「年金をもらいながら、もう少し働きたいけれど、年金が減ってしまうのは困る…」そうお考えではありませんか?老後の生活資金に不安を感じる方にとって、年金と収入のバランスはとても重要な問題です。
本記事では、国民年金をもらいながら働ける金額の上限や、年金が減額されない働き方について詳しく解説します。在職老齢年金制度の仕組みや計算方法も分かりやすくお伝えするので、ぜひ老後の働き方を考える参考にしてください。
国民年金は働きながらでも減額されない?

年金を受け取りながら働くことは可能ですが、収入によっては年金の一部が調整される「在職老齢年金制度」という仕組みがあります。しかし、この制度が適用されるのは、主に厚生年金を受給している方です。国民年金のみを受給している場合は、原則として収入による減額の心配はありません。
老齢基礎年金は収入による減額の対象外
日本の公的年金制度は、全国民が加入する「国民年金」と、会社員や公務員が加入する「厚生年金」の二階建て構造になっています。国民年金から支給される「老齢基礎年金」は、働き方や収入の多さに関わらず、原則として全額支給されます。つまり、国民年金だけを受け取っている方は、いくら働いても老齢基礎年金が減額されることはありません。
これは、老齢基礎年金が全ての国民に共通の基礎的な生活保障を目的としているためです。安心して働き、収入を得られるでしょう。
厚生年金は「在職老齢年金制度」で減額される可能性がある
一方で、会社員や公務員として働いていた方が受け取る「老齢厚生年金」は、働きながら一定以上の収入を得ると、年金の一部または全部が支給停止となる可能性があります。
この仕組みを「在職老齢年金制度」と呼びます。老齢厚生年金を受給しながら厚生年金に加入して働く場合に適用される制度です。
「年金をもらいながら働きたい」と考える多くの方が、この在職老齢年金制度の対象となるため、その仕組みをしっかりと理解しておくことが大切です。
在職老齢年金制度の仕組みと計算方法

在職老齢年金制度は、老齢厚生年金を受給しながら働く方の年金額を調整する制度です。この制度の対象となるのは、60歳以上で厚生年金保険に加入して働いている方です。
ここでは、制度の具体的な仕組みと、年金が支給停止となる基準額、そして支給停止額の計算方法について詳しく見ていきましょう。
在職老齢年金制度とは?
在職老齢年金制度は、60歳以降に厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受け取る方を対象に、給与と年金の合計額に応じて年金額が調整される仕組みです。 この制度は、高齢者の就労を阻害しない観点や、現役世代の負担を考慮するなどの見直しを経て、現在の形になっています。 働きながら収入を得ることで、年金制度を支える側にも回っていただくという考え方も背景にあります。
支給停止の対象となるのは老齢厚生年金のみであり、老齢基礎年金は収入に関わらず全額支給されます。
支給停止となる基準額(65歳以降)
65歳以降に老齢厚生年金を受給しながら働く場合、年金が支給停止となるかどうかの基準額は、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額で判断されます。
「基本月額」とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額のことです。 「総報酬月額相当額」とは、その月の標準報酬月額と、その月以前1年間の標準賞与額の合計を12で割った額を足したものです。
2025年度(令和7年度)の基準額は月額51万円です。 この合計額が51万円を超えると、年金の一部が支給停止の対象となります。 ただし、2026年4月からはこの基準額が月額65万円に引き上げられる予定です。 これにより、これまでよりも高い収入を得ながら年金を減額されずに受け取れる方が増える見込みです。
支給停止額の計算方法
基本月額と総報酬月額相当額の合計が基準額(2025年度は51万円)を超えた場合、超過した金額の半分が年金から減額されます。
計算式は以下の通りです(2025年度基準)。
支給停止額(月額)=(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2
例えば、基本月額が15万円、総報酬月額相当額が45万円の場合、合計は60万円です。 基準額の51万円を超過した分は9万円(60万円-51万円)なので、その半分の4.5万円が支給停止額となります。 この場合、実際に受け取れる年金は10.5万円(15万円-4.5万円)です。
このように、ご自身の年金額と給与額を把握し、事前にシミュレーションすることが大切です。
60歳から64歳で厚生年金を受給する場合の注意点
60歳から64歳で「特別支給の老齢厚生年金」を受給している方も、在職老齢年金制度の対象となります。 以前は60歳から64歳と65歳以降で基準額が異なっていましたが、2022年4月以降は65歳以上の方と同じ仕組みで支給停止額が計算されるようになりました。 そのため、現在では60歳から64歳の方も、基本月額と総報酬月額相当額の合計が51万円(2025年度基準)を超えると、年金が減額される可能性があります。
また、65歳未満で働く方が、再雇用などで収入が減った場合に雇用保険から「高年齢雇用継続給付」を受け取れるケースがあります。 この給付金を受け取ると、在職老齢年金による支給停止に加えて、さらに年金の一部が支給停止になることがあるため、注意が必要です。
年金をもらいながら働くメリットとデメリット

年金を受け取りながら働くことは、経済的な安定だけでなく、社会とのつながりや生きがいにもつながります。しかし、一方で注意すべき点もあります。ここでは、年金をもらいながら働くことのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。
働くことのメリット
年金をもらいながら働くことには、多くのメリットがあります。
- 収入の増加と生活の安定: 年金だけでは不足する生活費を補うことができ、経済的なゆとりが生まれます。 貯蓄を取り崩すペースを遅らせることも可能です。
- 厚生年金の増額: 65歳以降も厚生年金に加入して働くと、支払った保険料が年金額に反映され、将来受け取る老齢厚生年金が増額されます。これを「在職定時改定」と呼び、年1回見直しが行われます。
- 社会とのつながりの維持: 仕事を通じて社会との接点を持ち続けることで、孤立感を防ぎ、精神的な充実感を得られます。
- 健康維持: 適度な労働は、身体的・精神的な健康維持に役立つことがあります。活動的な生活を送ることで、生活習慣病の予防にもつながるでしょう。
- 生きがいの発見: 新しいスキルを習得したり、これまでの経験を活かしたりすることで、新たな生きがいや目標を見つけられます。
これらのメリットは、老後の生活をより豊かにするために、働くという選択肢を後押しする大切な要素です。
働くことのデメリット
年金をもらいながら働くことには、メリットだけでなくデメリットも存在します。
- 年金が減額される可能性: 在職老齢年金制度により、老齢厚生年金が減額される可能性があります。 収入を増やしたつもりが、年金が減ってしまい、思ったほど手取りが増えないケースも考えられます。
- 社会保険料の負担: 厚生年金に加入して働く場合、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料を支払う必要があります。これにより、手取り収入が減少します。
- 税金の負担: 年金と給与の両方に税金がかかるため、確定申告が必要になったり、税金の負担が増えたりする可能性があります。 公的年金等の収入金額が年400万円を超える場合、または公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が年20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
- 高年齢雇用継続給付との調整: 65歳未満で高年齢雇用継続給付を受給している場合、年金がさらに減額されることがあります。
これらのデメリットを理解し、ご自身の状況に合わせて働き方を検討することが重要です。
年金と収入のバランスを考えるコツ

年金をもらいながら働く際に、年金が減額されることを避けたいと考える方は多いでしょう。ここでは、年金と収入のバランスを上手に取りながら働くためのコツをご紹介します。
働き方を工夫する
年金が減額されない働き方を選ぶためには、いくつかの工夫が考えられます。
- 収入を基準額以下に抑える: 老齢厚生年金と給与(賞与を含む)の合計が、支給停止調整額(2025年度は月額51万円、2026年4月からは月額65万円)を超えないように調整する方法です。 パートやアルバイトで短時間勤務にする、あるいは再雇用後の給与を調整してもらうなどの方法があります。
- 厚生年金に加入しない働き方を選ぶ: 在職老齢年金制度の対象となるのは、厚生年金に加入して働いている方です。 そのため、厚生年金に加入しない働き方を選べば、収入が増えても年金が減額されることはありません。 例えば、個人事業主やフリーランスとして働く、あるいは厚生年金非加入の事業所で働くといった方法が挙げられます。 ただし、個人事業主は収入が不安定になるリスクや、社会保険料を自分で支払う必要がある点に注意が必要です。
- ボーナスを含めた総報酬月額相当額を意識する: 毎月の給与は基準額以内でも、ボーナスを含めた「総報酬月額相当額」で計算すると基準を超えてしまい、年金がカットされるケースがあります。 ボーナスの有無や金額も考慮して、年間の収入計画を立てましょう。
ご自身のライフスタイルや希望する収入に合わせて、最適な働き方を見つけることが大切です。
専門家への相談も検討する
年金制度は複雑であり、個々の状況によって最適な働き方や受給計画は異なります。そのため、年金事務所や社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することも有効な方法です。
専門家は、ご自身の年金受給額や働き方、今後のライフプランなどを総合的に考慮し、年金が減額されないための具体的なアドバイスや、最適な働き方の提案をしてくれます。 また、確定申告や税金に関する疑問も解決できるでしょう。 無料相談を受け付けている機関もあるため、積極的に活用を検討してみてください。
よくある質問

- 国民年金だけを受給している場合、収入による減額はありますか?
- パートやアルバイトでも在職老齢年金制度の対象になりますか?
- 自営業の場合、年金は減額されますか?
- 年金以外の収入(不動産収入や投資収入など)も減額の対象になりますか?
- 在職老齢年金制度の基準額は今後変わる可能性はありますか?
国民年金だけを受給している場合、収入による減額はありますか?
いいえ、国民年金から支給される老齢基礎年金は、働き方や収入の多さに関わらず、原則として全額支給されます。そのため、国民年金だけを受給している場合は、いくら働いても年金が減額される心配はありません。
パートやアルバイトでも在職老齢年金制度の対象になりますか?
パートやアルバイトであっても、厚生年金保険の加入条件を満たして働いている場合は、在職老齢年金制度の対象となります。 勤務時間や日数、給与額によっては厚生年金に加入することになるため、ご自身の働き方が厚生年金の加入条件に該当するかどうかを確認することが重要です。
自営業の場合、年金は減額されますか?
自営業の方は、原則として厚生年金保険に加入しないため、在職老齢年金制度の対象にはなりません。 したがって、自営業で収入を得ても、老齢厚生年金が減額されることはありません。ただし、国民年金保険料は別途納付する必要があります。
年金以外の収入(不動産収入や投資収入など)も減額の対象になりますか?
在職老齢年金制度で年金が減額される対象となるのは、厚生年金保険に加入して得た給与や賞与(総報酬月額相当額)と老齢厚生年金です。不動産収入や投資収入、個人年金などの年金以外の収入は、在職老齢年金制度による減額の対象にはなりません。
在職老齢年金制度の基準額は今後変わる可能性はありますか?
はい、在職老齢年金制度の支給停止調整額は、社会情勢や年金制度の見直しに伴い、変更される可能性があります。実際に、2026年4月からは基準額が月額51万円から65万円に引き上げられる予定です。 最新の情報は、日本年金機構のウェブサイトや厚生労働省の発表などで確認するようにしましょう。
まとめ
- 国民年金(老齢基礎年金)は、働きながら収入を得ても減額されない。
- 老齢厚生年金は「在職老齢年金制度」により、収入に応じて減額される可能性がある。
- 在職老齢年金制度の対象は、60歳以上で厚生年金に加入して働く方。
- 支給停止の基準額は「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計で判断される。
- 2025年度の基準額は月額51万円だが、2026年4月からは月額65万円に引き上げられる予定。
- 支給停止額は「(基本月額+総報酬月額相当額-基準額)÷2」で計算される。
- 年金をもらいながら働くメリットは、収入増加、厚生年金増額、社会とのつながり、健康維持など。
- デメリットは、年金減額の可能性、社会保険料や税金の負担増。
- 年金が減額されない働き方として、収入を基準額以下に抑える方法がある。
- 厚生年金に加入しない個人事業主やフリーランスとして働く方法も有効。
- ボーナスを含めた「総報酬月額相当額」を意識した収入計画が重要。
- 専門家(年金事務所、社労士、FP)への相談も検討すると良い。
- パートやアルバイトでも厚生年金加入条件を満たせば在職老齢年金の対象となる。
- 自営業の収入は在職老齢年金制度の減額対象外。
- 不動産収入や投資収入は在職老齢年金制度の減額対象外。
- 60歳から64歳で特別支給の老齢厚生年金を受給する場合も在職老齢年金制度の対象。
- 高年齢雇用継続給付を受給すると、年金がさらに減額される場合がある。
