健康診断で「空腹時血糖値が高い」と指摘され、不安を感じている方もいるのではないでしょうか。空腹時血糖値は、糖尿病の診断や管理において非常に重要な指標です。しかし、具体的にどのくらいの数値で入院が必要になるのか、また、もしもの時にどう対処すれば良いのか、ご存知ない方も多いかもしれません。本記事では、空腹時血糖値の正常値から、入院が必要となる危険なレベル、そして緊急時の対処法までを分かりやすく解説します。
ご自身の健康を守るために、ぜひ最後までお読みください。
空腹時血糖値の基本を知ろう:正常値と危険な数値の目安

空腹時血糖値とは、10時間以上食事を摂らない状態で測定した血糖値のことです。この数値は、食事の影響が少ないため、体内の血糖コントロールの状態を正確に把握する上で非常に重要となります。健康診断などで測定される機会も多く、ご自身の健康状態を知るための大切な手がかりとなるでしょう。
空腹時血糖値の正常範囲とは?
一般的に、空腹時血糖値の正常範囲は70~99mg/dLとされています。 この範囲内であれば、血糖値は適切にコントロールされている状態と言えるでしょう。ただし、医療機関によっては正常値の上限を109mg/dLとしている場合もあります。
「糖尿病型」と診断される血糖値
空腹時血糖値が126mg/dL以上の場合、糖尿病型と診断されます。 この数値は、糖尿病の診断基準の一つであり、この状態が続くと様々な合併症のリスクが高まるため、早急な医療機関の受診と適切な治療が大切です。
要注意!境界型と呼ばれる血糖値
空腹時血糖値が100~125mg/dLの範囲は「境界型」と呼ばれ、糖尿病予備群の状態を指します。 この段階では自覚症状がほとんどないことが多く、放置すると将来的に糖尿病へと進行する可能性が高いです。 正常高値(100~109mg/dL)と判断されることもあり、この時期に生活習慣を見直すことが、糖尿病の発症を予防するための重要なコツとなります。
空腹時血糖値が入院レベルになるのはどんな時?具体的な数値と症状

空腹時血糖値が非常に高い場合、緊急入院が必要となることがあります。これは、単に血糖値が高いだけでなく、体内で深刻な代謝異常が起きている可能性を示しているためです。特に、糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群といった急性合併症は、命に関わる危険な状態であり、迅速な医療介入が求められます。
緊急入院が必要な空腹時血糖値の目安
一般的に、血糖値が500mg/dL以上になると、極度の脱水症状や意識障害を招くおそれがあり、緊急入院が必要となるレベルとされています。 また、糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群といった急性合併症を発症している場合も、血糖値の数値に関わらず緊急入院の対象となります。
糖尿病性ケトアシドーシスとは?
糖尿病性ケトアシドーシスは、インスリンが極端に不足することで、体がブドウ糖をエネルギーとして利用できなくなり、代わりに脂肪を分解してケトン体という物質を過剰に生成する状態です。これにより血液が酸性に傾き、吐き気、嘔吐、腹痛、呼吸困難、意識障害などの症状が現れます。 1型糖尿病に多く見られますが、2型糖尿病でも発症する可能性があります。
この状態では、速やかな点滴とインスリン注射による治療が不可欠です。
高浸透圧高血糖症候群とは?
高浸透圧高血糖症候群は、著しい高血糖(多くの場合600mg/dL以上、ひどい場合には800mg/dL以上、2000mg/dL近くになることも)とそれに伴う重度の脱水状態が特徴の病態です。 特に2型糖尿病の高齢者に多く見られ、極度の脱水と錯乱、意識障害を引き起こすことがあります。 糖尿病性ケトアシドーシスとは異なり、ケトン体の増加は少ないですが、生命に関わる危険な状態であることに変わりはありません。
治療には、水分の静脈内投与とインスリン投与が中心となります。
その他の緊急入院が必要なケース
上記以外にも、重症の低血糖、肺炎や尿路感染症などの感染症が重症化した場合、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベント、外科手術前後の血糖管理が必要な場合など、糖尿病患者さんが入院する理由は多岐にわたります。 血糖コントロールが非常に悪い状態が続き、外来での改善が難しい場合や、合併症の精密検査、糖尿病に関する教育指導を目的とした入院も検討されます。
高血糖で入院した場合、どのような治療が行われるのか

高血糖で入院が必要になった場合、その目的は血糖値を速やかに正常範囲に戻し、合併症の進行を防ぎ、患者さんが退院後に自己管理できるよう支援することにあります。入院中は、医師、看護師、管理栄養士など、多職種の医療スタッフが連携して治療を進めていくのが一般的です。
入院中の治療の進め方
入院治療では、まず点滴による水分補給とインスリン注射によって、急激に上昇した血糖値を安全に下げていきます。 血糖値が安定してきたら、食事療法や運動療法に関する具体的な指導が始まります。管理栄養士による栄養指導では、個々の患者さんに合わせた食事内容や摂取量、食べる順番などのコツを学びます。 また、看護師からはインスリン自己注射の方法や血糖測定の仕方、低血糖時の対処法など、日常生活で必要な自己管理スキルについての指導が行われます。
糖尿病の合併症の有無や進行度を詳しく調べるための検査も、入院中に行われることが多いです。
退院後の生活で大切なこと
入院治療で血糖値が改善しても、退院後の自己管理が非常に重要です。入院中に学んだ食事や運動のコツを継続し、定期的に医療機関を受診して血糖値のチェックや合併症の有無を確認することが欠かせません。 医師や管理栄養士と相談しながら、無理なく続けられる生活習慣を確立し、糖尿病と上手に付き合っていく意識を持つことが、長期的な健康維持につながります。
空腹時血糖値を改善するための生活習慣のコツ

空腹時血糖値が高いと指摘された場合でも、日々の生活習慣を見直すことで改善が期待できます。特に、食事と運動は血糖値コントロールの基本であり、継続的な取り組みが大切です。ここでは、具体的な改善策をいくつかご紹介します。
食事の工夫で血糖値コントロール
血糖値を安定させるためには、バランスの取れた食事が重要です。特に、糖質や脂質の摂りすぎに注意し、食物繊維を多く含む野菜や海藻類を積極的に摂るように心がけましょう。 食物繊維は糖の吸収を緩やかにし、血糖値の急激な上昇を防ぐ効果が期待できます。 また、食事の順番も大切で、野菜から先に食べることで血糖値の上昇を抑えることができます。
夜遅い時間の食事は、翌朝の空腹時血糖値を上昇させる原因となるため、できるだけ避けるようにしましょう。 間食を減らすことも、血糖値コントロールには効果的です。
適度な運動を生活に取り入れる
運動は、血糖値を下げるだけでなく、インスリンの働きを良くする効果も期待できます。 有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせるのがおすすめです。ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、筋肉への血流を増やし、ブドウ糖をエネルギーとして消費します。 スクワットやダンベルを使った筋力トレーニングは、筋肉量を増やし、基礎代謝を上げることで、日常的なエネルギー消費量を高め、空腹時血糖値の改善に役立ちます。
食後1~2時間以内に行う運動は、血糖値の急激な上昇を抑えるのに特に効果的です。
ストレスを上手に管理する
ストレスは、血糖値を上昇させるホルモンの分泌を促すため、血糖コントロールに悪影響を及ぼすことがあります。 ストレスを完全に避けることは難しいですが、自分に合ったストレス解消法を見つけ、上手に管理することが大切です。十分な睡眠を確保したり、趣味の時間を持ったり、リラックスできる環境を整えたりするなど、心身の健康を保つ工夫をしましょう。
定期的な健康診断と医師との相談
空腹時血糖値が高いと指摘されたら、放置せずに早めに医療機関を受診することが重要です。 医師と相談し、ご自身の状態に合わせた適切な治療や生活改善の計画を立てましょう。定期的な健康診断や血液検査で血糖値の推移を確認し、必要に応じて治療内容を見直すことも大切です。 早期に問題を発見し、対処することで、糖尿病の発症や合併症の進行を防ぐことができます。
よくある質問

- 空腹時血糖値が高いとどんな症状が出ますか?
- 空腹時血糖値はなぜ高くなるのですか?
- 空腹時血糖値は自宅で測れますか?
- 糖尿病と診断されたら必ず入院が必要ですか?
- 入院を避けるために今すぐできることはありますか?
空腹時血糖値が高いとどんな症状が出ますか?
空腹時血糖値が高い状態が続いても、初期の段階ではほとんど自覚症状がないことが多いです。 しかし、血糖値が著しく高くなると、喉の渇き、多飲(たくさん水を飲む)、頻尿、多尿、体重減少、倦怠感、空腹感、集中力の低下などの症状が現れることがあります。 さらに重症化すると、意識障害や昏睡に至る危険性もあります。
空腹時血糖値はなぜ高くなるのですか?
空腹時血糖値が高くなる主な原因は、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンの分泌が不足したり、インスリンの働きが悪くなったりすることです。 これには、糖尿病、糖代謝異常、肥満、ストレス、睡眠不足、遺伝、服用している薬などが関係していると考えられています。
空腹時血糖値は自宅で測れますか?
はい、市販の血糖測定器を使用すれば、自宅で空腹時血糖値を測定することが可能です。ただし、正確な診断や治療方針の決定には、医療機関での検査と医師の判断が不可欠です。自宅での測定は、あくまで日々の血糖コントロールの目安として活用し、異常を感じたら必ず医療機関を受診しましょう。
糖尿病と診断されたら必ず入院が必要ですか?
糖尿病と診断されたからといって、必ずしも入院が必要というわけではありません。 血糖コントロールが良好な場合や、外来での治療で十分な場合は、入院せずに治療を進めることができます。しかし、血糖値が非常に高い場合、合併症が進行している場合、食事療法や運動療法がうまく実践できない場合、インスリン導入が必要な場合などには、入院が検討されます。
入院を避けるために今すぐできることはありますか?
入院を避けるためには、日頃からの生活習慣の改善が最も重要です。バランスの取れた食事を心がけ、糖質や脂質の摂りすぎに注意し、食物繊維を積極的に摂りましょう。 適度な運動を習慣にし、ストレスを上手に管理することも大切です。 また、定期的に健康診断を受け、空腹時血糖値が高いと指摘されたら、早めに医療機関を受診して医師に相談することが、重症化を防ぐための第一歩となります。
まとめ
- 空腹時血糖値は10時間以上食事を摂らない状態で測定する血糖値です。
- 正常範囲は70~99mg/dLが目安です。
- 100~125mg/dLは境界型(糖尿病予備群)と呼ばれ、生活改善が求められます。
- 126mg/dL以上は糖尿病型と診断され、医療機関での治療が必要です。
- 血糖値が500mg/dL以上になると緊急入院が必要なレベルです。
- 糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群は緊急入院が必要な急性合併症です。
- 高血糖で入院した場合、点滴やインスリン注射で血糖値を下げます。
- 入院中は食事療法や運動療法、自己管理の指導が行われます。
- 退院後も生活習慣の改善と定期的な受診が大切です。
- 食事は食物繊維を多く摂り、糖質・脂質を控えめにしましょう。
- 適度な有酸素運動と筋力トレーニングが血糖値改善に効果的です。
- ストレス管理も血糖値コントロールに影響します。
- 空腹時血糖値が高いと指摘されたら、早めに医療機関を受診しましょう。
- 早期発見と適切な対処が糖尿病の発症や合併症の進行を防ぎます。
