「脈拍が40台と遅いけれど、これは大丈夫なのだろうか?」と不安を感じている方もいるのではないでしょうか。脈拍が遅い状態は「徐脈」と呼ばれ、その原因は健康な方に見られる生理的なものから、治療が必要な病気が隠れているケースまでさまざまです。
本記事では、脈拍が40台になる原因や、それに伴う症状、そしてどのような場合に医療機関を受診すべきかについて詳しく解説します。ご自身の脈拍について心配な方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
脈拍が遅い「徐脈」とは?正常な脈拍数との違い

脈拍は、心臓が血液を全身に送り出す際に動脈に触れる拍動のことで、心臓の鼓動の回数とほぼ同じです。この脈拍が通常よりも遅い状態を「徐脈」と呼びます。ご自身の脈拍が正常範囲内にあるのか、それとも徐脈に該当するのかを知ることは、体の状態を把握する上でとても大切です。ここでは、正常な脈拍数の目安と徐脈の定義について詳しく見ていきましょう。
正常な脈拍数の目安
一般的に、成人の安静時の正常な脈拍数は、1分間に50回から100回とされています。この範囲内であれば、心臓が効率よく血液を全身に送っている状態と言えるでしょう。しかし、この数値はあくまで目安であり、年齢や体調、運動習慣などによって個人差があります。例えば、高齢になるにつれて脈拍が遅くなる傾向が見られることもありますし、激しい運動をするアスリートは、心臓が一度に送り出す血液量が多いため、安静時の脈拍が50回を下回ることも珍しくありません。
自分の正常な脈拍数を知るためには、日頃から定期的に測定し、自身の平均値や変動パターンを把握しておくことが重要です。特に、体調が良い時に測定した数値を基準にすると良いでしょう。
徐脈の定義と種類
徐脈とは、安静時の脈拍数が1分間に50回未満の状態を指します。脈拍が40台である場合、この徐脈に該当することになります。徐脈にはいくつかの種類があり、大きく分けて「生理的な徐脈」と「病的な徐脈」に分類されます。生理的な徐脈は、健康な人、特にスポーツ選手によく見られるもので、心臓の機能が非常に優れているために、少ない拍動数でも全身に十分な血液を送れる状態です。
一方、病的な徐脈は、心臓の電気信号の発生や伝達に異常が生じることで起こります。これには、心臓のペースメーカーの役割を果たす洞結節の機能が低下する「洞不全症候群」や、心房と心室の間の電気信号の伝達がうまくいかなくなる「房室ブロック」などがあります。これらの病的な徐脈は、めまいや息切れなどの症状を伴うことがあり、治療が必要となるケースも少なくありません。
脈拍が40台になる主な原因

脈拍が40台と遅くなる原因は多岐にわたります。健康な方でも見られる生理的なものから、治療が必要な心臓の病気、さらには服用している薬剤の影響まで、さまざまな要因が考えられます。ご自身の脈拍が遅いと感じた場合、どのような原因が考えられるのかを知ることは、適切な対処法を見つける第一歩となるでしょう。ここでは、脈拍が40台になる主な原因について詳しく解説します。
生理的な徐脈(スポーツ心臓など)
脈拍が40台でも、必ずしも病気であるとは限りません。特に、日頃から激しい運動を習慣としている方は、心臓が鍛えられ、一度に送り出す血液量が増えるため、安静時の脈拍が遅くなる傾向があります。これを「スポーツ心臓」と呼び、生理的な徐脈の一種です。
スポーツ心臓を持つ方は、心臓のポンプ機能が非常に効率的であるため、少ない拍動数でも全身に十分な血液を供給できます。そのため、特に自覚症状がなく、日常生活に支障がない場合は、心配する必要がないことがほとんどです。しかし、スポーツ心臓と病的な徐脈の区別は専門医による診断が必要な場合もありますので、不安な場合は一度医療機関を受診することをおすすめします。
病的な徐脈を引き起こす疾患
脈拍が40台になる原因として、心臓に何らかの病気が隠れている可能性も考えられます。代表的なものとしては、心臓の電気信号の発生や伝達に異常が生じる「不整脈」の一種である徐脈性不整脈が挙げられます。具体的には、心臓の拍動をコントロールする「洞結節」の機能が低下する「洞不全症候群」や、心房から心室への電気信号の伝達が滞る「房室ブロック」などがあります。
これらの疾患は、めまい、ふらつき、失神、息切れ、倦怠感などの症状を伴うことがあります。もし脈拍が遅いだけでなく、これらの症状も同時に現れている場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
薬剤による影響
服用している薬の副作用として、脈拍が遅くなることがあります。特に、高血圧や狭心症などの治療に用いられる一部の薬(β遮断薬、カルシウム拮抗薬など)は、心臓の働きを抑える作用があるため、脈拍を遅くする可能性があります。
もし、新しい薬を飲み始めてから脈拍が遅くなったと感じる場合や、脈拍が遅いことに加えて体調の変化を感じる場合は、自己判断で薬の服用を中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。薬の種類や量を調整することで、症状が改善することもあります。
加齢による変化
加齢も脈拍が遅くなる一因となることがあります。年齢を重ねるにつれて、心臓の機能や電気信号の伝達システムが変化し、脈拍が遅くなる傾向が見られることがあります。これは、心臓の老化現象の一つとして考えられるものです。
高齢者の場合、脈拍が40台であっても、特に自覚症状がなく、日常生活に支障がなければ、すぐに治療が必要となるケースは少ないかもしれません。しかし、加齢に伴う変化と病的な徐脈の区別は難しいため、定期的な健康診断や医師への相談を通じて、ご自身の心臓の状態を把握しておくことが大切です。
脈拍が遅い時に現れる症状と危険な兆候

脈拍が40台と遅い場合、体に何らかの症状が現れることがあります。これらの症状は、心臓が全身に十分な血液を送り出せていないサインである可能性があり、注意が必要です。特に、特定の症状が伴う場合は、早急な医療機関の受診が求められることもあります。ここでは、脈拍が遅い時に注意すべき症状と、症状がない場合の注意点について詳しく解説します。
注意すべき症状
脈拍が遅いことによって、以下のような症状が現れることがあります。これらの症状は、脳や他の臓器への血流が不足していることを示唆している場合があります。
- めまいやふらつき: 脳への血流が一時的に減少することで起こります。立ちくらみのような感覚を覚えることもあります。
- 失神: 脳への血流が極端に不足し、意識を失ってしまう状態です。これは非常に危険な兆候であり、すぐに医療機関を受診する必要があります。
- 息切れや呼吸困難: 心臓が全身に十分な酸素を供給できないために、少しの運動でも息苦しさを感じたり、安静時でも呼吸が苦しくなったりすることがあります。
- 倦怠感や疲労感: 全身の臓器や筋肉への血流が不足することで、体がだるく感じたり、疲れやすくなったりします。
- 胸の不快感や痛み: 心臓への負担が増えることで、胸に圧迫感や痛みを感じることがあります。
これらの症状が一つでも現れた場合は、自己判断せずに速やかに医療機関を受診するようにしてください。特に、失神を伴う場合は緊急性が高いため、救急車を呼ぶなどの対応が必要です。
症状がない場合の注意点
脈拍が40台でも、特に自覚症状がないという方もいるかもしれません。前述したように、アスリートや日頃から運動習慣のある方の場合、生理的な徐脈である可能性が高いです。しかし、症状がないからといって、必ずしも安心できるとは限りません。
病的な徐脈の中には、初期の段階では症状がほとんど現れないものもあります。そのため、症状がない場合でも、定期的な健康診断で脈拍の異常を指摘されたり、たまたま測定した際に脈拍が遅いことに気づいたりした場合は、一度医療機関を受診して、専門医による診断を受けることをおすすめします。
特に、高齢の方や、他の持病がある方は、症状がなくても注意が必要です。早期に原因を特定し、必要であれば適切な治療を開始することが、将来的なリスクを避けることにつながります。
脈拍が40台の場合の検査と診断

脈拍が40台と遅い場合、その原因を特定し、適切な対処法を見つけるためには、医療機関での検査と診断が不可欠です。特に、めまいや息切れなどの症状を伴う場合は、早めに専門医の診察を受けることが重要になります。ここでは、病院で行われる主な検査内容と、診断の進め方について詳しく解説します。
病院での検査内容
脈拍が遅い原因を調べるために、医療機関ではいくつかの検査が行われます。これらの検査を通じて、心臓の状態や電気信号の伝達に異常がないかを確認します。
- 心電図検査: 最も基本的な検査で、心臓の電気的な活動を記録します。これにより、不整脈の種類や心臓の電気信号の伝達異常の有無を確認できます。安静時に脈拍が遅い状態を捉えることができれば、診断の手がかりとなります。
- ホルター心電図検査: 24時間、小型の心電図記録装置を装着し、日常生活中の心臓の動きを記録する検査です。これにより、一時的に脈拍が遅くなる時間帯や、症状が現れる時の心臓の状態を詳細に把握できます。
- 運動負荷心電図検査: トレッドミルや自転車エルゴメーターなどで運動しながら心電図を記録する検査です。運動によって脈拍がどのように変化するかを確認し、心臓の予備能力や運動誘発性の不整脈の有無を評価します。
- 心臓超音波検査(心エコー): 超音波を使って心臓の形や動き、弁の状態などを詳しく観察する検査です。心臓の構造的な異常や、心臓のポンプ機能の低下がないかを確認します。
- 血液検査: 甲状腺機能異常や電解質異常など、徐脈の原因となる可能性のある全身性の疾患がないかを調べます。
これらの検査は、患者さんの症状や既往歴に応じて組み合わせて行われます。医師はこれらの検査結果を総合的に判断し、診断を下します。
診断の進め方
医師は、まず患者さんから現在の症状、既往歴、服用中の薬、生活習慣などについて詳しく問診を行います。特に、めまいや失神の有無、いつから脈拍が遅いと感じているか、どのような時に症状が現れるかといった情報は、診断において非常に重要です。
その後、前述のような各種検査を行い、その結果を基に診断を進めます。例えば、心電図で洞不全症候群や房室ブロックの特徴的な波形が確認されれば、それが徐脈の原因であると診断されます。また、スポーツ心臓による生理的な徐脈であれば、心臓の機能が良好で、症状もないことから、特に治療は不要と判断されることもあります。
診断の結果、治療が必要な病的な徐脈と判断された場合は、その原因や重症度に応じて、適切な治療方針が立てられます。診断は専門的な知識と経験が必要となるため、必ず循環器内科の医師に相談するようにしてください。
脈拍が遅い場合の対処法と治療

脈拍が40台と遅い場合、その原因や症状の有無によって、対処法や治療方法は大きく異なります。特に、めまいや失神などの症状を伴う場合は、迅速な対応が求められます。一方で、症状がない生理的な徐脈であれば、特別な治療は不要なこともあります。ここでは、脈拍が遅い場合の緊急対応から、根本的な治療、日常生活での注意点までを詳しく解説します。
症状がある場合の緊急対応
脈拍が遅いことに加えて、以下のような症状が現れた場合は、緊急性が高いと考えられます。すぐに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶなどの対応が必要です。
- 意識が遠のく、失神する: 脳への血流が極端に不足している状態です。
- 強いめまいやふらつきで立っていられない: 転倒のリスクがあり、危険です。
- 激しい息切れや胸の痛み: 心臓に大きな負担がかかっている可能性があります。
これらの症状が現れた場合は、無理に動かず、安全な場所で横になり、落ち着いて救急車を待つようにしてください。周囲に人がいる場合は、状況を説明し、助けを求めることも大切です。
根本的な治療方法
病的な徐脈と診断された場合、その原因に応じてさまざまな治療方法が選択されます。治療の目的は、脈拍を正常な範囲に戻し、症状を改善すること、そして将来的な合併症を防ぐことです。
- 薬剤の調整: もし服用している薬が原因で徐脈が起きている場合は、医師と相談の上、薬の種類や量を調整します。自己判断での中止は危険なので、必ず医師の指示に従ってください。
- ペースメーカー植え込み術: 洞不全症候群や房室ブロックなど、心臓の電気信号の発生や伝達に問題がある場合に、人工的に心臓の拍動をコントロールするペースメーカーを体内に植え込む手術が行われます。ペースメーカーは、脈拍が遅くなりすぎないように監視し、必要に応じて電気刺激を送ることで、正常な脈拍を維持します。
- 基礎疾患の治療: 甲状腺機能低下症など、他の病気が原因で徐脈が起きている場合は、その基礎疾患の治療を行うことで、脈拍も改善されることがあります。
治療方法は、患者さんの年齢、全身状態、徐脈の種類や重症度によって個別に決定されます。医師とよく相談し、納得のいく治療法を選択することが大切です。
日常生活での注意点
脈拍が遅いと診断された場合でも、日常生活で気を付けるべき点がいくつかあります。これらは、症状の悪化を防ぎ、心臓への負担を軽減するために役立ちます。
- 定期的な健康チェック: 定期的に脈拍を測定し、自身の脈拍数や体調の変化に注意を払うことが重要です。異常を感じたら、すぐに医師に相談しましょう。
- 規則正しい生活: 十分な睡眠をとり、ストレスを溜めないように心がけることが、心臓の健康維持につながります。
- バランスの取れた食事: 塩分の摂りすぎに注意し、野菜や果物を積極的に摂取するなど、心臓に良いとされる食生活を心がけましょう。
- 適度な運動: 医師から運動制限を受けていない場合は、無理のない範囲で適度な運動を続けることが推奨されます。ただし、激しい運動は避け、ウォーキングなどの軽い有酸素運動から始めるのがおすすめです。
- 禁煙・節酒: 喫煙や過度な飲酒は、心臓に負担をかけるため、控えるようにしましょう。
これらの注意点を守りながら、医師の指示に従って生活することが、脈拍が遅い状態と上手に付き合っていくためのコツとなります。
よくある質問

脈拍が遅いことに関して、多くの方が抱える疑問にお答えします。
脈拍が40台でも症状がなければ大丈夫ですか?
脈拍が40台でも、めまいや息切れ、倦怠感などの自覚症状が全くない場合は、特にアスリートや日頃から運動習慣のある方であれば、生理的な徐脈である可能性が高いです。この場合、心臓の機能が効率的であるため、少ない拍動数でも全身に十分な血液を送ることができています。しかし、病的な徐脈の中には、初期段階で症状が現れにくいものもあります。
そのため、症状がない場合でも、一度は医療機関を受診し、専門医による診断を受けることをおすすめします。特に、高齢の方や他の持病がある方は、念のため検査を受けると安心です。
運動すると脈拍は遅くなりますか?
運動中や運動直後は、心臓が全身に多くの血液を送る必要があるため、脈拍は速くなります。しかし、日頃から継続的に激しい運動を行っているアスリートの場合、安静時の脈拍は一般の人よりも遅くなる傾向があります。これは「スポーツ心臓」と呼ばれ、心臓が鍛えられて一度に送り出す血液量が増えるため、少ない拍動数で効率よく血液を循環させられるようになるためです。
つまり、運動習慣によって、安静時の脈拍が遅くなることはありますが、これは健康な状態を示すことが多いです。
脈拍が遅いとどのようなリスクがありますか?
脈拍が遅いこと(徐脈)自体が、常にリスクを伴うわけではありません。しかし、病的な徐脈の場合、心臓が全身に十分な血液を送り出せないことで、さまざまなリスクが生じます。主なリスクとしては、脳への血流不足によるめまい、ふらつき、失神、心臓への負担増大による息切れ、倦怠感、心不全の悪化などが挙げられます。特に失神は、転倒による怪我のリスクを高めるだけでなく、生命に関わる危険性もあります。
これらの症状が頻繁に現れる場合は、早急に医療機関を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
脈拍を自分で測る方法はありますか?
はい、脈拍はご自身で簡単に測ることができます。手首の親指側にある動脈(橈骨動脈)に、人差し指、中指、薬指の3本を軽く当てて、1分間の拍動数を数えます。正確に測るためには、安静な状態で測定することが大切です。また、不規則な脈拍を感じた場合は、何度か測定し、平均値を確認すると良いでしょう。最近では、スマートウォッチや血圧計など、脈拍を自動で測定できる機器も多くありますので、これらを活用するのも一つの方法です。
コーヒーやカフェインは脈拍に影響しますか?
コーヒーやカフェインは、一般的に心臓を刺激し、脈拍を速くする作用があると言われています。カフェインには交感神経を活性化させる働きがあるため、一時的に心拍数や血圧が上昇することがあります。そのため、脈拍が遅い方がカフェインを摂取しても、通常は脈拍がさらに遅くなることは考えにくいです。しかし、カフェインの感受性には個人差があり、過剰な摂取は不整脈を引き起こす可能性も指摘されています。
もし心臓に持病がある方や、カフェイン摂取後に体調の変化を感じる場合は、医師に相談することをおすすめします。
まとめ
- 脈拍が1分間に50回未満の状態を「徐脈」と呼びます。
- 成人の安静時の正常な脈拍数は50~100回が目安です。
- 脈拍が40台でも、アスリートなどでは生理的な徐脈の可能性があります。
- 病的な徐脈の原因には、洞不全症候群や房室ブロックなどの心臓病があります。
- 高血圧治療薬などの薬剤の副作用で脈拍が遅くなることもあります。
- 加齢に伴い、脈拍が遅くなる傾向が見られることがあります。
- めまい、ふらつき、失神、息切れ、倦怠感などは徐脈の注意すべき症状です。
- 症状がない場合でも、一度は医療機関での検査がおすすめです。
- 病院では心電図、ホルター心電図、心エコーなどの検査が行われます。
- 診断は循環器内科の医師が行い、原因を特定します。
- 症状がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
- 病的な徐脈の治療には、薬剤調整やペースメーカー植え込み術があります。
- 日常生活では、規則正しい生活や適度な運動が大切です。
- 禁煙・節酒も心臓の健康維持に役立ちます。
- ご自身の脈拍に不安がある場合は、専門医に相談してください。
