきっかけにもなります。
保存方法と日持ちについて
くじら餅は、常温で数日保存が可能です。 しかし、時間が経つと硬くなってしまう性質があります。 硬くなった場合は、1cmほどの厚さに切り、電子レンジで数十秒温めると柔らかさが戻ります。 また、オーブントースターで軽く焼くと、表面が香ばしくなり、違った食感を楽しめます。 長期保存したい場合は、ラップでしっかりと包んでから冷凍保存が可能です。
冷凍したくじら餅は、自然解凍してから温め直すと美味しくいただけます。
よくある質問

青森くじら餅について、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。疑問を解消して、より深くくじら餅を楽しんでください。
- くじら餅はなぜくじら餅というのですか?
- くじら餅はどこのお菓子ですか?
- くじら餅の材料は何ですか?
- くじら餅は日持ちしますか?
- くじら餅はレンジで作れますか?
- くじら餅は冷凍できますか?
- くじら餅とゆべしの違いは何ですか?
くじら餅はなぜくじら餅というのですか?
くじら餅の名前の由来にはいくつかの説があります。一つは、日持ちが良いことから「久しく持つ良い餅」という意味の「久持良餅(くじらもち)」が語源という説です。 また、見た目が鯨の肉に似ているから、あるいは昔は現在よりも大きく作られていたため鯨に例えられたという説もあります。 鯨肉は実際には入っていません。
くじら餅はどこのお菓子ですか?
くじら餅は、主に青森県(鯵ヶ沢町や青森市浅虫温泉付近)と山形県(新庄市・最上地方)で作られている郷土菓子です。 同じ名前でも、地域によって味や食感、材料に違いが見られます。
くじら餅の材料は何ですか?
青森くじら餅の主な材料は、もち粉、上新粉(うるち米粉)、砂糖(黒糖が一般的)、水、醤油、塩、そしてくるみです。 地域によってはこしあんを加えることもあります。
くじら餅は日持ちしますか?
くじら餅は、製造日から約1週間程度が賞味期限とされています。 保存料や添加物を使用していない場合が多く、時間が経つと硬くなる性質があります。
くじら餅はレンジで作れますか?
はい、電子レンジで手軽に作れるくじら餅のレシピも存在します。 牛乳パックなどを型として利用し、電子レンジで加熱することで、蒸し器を使わずに作ることが可能です。
くじら餅は冷凍できますか?
はい、くじら餅は冷凍保存が可能です。 硬くなったくじら餅を1cm幅に切ってラップで包み、冷凍庫で保存すると良いでしょう。自然解凍後、電子レンジで温め直したり、オーブントースターで焼いたりして美味しく食べられます。
くじら餅とゆべしの違いは何ですか?
くじら餅とゆべしは、どちらも米粉を主原料とする餅菓子で、くるみが入っている点など共通点も多いですが、一般的には異なるお菓子として認識されています。 ゆべしは醤油や味噌で味付けされることが多く、地域によって様々な形や製法があります。くじら餅は蒸し菓子の一種で、山形県ではゆべしの一種と説明されることもあります。
青森のくじら餅は、水気を抑えた羊羹に近い外観で、甘すぎず、弾力のある歯ごたえが特徴です。
まとめ
- 青森くじら餅は、もち米とうるち米の粉を主原料とした伝統的な郷土菓子です。
- もちもちとした食感と素朴な甘さが特徴で、多くの人々に愛されています。
- 名前の由来には「久しく持つ良い餅」や「鯨の肉に似ている」などの説があります。
- 江戸時代に京都から北前船で伝わった歴史を持つ和菓子です。
- 材料はもち粉、上新粉、黒糖、水、醤油、塩、くるみが基本です。
- こしあんを加えることで、より風味豊かな仕上がりになります。
- 蒸し器を使って丁寧に蒸し上げるのが伝統的な作り方です。
- 生地の硬さ調整が、もちもち食感を生み出す大切なコツです。
- 生姜汁を加えることで、上品な香りをプラスできます。
- 蒸し時間はしっかりと確保し、冷めてから切り分けるのが成功の鍵です。
- 黒糖以外の味付けや、季節の素材を取り入れるアレンジも楽しめます。
- 硬くなったくじら餅は、レンジやオーブントースターで温めると柔らかさが戻ります。
- 長期保存には冷凍がおすすめです。
- 電子レンジを使った簡単な作り方も存在します。
- くじら餅とゆべしは似ていますが、異なる特徴を持つ餅菓子です。
- ご家庭で手作りすることで、青森の伝統の味を深く味わえます。
