スーパーで牛肉を選ぶ際、「個体識別番号」の表示があるものとないものがあることに気づき、不安を感じた経験はありませんか?この番号がない牛肉は、本当に安全なのか、どうやって見分ければ良いのか、疑問に思う方もいるでしょう。
本記事では、牛肉の個体識別番号制度の背景から、表示がない牛肉が存在する理由、そしてその安全性や見分け方まで、消費者の皆さんが安心して牛肉を選べるよう、詳しく解説します。大切な家族の食卓を守るためにも、ぜひ最後までお読みください。
牛肉の個体識別番号制度とは?その目的と対象

牛肉の個体識別番号制度は、私たちが口にする牛肉の安全と信頼を守るために、日本で導入された大切な仕組みです。この制度がどのように始まり、どのような牛肉に適用されるのかを理解することは、安心して牛肉を選ぶための第一歩となります。
牛肉トレーサビリティ法の概要と導入背景
牛肉の個体識別番号制度は、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」、通称「牛肉トレーサビリティ法」に基づいて運用されています。この法律は、2001年に日本で初めて牛海綿状脳症(BSE、いわゆる狂牛病)が発生したことをきっかけに、2003年6月に制定されました。
BSE問題により、牛肉に対する消費者の信頼が大きく揺らぎ、食肉の安全確保と流通経路の透明化が強く求められたのです。この法律の目的は、BSEのまん延防止対策を確実に行うことと、消費者が牛肉の情報を確認できるようにすることで、畜産業の健全な発展と消費者の利益増進を図ることにあります。
個体識別番号の表示が義務付けられている牛肉
牛肉トレーサビリティ法により、国内で飼養されたすべての牛には、10桁の個体識別番号が割り当てられます。
この番号は、牛の耳に装着された「耳標(じひょう)」に印字されており、出生からと畜、加工、流通、販売に至るまで一貫して管理されます。 スーパーなどで販売される国産牛肉の精肉(枝肉、部分肉、ロース、モモなどの一般的な肉)には、この個体識別番号の表示が義務付けられています。
番号でわかることと検索方法
個体識別番号は、その牛肉がどのような牛から得られたのか、その履歴を詳細に知るための大切な情報源です。この10桁の番号を独立行政法人家畜改良センターのウェブサイトで検索すると、以下の情報を確認できます。
- 牛の生年月日(または輸入年月日)
- 性別
- 品種(黒毛和種など)
- 飼養地(飼育された場所)
- と畜日とと畜場名
- 母牛の個体識別番号(輸入牛を除く)
これにより、消費者は購入した牛肉の生産履歴を自分で確認でき、食の透明性が高まるという大きなメリットがあります。
個体識別番号がない牛肉が存在する理由

国産の精肉には個体識別番号の表示が義務付けられている一方で、店頭には番号がない牛肉も並んでいます。これには、法律で定められた明確な理由があるのです。なぜ個体識別番号がない牛肉が存在するのか、その背景を詳しく見ていきましょう。
輸入牛肉には表示義務がない
個体識別番号の表示義務は、日本の「牛肉トレーサビリティ法」に基づくものであり、その対象は「国内で飼養された牛」から得られた牛肉です。
そのため、海外から輸入された牛肉には、日本の法律による個体識別番号の表示義務はありません。 ただし、輸入牛肉も各国で独自のトレーサビリティ制度や食品安全基準に基づいて管理されており、日本の検疫基準を満たしたものだけが輸入されています。 パッケージには「アメリカ産」「オーストラリア産」など、原産国が明記されているので、購入時に確認できます。
加工品や外食での取り扱い
個体識別番号の表示義務は、精肉(枝肉、部分肉、ロース、モモなどの一般的な肉)が主な対象です。
そのため、ひき肉や小間切れ、タン、ホルモンといった部位、さらにはハンバーグやソーセージなどの牛肉を原料とする加工食品には、個体識別番号の表示義務がありません。 これは、複数の牛の肉が混合されることが多く、個体識別番号を特定して表示するのが難しいという実情があるためです。また、レストランや焼肉店などの外食産業で提供される牛肉についても、原則として個体識別番号の表示義務はありません。
しかし、一部の店舗では、お客様への安心提供のため、独自に産地情報や個体識別番号をメニューや店内に表示している場合もあります。
法律の対象外となるケース
牛肉トレーサビリティ法では、「特定牛肉」を「食用に供される牛の肉(これを原料又は材料として製造し、加工し、又は調理したものその他の農林水産省令で定めるものを除く。)」と定義しています。
この定義から、前述の加工品や、調理済みの料理は表示義務の対象外となります。また、小間切れや切り落とし肉についても、複数の牛の端材が混ざり合うことが多く、個体識別番号の表示が困難な場合は義務の対象外となることがあります。 ただし、部分肉が特定できる小間切れや切り落としには表示が必要な場合もあるため、一概に「表示がない=問題がある」とは言えません。
個体識別番号がない牛肉は安全?消費者が知るべきこと
個体識別番号がない牛肉を見ると、その安全性に不安を感じるかもしれません。しかし、番号がないからといって、すぐに危険な牛肉だと判断するのは早計です。ここでは、個体識別番号がない牛肉の安全性について、消費者が知っておくべき大切なポイントを解説します。
番号がないからといって危険ではない理由
個体識別番号がない牛肉、特に輸入牛肉や加工品は、日本の食品安全基準を満たしています。輸入牛肉は、輸出国での厳格な衛生管理と、日本での輸入時の検疫をクリアしたものだけが流通しています。
また、加工品も食品衛生法に基づき、製造・販売されており、国の定める安全基準に沿って管理されているのです。個体識別番号は、あくまで国産牛肉のトレーサビリティを確保するための制度であり、番号がないことが直接的に食品の危険性を示すものではありません。
個体識別番号以外の安全管理体制
牛肉の安全性は、個体識別番号制度だけで支えられているわけではありません。日本には、食品衛生法をはじめとする様々な法律や制度があり、牛肉の生産から消費までの各段階で安全が確保されています。
例えば、と畜場では獣医師による厳重な検査が行われ、病気の牛や異常のある肉は市場に出回りません。 また、食肉処理施設や加工工場では、HACCP(ハサップ)などの衛生管理システムが導入され、細菌汚染などのリスクを低減するための対策が徹底されています。 これらの多層的な安全管理体制が、私たちの食卓に並ぶ牛肉全体の安全性を高めているのです。
消費者が安心して選ぶためのポイント
個体識別番号がない牛肉でも、安心して選ぶためのポイントがいくつかあります。まず、信頼できる販売店で購入することが大切です。
大手スーパーマーケットや有名精肉店は、独自の厳しい品質管理基準を設けている場合が多く、安心して購入できるでしょう。次に、パッケージの表示をよく確認することです。原産国や加工所の情報、消費期限などが正確に記載されているかを確認しましょう。また、肉の色や匂い、ドリップの量など、見た目や鮮度も判断材料の一つです。
少しでも不安を感じる場合は、店員に質問したり、購入を控えたりするのも賢明な選択です。
個体識別番号がない牛肉を見分けるコツ
個体識別番号がない牛肉でも、その種類や産地をある程度把握することは可能です。ここでは、スーパーや飲食店で牛肉を選ぶ際に役立つ、見分けるためのコツをご紹介します。これらのポイントを押さえることで、より安心して牛肉を選べるようになるでしょう。
パッケージ表示で産地を確認する
スーパーなどで販売されている牛肉には、必ず何らかの表示があります。個体識別番号がない場合でも、パッケージに記載されている「原産国名」を確認することが最も基本的な見分け方です。
「アメリカ産」「オーストラリア産」「カナダ産」などと明記されていれば、それは輸入牛肉であり、日本の法律では個体識別番号の表示義務がない牛肉だと判断できます。 また、加工品であれば、原材料表示に「牛肉(輸入)」や「牛肉(国産)」といった記載があるはずです。これらの表示を注意深く確認することで、牛肉の種類を把握することができます。
販売店やメニュー表示から情報を得る
スーパーの精肉コーナーでは、個体識別番号が表示されていない牛肉でも、POP(販売促進用の表示)や店内の掲示板で、産地やブランド名などの情報が提供されていることがあります。特に、輸入牛肉であっても、特定のブランド牛として販売されている場合は、そのブランドのウェブサイトで独自のトレーサビリティ情報が公開されていることもあります。
飲食店で牛肉料理を注文する際も、メニューに産地が記載されているか、店員に直接尋ねてみるのも良い方法です。お客様への情報提供に積極的な店舗であれば、安心して食事を楽しめるでしょう。疑問に感じたら積極的に質問する姿勢が、安全な食選びにつながります。
よくある質問

牛肉の個体識別番号について、お客様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。これらの情報を参考に、牛肉に対する理解をさらに深めていただければ幸いです。
個体識別番号がない牛肉は違法ですか?
いいえ、個体識別番号がない牛肉がすべて違法というわけではありません。日本の「牛肉トレーサビリティ法」では、国産の精肉に個体識別番号の表示を義務付けていますが、輸入牛肉やひき肉、加工品、外食で提供される牛肉などは、表示義務の対象外とされています。 これらの牛肉は、それぞれの国の食品安全基準や日本の輸入検疫、食品衛生法に基づいて管理されており、法律に則って流通しています。
外国産牛肉にも個体識別番号はありますか?
日本の「牛肉トレーサビリティ法」に基づく個体識別番号は、国内で飼養された牛にのみ適用されます。 そのため、外国産牛肉には日本の個体識別番号は表示されません。ただし、多くの国では独自のトレーサビリティ制度を導入しており、それぞれの国の基準で生産履歴が管理されています。 輸入牛肉のパッケージには、原産国名が必ず表示されています。
個体識別番号で何が分かりますか?
個体識別番号を独立行政法人家畜改良センターのウェブサイトで検索すると、その牛の出生年月日、性別、品種、飼養地(どこで育ったか)、と畜日、と畜場名、母牛の個体識別番号(輸入牛を除く)などの生産履歴情報を確認できます。 これにより、消費者は購入した牛肉の「素性」を詳しく知ることができ、食の透明性と安心感につながります。
牛肉の個体識別番号制度はいつから始まりましたか?
牛肉の個体識別番号制度は、2001年のBSE(牛海綿状脳症)発生を契機に、2003年6月に「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」(牛肉トレーサビリティ法)が制定され、導入されました。 小売店での表示義務は、2004年12月1日から施行されています。 この制度により、牛肉の生産から消費までの履歴追跡が可能となり、食の安全確保と信頼回復を目指しています。
個体識別番号がない牛肉は避けるべきですか?
個体識別番号がない牛肉を、一概に避ける必要はありません。輸入牛肉や加工品、外食で提供される牛肉は、日本の法律で表示義務がないだけであり、それぞれ国の食品安全基準や日本の検疫基準、食品衛生法に基づいて安全が確保されています。 大切なのは、購入する際にパッケージの表示をよく確認し、信頼できる販売店を選ぶことです。
ご自身の判断基準を持って選ぶことが、安心して牛肉を楽しむための鍵となります。
まとめ
- 牛肉の個体識別番号制度は、2003年の牛肉トレーサビリティ法に基づいている。
- BSE問題が制度導入の大きなきっかけとなった。
- 国産の精肉には10桁の個体識別番号表示が義務付けられている。
- 番号で牛の生年月日、性別、飼養地、と畜日などが確認できる。
- 独立行政法人家畜改良センターのウェブサイトで履歴を検索可能。
- 輸入牛肉には日本の個体識別番号表示義務はない。
- 加工品(ひき肉、小間切れ、ソーセージなど)も表示義務の対象外。
- 外食で提供される牛肉も原則として表示義務はない。
- 個体識別番号がないからといって、直ちに危険な牛肉ではない。
- 輸入牛肉は輸出国と日本の検疫基準を満たしている。
- 加工品は食品衛生法に基づき管理されている。
- 信頼できる販売店での購入が安心につながる。
- パッケージの原産国表示や消費期限を確認する。
- 肉の見た目や鮮度も選ぶ際の重要な判断材料。
- 疑問があれば販売店や店員に積極的に質問する。
- 個体識別番号がない牛肉も、安心して選ぶための情報収集が大切。
