80歳以上になり、医療費の負担が増えることに不安を感じていませんか?「後期高齢者高額療養費制度」は、高額な医療費がかかった際に家計の負担を軽減してくれる大切な制度です。本記事では、この制度の仕組みや、80歳以上の方に適用される自己負担限度額、そして具体的な申請方法について、分かりやすく徹底解説します。
後期高齢者医療制度と高額療養費制度の基本

日本では、誰もが安心して医療を受けられるよう、公的な医療保険制度が整備されています。その中でも、75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」と、医療費が高額になった際に家計の負担を軽減する「高額療養費制度」は、高齢期の生活を支える重要な柱です。これらの制度を理解することは、医療費の不安を和らげる第一歩となるでしょう。
後期高齢者医療制度とは?
後期高齢者医療制度は、75歳以上の全ての方(および65歳以上75歳未満で一定の障害があると認定された方)が加入する医療保険制度です。75歳の誕生日を迎えると、それまで加入していた健康保険や国民健康保険から、自動的にこの制度へ移行します。この制度の運営は、都道府県ごとに設置された後期高齢者医療広域連合が主体となり、市区町村と事務を分担して行っています。
この制度の目的は、後期高齢者の心身の特性や生活実態を踏まえ、適切な医療を提供することにあります。窓口での自己負担割合は、所得に応じて1割、2割、または3割と定められています。
高額療養費制度の仕組み
高額療養費制度は、1ヶ月(月の初めから終わりまで)に医療機関や薬局の窓口で支払った医療費の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限額(自己負担限度額)を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。
この制度があることで、たとえ高額な医療費がかかったとしても、家計が破綻するような事態を防ぐことができます。例えば、医療費が100万円かかった場合でも、自己負担限度額を超えた分は払い戻されるため、実際に支払う金額は大幅に抑えられます。
制度の対象となる医療費とならない医療費
高額療養費制度の対象となるのは、保険診療の対象となる医療費です。具体的には、診察、検査、治療、投薬、入院基本料などが含まれます。
一方で、以下の費用は高額療養費制度の対象外となります。
- 差額ベッド代(個室や特別な病室を利用した際の追加料金)
- 入院中の食事代
- 先進医療にかかる費用(技術料部分)
- 美容整形や歯科矯正など、美容を目的とした治療費
- 健康診断や予防接種の費用
- 保険適用外の治療費や薬剤費(漢方薬やサプリメントなども含む)
これらの費用は自己負担となるため、民間の医療保険などで備えておくことも検討すると良いでしょう。
80歳以上の方の自己負担限度額を詳しく解説

後期高齢者医療制度における医療費の自己負担限度額は、年齢だけでなく、所得区分によって大きく異なります。80歳以上の方も、この所得区分に応じた自己負担限度額が適用されます。ご自身の所得区分を把握し、どのくらいの医療費が上限となるのかを知ることが大切です。
所得区分で変わる自己負担限度額
後期高齢者医療制度では、所得に応じて以下の3つの区分に分けられ、それぞれ自己負担限度額が設定されています。
- 現役並み所得者:住民税課税所得が145万円以上の方。世帯内に後期高齢者が複数いる場合は、その合計収入が520万円以上の場合も含まれます。
- 一般:現役並み所得者と低所得者I・IIのいずれにも該当しない方。
- 低所得者II:住民税非課税世帯の方。
- 低所得者I:住民税非課税世帯で、世帯全員の所得が一定基準(年金収入80万円以下など)を満たす方。
自己負担割合は、毎年8月1日に前年の所得に基づいて見直されます。
現役並み所得者(課税所得145万円以上)
現役並み所得者は、所得に応じてさらに3つの区分に分かれます。
- 現役並み所得者III(課税所得690万円以上):自己負担限度額は252,600円+(医療費-842,000円)×1%です。
- 現役並み所得者II(課税所得380万円以上):自己負担限度額は167,400円+(医療費-558,000円)×1%です。
- 現役並み所得者I(課税所得145万円以上):自己負担限度額は80,100円+(医療費-267,000円)×1%です。
これらの区分に該当する方は、医療費の窓口負担割合が3割となります。
一般(課税所得145万円未満)
現役並み所得者以外の一般所得者の方の自己負担限度額は、外来(個人ごと)が18,000円、外来+入院(世帯ごと)が57,600円です。
2022年10月からは、一定以上の所得がある75歳以上の方の窓口負担割合が1割から2割に引き上げられました。 具体的には、課税所得が28万円以上で、かつ「年金収入+その他の合計所得金額」が単身世帯で200万円以上、複数世帯で合計320万円以上の場合に2割負担となります。
低所得者II(住民税非課税世帯)
住民税非課税世帯の方(低所得者II)の自己負担限度額は、外来(個人ごと)が8,000円、外来+入院(世帯ごと)が24,600円です。
この区分に該当する方は、医療費の窓口負担割合が1割となります。
低所得者I(住民税非課税世帯で年金収入80万円以下など)
住民税非課税世帯で、世帯全員の所得が一定基準(年金収入80万円以下など)を満たす方(低所得者I)の自己負担限度額は、外来(個人ごと)が8,000円、外来+入院(世帯ごと)が15,000円です。
この区分に該当する方も、医療費の窓口負担割合は1割です。
外来と入院の自己負担限度額
高額療養費制度における自己負担限度額は、外来と入院で計算方法が異なります。70歳以上の方の場合、外来の自己負担限度額は個人単位で適用され、入院と外来を合わせた自己負担限度額は世帯単位で適用されます。
特に、70歳以上の場合は、金額にかかわらず自己負担分をすべて合算できる点が特徴です。 これにより、複数の医療機関を受診した場合でも、合算して高額療養費の対象となる可能性が高まります。
多数回該当とは?
高額療養費制度には、「多数回該当」という重要な仕組みがあります。これは、直近12ヶ月間に3回以上高額療養費の支給を受けている場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに引き下げられる制度です。
例えば、70歳以上の一般所得者の場合、通常の外来+入院の自己負担限度額は57,600円ですが、多数回該当が適用されると44,400円に軽減されます。 慢性的な病気で継続的に医療費がかかる方にとっては、非常に大きな助けとなるでしょう。
高額療養費の申請方法と必要なもの

高額療養費の支給を受けるためには、原則として申請が必要です。しかし、事前に手続きをしておくことで、医療機関の窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることも可能です。ここでは、申請の流れと必要な書類、そして便利な事前手続きについて解説します。
申請の流れと窓口
高額療養費の申請は、大きく分けて「事後申請」と「事前申請」の2つの方法があります。
事後申請の場合:
医療機関の窓口で一旦医療費を支払い、後日、自己負担限度額を超えた分を払い戻してもらう方法です。
- 医療機関で医療費を支払います。
- 診療月の約3~4ヶ月後に、お住まいの市区町村(後期高齢者医療広域連合)から「高額療養費支給申請書」が送付されます。
- 申請書に必要事項を記入し、医療機関の領収書などを添付して、郵送または窓口で提出します。
- 申請から約1ヶ月半~2ヶ月後に、指定した口座に高額療養費が振り込まれます。
一度申請書を提出すると、次回以降は原則として手続き不要で、自動的に振り込まれる場合もあります。
事前申請の場合(限度額適用認定証の利用):
高額な医療費がかかることが事前に分かっている場合、事前に「限度額適用認定証」を申請し、医療機関の窓口で提示することで、支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。
- 加入している後期高齢者医療広域連合または市区町村の窓口で「限度額適用認定申請書」を入手し、提出します。
- 申請から約1~2週間で「限度額適用認定証」が郵送されます。
- 医療機関の窓口で健康保険証と一緒に「限度額適用認定証」を提示します。
- 窓口での支払いが自己負担限度額までとなります。
マイナンバーカードを健康保険証として利用している場合は、オンライン資格確認を導入している医療機関であれば、限度額適用認定証を提示しなくても窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることが可能です。
申請に必要な書類
高額療養費の申請には、一般的に以下の書類が必要となります。
- 高額療養費支給申請書(市区町村から送付されるもの)
- 医療機関の領収書
- 後期高齢者医療被保険者証
- 振込先口座がわかるもの(預金通帳など)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 世帯主および対象者のマイナンバーがわかるもの
自治体によって必要書類が異なる場合があるため、事前に確認することをおすすめします。
事前に手続きできる「限度額適用認定証」
「限度額適用認定証」は、医療費が高額になることが予想される場合に、事前に申請しておくことで、医療機関の窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられる便利な制度です。特に、入院や手術などで高額な医療費がかかることが分かっている場合には、この認定証を事前に取得しておくことで、一時的な経済的負担を大きく軽減できます。
この認定証は、加入している後期高齢者医療広域連合または市区町村の窓口で申請できます。申請から交付までには通常1~2週間程度かかるため、余裕を持って手続きを進めることが大切です。
よくある質問

- 後期高齢者医療制度の自己負担割合は何割ですか?
- 75歳以上で医療費が無料になることはありますか?
- 高額療養費はいつ振り込まれますか?
- 高額療養費の申請は遡ってできますか?
- 介護保険サービスも高額療養費の対象になりますか?
- 夫婦で医療費が高額になった場合、合算できますか?
- 80歳以上で高額療養費の特例はありますか?
後期高齢者医療制度の自己負担割合は何割ですか?
後期高齢者医療制度の自己負担割合は、所得に応じて1割、2割、3割のいずれかです。原則として1割負担ですが、一定以上の所得がある方は2割または3割負担となります。
75歳以上で医療費が無料になることはありますか?
75歳以上で医療費が完全に無料になる制度は、基本的にありません。ただし、高額療養費制度や、自治体独自の医療費助成制度(重度心身障害者医療費助成など)を利用することで、自己負担額を大幅に軽減できる場合があります。
高額療養費はいつ振り込まれますか?
高額療養費は、医療機関を受診した月から概ね3~4ヶ月後に、指定の口座に振り込まれるのが一般的です。 医療機関からの診療報酬明細書(レセプト)の提出や審査に時間がかかるため、支給までに期間を要します。
高額療養費の申請は遡ってできますか?
はい、高額療養費の申請は、医療費を支払った月の翌月1日から2年以内であれば遡って申請することが可能です。 過去に高額な医療費を支払った覚えがある場合は、領収書などを確認して申請を検討してみましょう。
介護保険サービスも高額療養費の対象になりますか?
介護保険サービスは高額療養費制度の直接の対象ではありませんが、医療保険と介護保険の両方の自己負担額が高額になった場合に、その合計額を軽減する「高額医療・高額介護合算療養費制度」があります。 これは、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間の自己負担額を合算して計算されます。
夫婦で医療費が高額になった場合、合算できますか?
後期高齢者医療制度に加入している夫婦の場合、同じ世帯であれば医療費を合算して高額療養費を申請できます。 ただし、夫婦で異なる医療保険に加入している場合は合算できません。
80歳以上で高額療養費の特例はありますか?
80歳以上の方に特有の特別な高額療養費の特例は、現在のところ設けられていません。高額療養費制度は、75歳以上の後期高齢者医療制度に加入している方であれば、年齢に関わらず所得区分に応じた自己負担限度額が適用されます。 ただし、2022年10月からの制度改正により、一定以上の所得がある75歳以上の方の窓口負担割合が1割から2割に引き上げられています。
まとめ
- 後期高齢者医療制度は75歳以上の方が加入する医療保険制度です。
- 高額療養費制度は、1ヶ月の医療費自己負担額が上限を超えた場合に払い戻される制度です。
- 80歳以上の方も、所得区分(現役並み所得者、一般、低所得者I・II)に応じて自己負担限度額が設定されます。
- 2022年10月より、一定所得のある75歳以上の方の窓口負担割合は1割から2割に引き上げられました。
- 高額療養費の対象となるのは保険診療の医療費のみで、差額ベッド代や食事代などは対象外です。
- 高額療養費の申請は、事後申請と事前申請(限度額適用認定証)の2つの方法があります。
- 限度額適用認定証を事前に取得すれば、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。
- 直近12ヶ月間に3回以上高額療養費の支給を受けている場合、「多数回該当」により自己負担限度額がさらに軽減されます。
- 高額療養費は、医療機関受診から概ね3~4ヶ月後に振り込まれます。
- 申請は医療費を支払った月の翌月1日から2年以内であれば遡って可能です。
- 医療費と介護費が高額になった場合は「高額医療・高額介護合算療養費制度」が利用できます。
- 後期高齢者医療制度に加入している夫婦は、同じ世帯であれば医療費を合算して申請できます。
- マイナンバーカードを保険証として利用すると、限度額適用認定証なしで窓口負担を抑えられる場合があります。
- ご自身の所得区分や負担割合を定期的に確認することが大切です。
- 医療費の不安を軽減するためにも、制度を理解し、積極的に活用しましょう。
- 不明な点があれば、お住まいの市区町村や後期高齢者医療広域連合の窓口に相談することをおすすめします。
