「コグトレ」という言葉を耳にしたとき、その効果に期待を寄せる一方で、本当に効果があるのか、何か問題点はないのかと疑問を感じる方もいるでしょう。本記事では、コグトレに対する様々な批判的な意見に焦点を当て、その真実を深く掘り下げて解説します。コグトレのメリットとデメリットを客観的に理解し、お子さんやご自身の状況に合わせた適切な選択をするための参考にしてください。
コグトレとは?その目的と基本的な進め方

コグトレ(認知機能強化トレーニング)は、宮口幸治氏が開発した、認知機能の弱さからくる様々な困り感を抱える子どもたちを支援するためのトレーニングです。不器用さ、忘れっぽさ、集中力のなさなど、日常生活や学習において直面する困難を、認知機能の側面からアプローチすることで解決を目指します。特別な道具を必要とせず、学校や家庭でも手軽に取り組める点が特徴です。
コグトレが目指すもの
コグトレの最大の目的は、認知機能の偏りや弱さによって生じる「生きづらさ」を軽減し、子どもたちが社会の中でより良く生きていくための土台を築くことです。単に学力を向上させるだけでなく、日常生活で必要な「できる」を増やし、自己肯定感を高めることを重視しています。例えば、忘れ物が多い、話を聞き漏らす、集団行動が苦手といった具体的な困り事に対し、その背景にある認知機能の課題に働きかけるのです。
このトレーニングは、発達障害の有無に関わらず、認知機能に課題を持つ全ての子どもたちを対象としています。個々の特性に応じた支援を通じて、子どもたちが自信を持って様々な活動に挑戦できるようになることを目指しています。認知機能の向上は、学習面だけでなく、社会性や感情のコントロールにも良い影響を与えると考えられています。
コグトレの主なトレーニング領域
コグトレは、認知機能を以下の5つの領域に分類し、それぞれに特化したトレーニングを行います。これらの領域は相互に関連しており、バランス良く高めることが重要です。
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覚える(記憶): 物事を記憶し、必要な時に思い出す力。例:絵を覚える、数字の並びを記憶する。
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写す(知覚): 目で見た情報を正確に捉え、再現する力。例:図形を模写する、文字を書き写す。
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見つける(注意): 必要な情報に注意を向け、不要な情報を無視する力。例:間違い探し、指定された文字を探す。
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想像する(実行機能): 目標を設定し、計画を立て、実行する力。例:迷路を解く、物語の続きを考える。
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工夫する(社会性): 他者との関わりの中で、状況を理解し、適切に対応する力。例:役割分担、グループでの課題解決。
これらのトレーニングは、ゲーム感覚で楽しく取り組めるように工夫されており、子どもたちが飽きずに継続しやすいように配慮されています。各領域のトレーニングを通じて、子どもたちは自身の認知機能の特性を理解し、苦手な部分を補うための方法を身につけていくことが期待されます。
コグトレに対する主な批判点と懸念

コグトレは多くの教育現場や医療機関で導入され、一定の成果を上げている一方で、その効果や科学的根拠、運用方法に関して様々な批判や懸念の声も存在します。これらの批判点を理解することは、コグトレを客観的に評価し、適切に活用するために欠かせません。
科学的根拠の不足に関する指摘
コグトレに対する批判の中で最も多く聞かれるのが、その科学的根拠の不足に関する指摘です。認知機能トレーニング全般に言えることですが、大規模なランダム化比較試験(RCT)による厳密な効果検証が十分ではないという意見があります。個別の事例や小規模な研究での効果は報告されているものの、より広範な対象者に対する普遍的な効果を示すデータが不足しているという見方です。
特に、特定の認知機能トレーニングが、日常生活や学習における具体的な困り事の改善に直接的に結びつくのか、その因果関係を明確に示すエビデンスが求められています。科学的な裏付けが不十分であるという批判は、コグトレの導入を検討する際に、その効果を過信しないための重要な視点となります。
効果の個人差と万能ではないという意見
コグトレの効果には、個人差が大きいという意見も多く聞かれます。全ての子どもに同じように効果があるわけではなく、トレーニングへの取り組み方や子どもの特性によって、効果の現れ方が大きく異なることがあります。これは、認知機能の課題が多岐にわたり、一人ひとりの背景が異なるため、画一的なトレーニングでは対応しきれない部分があることを示唆しています。
また、「コグトレさえやれば全ての問題が解決する」といった万能薬ではないという認識も重要です。コグトレはあくまで認知機能の一部に働きかけるものであり、発達障害やその他の困り事の根本的な解決策となるわけではありません。他の支援や環境調整、心理的なサポートなどと組み合わせることで、より効果を発揮するという考え方が一般的です。
誤った解釈や運用による問題
コグトレが普及するにつれて、その誤った解釈や運用による問題も指摘されています。例えば、コグトレを単なる「ドリル学習」と捉え、子どもの興味や特性を無視して機械的に進めてしまうケースです。このような運用では、子どもがトレーニングに飽きてしまったり、かえって苦手意識を強めてしまったりする可能性があります。
また、コグトレの目的を十分に理解せず、結果を急ぎすぎるあまり、子どもに過度なプレッシャーを与えてしまうことも問題です。コグトレは、子どものペースに合わせて、楽しく継続することが成功するためのコツです。専門的な知識を持たない人が安易に導入することで、本来の目的から外れた運用になってしまう懸念も存在します。
認知機能の複雑さに対する懸念
人間の認知機能は非常に複雑であり、それを単純な5つの領域に分類し、トレーニングで改善できるのかという根本的な懸念もあります。脳の機能は相互に連携しており、ある特定の機能を高めることが、他の機能や全体的な認知能力にどのような影響を与えるのかは、まだ完全に解明されているわけではありません。
認知機能の課題は、単にトレーニング不足だけでなく、発達の特性、環境要因、心理的な要因など、様々な要素が絡み合って生じることがほとんどです。コグトレがこれらの複雑な背景全てに対応できるわけではないという認識を持つことが大切です。認知機能の改善だけでなく、子どもの全体的な発達を多角的に捉える視点が求められます。
批判を踏まえたコグトレのメリットと活用方法

コグトレに対する批判的な意見がある一方で、多くの現場でその効果が実感され、活用されています。批判点を理解した上で、コグトレが持つ具体的な利点と、それを最大限に引き出すための活用方法を知ることで、より建設的にコグトレと向き合えるでしょう。
コグトレが持つ具体的な利点
コグトレの大きな利点の一つは、手軽に始められることです。特別な機器や高額な費用を必要とせず、書籍やインターネット上の資料を参考に、学校や家庭で比較的簡単に導入できます。このアクセシビリティの高さは、支援を必要とする多くの子どもたちにとって大きな助けとなります。
また、コグトレは認知機能の課題を具体的に可視化し、子ども自身が自分の得意・不得意を理解するきっかけを与えます。トレーニングを通じて「できた」という成功体験を積み重ねることで、自己肯定感を高め、学習意欲の向上にもつながります。ゲーム感覚で楽しく取り組めるように工夫されているため、子どもが飽きずに継続しやすい点もメリットです。
さらに、コグトレは認知機能の5つの領域に焦点を当てることで、支援者が子どもの困り事の背景にある認知機能の課題を特定しやすくなります。これにより、漠然とした「できない」ではなく、具体的な「何が苦手なのか」を理解し、より的確な支援計画を立てるための手がかりとなるのです。
効果的な活用をするためのコツ
コグトレを効果的に活用するためには、いくつかのコツがあります。まず、最も重要なのは、子どもの興味や特性に合わせて内容を調整することです。画一的な進め方ではなく、子どもが「楽しい」と感じられるような課題を選んだり、進め方を工夫したりすることが大切です。
次に、トレーニングの目的を子どもに分かりやすく伝え、なぜこの練習をするのかを理解してもらうことも重要です。目的意識を持つことで、子どもはより主体的にトレーニングに取り組むことができます。また、短時間でも毎日継続すること、そして小さな成功を具体的に褒めることで、子どものモチベーションを維持しやすくなります。
結果だけでなく、努力のプロセスを評価する視点を持つことが、子どもの成長を促します。
さらに、コグトレはあくまで認知機能の一部に働きかけるものであるため、日常生活での応用を意識することも大切です。トレーニングで得たスキルを、実際の生活場面でどのように活かせるかを一緒に考え、実践する機会を設けることで、より実用的な効果が期待できます。
他の支援と組み合わせる重要性
コグトレの批判点の一つに「万能ではない」という意見がありましたが、これは他の支援と組み合わせることで、より大きな効果を発揮するという考え方につながります。例えば、認知機能の課題だけでなく、ADHDやASDなどの発達障害を持つ子どもには、専門機関での診断や療育、心理カウンセリングなども並行して行うことが推奨されます。
学校での学習支援や、家庭での環境調整も非常に重要です。コグトレで得たスキルを、実際の学習場面や集団生活の中でどのように活かすか、具体的な方法を学校の先生や保護者と共有し、連携して支援を進めることが大切です。多角的なアプローチによって、子どもはより包括的なサポートを受けられ、認知機能の改善だけでなく、全体的な発達を促すことができます。
コグトレは、あくまで支援の「ツール」の一つであり、それだけで全てを解決しようとするのではなく、子どもの全体像を捉え、様々な支援を柔軟に組み合わせる視点を持つことが、成功するための鍵となります。
コグトレの批判を乗り越えるために

コグトレに対する批判は、その限界や課題を浮き彫りにするものであり、決してネガティブな側面ばかりではありません。これらの批判を真摯に受け止め、コグトレをより効果的かつ安全に活用するための改善点や、今後の進むべき方向性を見出すための貴重な資料と捉えることができます。批判を乗り越え、コグトレの可能性を最大限に引き出すためには、いくつかの重要な視点が必要です。
専門家との連携の重要性
コグトレを導入する際には、専門家との連携が非常に重要です。子どもの認知機能の特性や発達段階は一人ひとり異なり、適切なトレーニング内容や進め方は専門的な知識がなければ判断が難しい場合があります。医師、臨床心理士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家は、子どもの状態を正確に評価し、コグトレがその子どもにとって適切かどうか、どのような内容が最適かを判断する助けとなります。
また、トレーニング中に生じる疑問や困難に対し、専門家からの助言や指導を受けることで、誤った運用を防ぎ、より効果的な進め方を見つけることができます。専門家との定期的な相談を通じて、トレーニングの進捗状況を確認し、必要に応じて内容を調整することも大切です。これにより、コグトレの効果を最大限に引き出し、子どもにとって最適な支援を提供することが可能になります。
個別の状況に合わせた柔軟な対応
コグトレは、あくまで一般的なトレーニングの枠組みを提供するものであり、全ての子どもに画一的に適用できるわけではありません。それぞれの子どもの個別の状況やニーズに合わせて、柔軟に対応することが非常に重要です。例えば、トレーニングの難易度や量、進めるペースは、子どもの集中力や興味、認知機能の特性に応じて調整する必要があります。
また、コグトレのトレーニング内容を、子どもの日常生活や学習場面と関連付けて考えることも大切です。トレーニングで得たスキルが、実際の生活の中でどのように役立つのかを具体的に示すことで、子どもはより意欲的に取り組むことができます。時には、コグトレ以外の支援方法も検討し、子どもの全体的な発達を促すための最適な組み合わせを見つける柔軟な姿勢が求められます。
批判的な意見も参考にしながら、コグトレを「万能薬」としてではなく、「数ある支援方法の一つ」として捉え、子どもの成長を支援するための有効なツールとして活用していくことが、コグトレの可能性を広げることにつながります。
よくある質問

- コグトレはどのような子どもに適していますか?
- コグトレは発達障害の診断がない子どもにも有効ですか?
- コグトレは家庭でも取り組めますか?
- コグトレの効果はどのくらいで現れますか?
- コグトレ以外に認知機能を高める方法はありますか?
コグトレはどのような子どもに適していますか?
コグトレは、不器用さ、忘れっぽさ、集中力のなさ、衝動性、対人関係の難しさなど、認知機能の偏りや弱さからくる困り感を抱える子どもに適しています。発達障害の診断の有無に関わらず、日常生活や学習において特定の認知機能に課題が見られる場合に有効と考えられます。
コグトレは発達障害の診断がない子どもにも有効ですか?
はい、有効です。コグトレは、発達障害の診断がある子どもだけでなく、診断はないものの認知機能に偏りがあり、日常生活や学習で困り事を抱えている子どもにも適用できます。認知機能の強化は、全ての子どもの成長にとって有益な側面があります。
コグトレは家庭でも取り組めますか?
はい、家庭でも取り組むことは可能です。コグトレ関連の書籍やドリルが市販されており、それらを参考に家庭で実践できます。ただし、子どもの特性を理解し、無理なく楽しく継続するための工夫や、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが成功するためのコツです。
コグトレの効果はどのくらいで現れますか?
コグトレの効果が現れるまでの期間には個人差があります。数週間で変化が見られる子どももいれば、数ヶ月から半年以上の継続が必要な場合もあります。焦らず、子どものペースに合わせて継続することが大切です。小さな変化を見逃さず、具体的に褒めることで、子どものモチベーションを維持できます。
コグトレ以外に認知機能を高める方法はありますか?
コグトレ以外にも、認知機能を高める方法はたくさんあります。例えば、運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、読書、パズルやボードゲーム、楽器の演奏、新しいスキルの学習などが挙げられます。これらを日常生活に取り入れることで、多角的に認知機能を刺激し、高めることができます。
まとめ
- コグトレは認知機能の弱さからくる困り感を支援するトレーニング。
- 手軽に始められ、自己肯定感を高める利点がある。
- 科学的根拠の不足が主な批判点として挙げられる。
- 効果には個人差があり、万能ではないという認識が重要。
- 誤った解釈や運用は効果を損なう可能性がある。
- 認知機能の複雑さに対する懸念も存在する。
- 子どもの興味や特性に合わせた柔軟な調整が成功のコツ。
- 短時間でも毎日継続することが効果を高める。
- 日常生活での応用を意識することが大切。
- 専門家との連携は適切な運用に不可欠。
- 他の支援方法と組み合わせることで相乗効果が期待できる。
- コグトレは支援の「ツール」の一つとして捉える。
- 批判を乗り越え、より効果的な活用方法を模索する視点。
- 子どもの全体像を捉え、多角的なアプローチが求められる。
- 焦らず、子どものペースで楽しく継続することが重要。
