「最近、自分の脈拍が気になる」「70代になると、脈拍の正常値は変わるのだろうか？」そんな疑問をお持ちではありませんか？年齢を重ねるとともに、体の変化は誰にでも訪れるものです。特に心臓の健康は、日々の生活の質に大きく関わってきます。
本記事では、70代の方にとっての脈拍の正常値や、脈拍が示す体のサインについて詳しく解説します。ご自身の脈拍を正しく理解し、心臓の健康を維持するための具体的な方法や、異常を感じた際にどうすれば良いのかを分かりやすくお伝えします。安心して毎日を過ごすための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。
70代の脈拍正常値を知ろう：心臓の健康の基本
70代になると、脈拍の基準値は成人とは少し異なる傾向があります。ご自身の心臓の健康状態を把握するためにも、まずは一般的な目安を知ることが大切です。
安静時脈拍の一般的な基準値と年齢による変化
一般的に、成人の安静時脈拍は1分間に60〜100回が正常範囲とされています。しかし、70代の高齢者の場合、安静時の脈拍はこれよりもやや低くなる傾向が見られます。多くの情報源では、70代を含む高齢者の脈拍正常値は、1分間に50〜70回程度とされています。また、60〜70代では50〜80回程度とする見方もあります。
この脈拍の低下は、加齢に伴い活動量や基礎代謝、筋肉量が減少することで、体が必要とする酸素消費量が少なくなるためです。心臓が全身に血液を送り出す回数が減っても、体に必要な酸素を十分に供給できる状態になるため、脈拍がゆっくりになるのです。
ただし、これらの数値はあくまで一般的な目安であり、個人差が大きいことを理解しておく必要があります。日頃から運動習慣がある方やアスリートの方では、心肺機能が高いため、安静時の脈拍が50回を下回ることも珍しくありません。
自分の脈拍を正確に測る簡単な方法
自分の脈拍を日常的にチェックすることは、心臓の健康状態を知る上で非常に有効な方法です。特別な器具がなくても、ご自身で簡単に測定できます。最も一般的なのは、手首の動脈で測る方法です。
測定する際は、まずリラックスした状態で座り、利き手ではない方の手のひらを上に向けてください。次に、利き手の人差し指、中指、薬指の3本を揃え、反対側の手首の親指側にある腱と骨の間に軽く当てます。この部分には「橈骨動脈（とうこつどうみゃく）」という動脈が通っており、脈拍を感じやすい場所です。
指を軽く当て、ドクンドクンという拍動を感じたら、1分間の拍動数を数えます。正確に測るのが難しい場合は、15秒間の拍動数を数え、それを4倍する方法でも構いません。このとき、脈のリズムが規則的か、強さにムラがないかなども一緒に確認すると良いでしょう。
毎日同じ時間帯に測定し、ご自身の平常値を把握しておくことが、異常の早期発見につながる大切なコツです。
70代で注意したい脈拍の異常：徐脈と頻脈、そして不整脈
脈拍は、体調や環境によって一時的に変動することがありますが、安静時にもかかわらず脈拍が極端に遅い、あるいは速い状態が続く場合は注意が必要です。これらは心臓に何らかの問題が隠れているサインかもしれません。
脈が遅い「徐脈」とは？その原因とリスク
徐脈とは、安静時の脈拍が1分間に60回未満の状態を指します。 70代の方の場合、加齢による心臓の電気信号の伝達機能の低下が原因となることがあります。 心臓の拍動をコントロールする「洞結節」や「房室結節」といった部分に異常が生じると、電気信号がうまく作られたり伝わったりしなくなり、脈が遅くなるのです。
徐脈自体は、運動習慣のある方にとっては生理的なもので問題ない場合もあります。しかし、めまい、ふらつき、息切れ、倦怠感、胸の圧迫感、さらには失神といった症状を伴う場合は、注意が必要です。 これらの症状は、心臓が全身に十分な血液を送れていないサインであり、洞不全症候群や房室ブロックといった不整脈が隠れている可能性があります。
また、甲状腺機能低下症や特定の薬剤の影響で徐脈になることもあります。
脈が速い「頻脈」とは？その原因とリスク
頻脈とは、安静時の脈拍が1分間に100回以上になる状態を指します。 一時的な頻脈は、ストレス、緊張、発熱、脱水、カフェインやアルコールの過剰摂取、睡眠不足などによっても起こります。 しかし、安静時にもかかわらず頻脈が続く場合や、動悸、息切れ、胸の痛み、めまい、吐き気、冷や汗などの症状を伴う場合は、心臓や内分泌系の疾患が原因である可能性があります。
具体的には、心房細動や上室性頻拍といった不整脈、心筋梗塞、狭心症、心不全などの心臓病が考えられます。 また、甲状腺機能亢進症（バセドウ病など）や貧血も頻脈の原因となることがあります。 特に脈拍が120回/分以上の場合には、何らかの疾患が疑われるため、専門医による検査がすすめられます。
脈のリズムが乱れる「不整脈」の可能性
脈拍の異常は、速さだけでなくリズムの乱れとして現れることもあります。これを不整脈と呼びます。 不整脈には、脈が飛んだり、不規則になったり、速くなったり遅くなったりと様々な種類があります。 健康な人でも一時的に不整脈が起こることはありますが、70代の方では心臓の病気が原因となっているケースも少なくありません。
不整脈の症状としては、動悸、息切れ、めまい、ふらつき、胸の違和感などが挙げられます。 中には自覚症状がないまま進行する不整脈もありますが、放置すると脳梗塞や心不全などの重篤な病気につながるリスクがあるため、注意が必要です。 脈拍の乱れを感じたら、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが大切です。
脈拍の異常を感じたら：医療機関を受診する目安と検査
脈拍の異常は、時に重大な病気のサインであることがあります。ご自身の体からのメッセージを見逃さず、適切なタイミングで医療機関を受診することが、健康を守る上で非常に重要です。
どんな症状があれば医師に相談すべきか
脈拍が正常範囲から外れていると感じた場合でも、必ずしも病気とは限りません。しかし、以下の症状が脈拍の異常と同時に現れる場合は、早めに医師に相談することをおすすめします。
- 動悸（ドキドキする、脈が飛ぶ、胸が苦しい感じ）
- 息切れ（少し動いただけでも息が上がる）
- めまいやふらつき、立ちくらみ
- 胸の痛みや圧迫感、違和感
- 倦怠感や疲れやすさ
- 失神や意識が遠のく感じ
- 手足のむくみ
これらの症状は、心臓が正常に機能していない可能性を示唆しています。特に、安静時にもかかわらず脈拍が常に100回以上、または60回未満の状態が続く場合や、脈のリズムが不規則だと感じる場合は、自己判断せずに循環器内科などの専門医を受診しましょう。
医療機関での検査と診断の進め方
医療機関を受診すると、まず医師が問診で症状や既往歴、服用中の薬などを詳しく確認します。その後、以下のような検査が行われることが一般的です。
- 心電図検査：心臓の電気的な活動を記録し、不整脈の種類や心臓の状態を評価します。安静時心電図のほか、24時間心電図（ホルター心電図）で日常生活中の脈拍の変化を調べることもあります。
- 血液検査：貧血や甲状腺機能亢進症など、脈拍に影響を与える可能性のある全身の病気を調べます。
- 心臓超音波検査（心エコー）：心臓の大きさや動き、弁の状態などを画像で確認し、心臓の構造的な異常や機能の低下がないかを評価します。
- 胸部X線検査：心臓の拡大や肺の状態を確認することがあります。
これらの検査結果と症状を総合的に判断し、医師が診断を下します。不整脈の種類や原因によっては、薬物療法、カテーテルアブレーション治療、ペースメーカーの植え込み手術など、適切な治療法が提案されます。 早期に診断を受け、適切な治療を開始することが、心臓の健康を長く保つための鍵となります。
70代から始める心臓の健康維持：生活習慣の改善と予防
70代になっても、心臓の健康を維持し、活動的な毎日を送るためには、日々の生活習慣が非常に重要です。脈拍を安定させ、心臓病のリスクを減らすための具体的なコツをご紹介します。
適度な運動で心臓を強くするコツ
適度な運動は、心臓を強くし、心肺機能を高めるために欠かせません。ウォーキングや軽いジョギング、水中運動、サイクリングなど、無理なく続けられる有酸素運動がおすすめです。 運動の目安としては、少し息が上がる程度の強度で、1回30分以上、週に3〜5回行うことを目指しましょう。
運動を始める前には必ず準備運動を行い、体調が悪い日は無理をしないことが大切です。また、運動中に胸の痛みやめまい、強い動悸を感じた場合は、すぐに中止して休憩し、症状が続くようであれば医師に相談してください。運動習慣は、心臓の効率を高め、安静時脈拍を安定させる効果も期待できます。
バランスの取れた食事で心臓を守る
心臓の健康を維持するためには、食生活の見直しも重要です。塩分の摂りすぎは高血圧の原因となり、心臓に負担をかけるため、減塩を心がけましょう。動物性脂肪やコレステロールの多い食品を控え、代わりに野菜、果物、全粒穀物、魚などを積極的に取り入れることがすすめられます。
特に、青魚に含まれるDHAやEPAは、血液をサラサラにする効果があり、心臓病の予防に役立つと言われています。また、食物繊維を豊富に含む食品は、コレステロールの吸収を抑える働きも期待できます。規則正しい時間にバランスの取れた食事を摂ることで、心臓への負担を軽減し、健康的な脈拍を維持することにつながります。
ストレスを上手に管理し、質の良い睡眠を確保する方法
ストレスや睡眠不足は、自律神経の乱れを引き起こし、脈拍の変動に大きく影響します。 心臓の健康を守るためには、ストレスを上手に管理し、質の良い睡眠を確保することが不可欠です。
ストレス解消には、趣味に没頭する、リラックスできる音楽を聴く、軽いストレッチやヨガを行う、友人や家族と話すなど、ご自身に合った方法を見つけることが大切です。また、十分な睡眠時間を確保し、規則正しい生活リズムを保つことも重要です。寝る前にカフェインやアルコールを控える、寝室の環境を整えるなど、質の高い睡眠を得るための工夫をしてみましょう。
定期的な健康チェックの重要性
70代になると、自覚症状がなくても病気が進行しているケースもあります。そのため、定期的な健康診断や医師によるチェックは非常に重要です。健康診断では、血圧や脈拍の測定だけでなく、心電図検査や血液検査なども行われ、心臓や全身の健康状態を総合的に評価できます。
ご自身の脈拍の平常値を把握し、少しでも気になる変化があれば、かかりつけ医や循環器内科の専門医に相談することをためらわないでください。早期発見・早期治療が、重篤な病気を防ぎ、健康寿命を延ばすための最も確実な方法です。日々のセルフチェックと定期的な専門医の診察を組み合わせることで、心臓の健康をしっかりと守りましょう。
よくある質問
- 70代で脈拍が60を下回るのは問題ありますか？
- 運動中の脈拍はどのくらいが目安ですか？
- 脈拍が不規則だとどうなりますか？
- 脈拍を安定させるために日常生活でできることは？
- 薬の影響で脈拍が変わることはありますか？
70代で脈拍が60を下回るのは問題ありますか？
70代で脈拍が60回/分を下回る場合、一概に問題があるとは限りません。加齢に伴い脈拍は遅くなる傾向があり、特に普段から運動習慣がある方では、心臓の効率が良いため安静時脈拍が50回/分前後でも正常とされることがあります。 しかし、めまい、ふらつき、息切れ、倦怠感、胸の圧迫感、失神などの症状を伴う場合は、徐脈性不整脈（洞不全症候群や房室ブロックなど）の可能性も考えられます。
これらの症状がある場合は、一度医療機関を受診し、医師に相談することをおすすめします。
運動中の脈拍はどのくらいが目安ですか？
運動中の脈拍は、年齢や運動強度によって大きく変動します。一般的に、運動中の目標心拍数を計算する目安として「最大心拍数＝220－年齢」という式が用いられます。70代の方であれば、最大心拍数は約150回/分となります。この最大心拍数の50〜70%程度を目標に運動すると良いでしょう。 例えば、70歳の方であれば、目標心拍数は75〜105回/分程度が目安となります。
ただし、これはあくまで目安であり、個人の体力や健康状態によって調整が必要です。運動中に胸の痛みや強い動悸を感じたら、すぐに運動を中止してください。
脈拍が不規則だとどうなりますか？
脈拍が不規則な状態を不整脈と呼びます。不整脈には様々な種類があり、一時的なものであれば問題ないことも多いです。しかし、動悸、息切れ、めまい、ふらつき、胸の違和感などの症状を伴う場合や、不規則な状態が続く場合は注意が必要です。 特に心房細動などの不整脈は、脳梗塞や心不全のリスクを高める可能性があります。
脈拍の乱れを感じたら、自己判断せずに循環器内科を受診し、適切な検査を受けることが大切です。
脈拍を安定させるために日常生活でできることは？
脈拍を安定させるためには、健康的な生活習慣を心がけることが重要です。具体的には、適度な運動を習慣にする、バランスの取れた食事を摂る、十分な睡眠を確保する、ストレスを上手に管理する、禁煙・節酒を心がけるなどが挙げられます。 また、カフェインの過剰摂取や脱水状態も脈拍に影響を与えることがあるため、注意が必要です。
日常的に自分の脈拍を測り、平常値を把握しておくことも、体調の変化に気づくための大切なコツです。
薬の影響で脈拍が変わることはありますか？
はい、服用している薬によっては脈拍に影響を与えることがあります。例えば、高血圧や不整脈の治療薬の中には、脈拍を遅くする作用（徐脈）を持つものがあります。 また、一部の風邪薬や喘息薬、甲状腺ホルモン剤などが脈拍を速くする（頻脈）原因となることもあります。 もし、薬を飲み始めてから脈拍に異常を感じるようになった場合は、自己判断で薬の服用を中止せず、必ず医師や薬剤師に相談してください。
医師は、薬の影響かどうかを判断し、必要に応じて薬の種類や量を調整してくれます。
まとめ
- 70代の脈拍正常値は安静時で50〜70回/分が目安です。
- 成人よりやや低い傾向があるのは自然な変化です。
- 自分の脈拍を定期的に測り、平常値を把握しましょう。
- 手首の橈骨動脈に指を当てて1分間測定するのが簡単です。
- 脈拍が60回/分未満は徐脈と呼ばれます。
- めまいや息切れを伴う徐脈は医療機関へ相談が必要です。
- 脈拍が100回/分以上は頻脈と呼ばれます。
- 動悸や胸の痛みを伴う頻脈は受診を検討しましょう。
- 脈のリズムが不規則な場合は不整脈の可能性があります。
- 不整脈は脳梗塞や心不全のリスクを高めることがあります。
- 適度な運動は心臓を強くし、脈拍を安定させます。
- バランスの取れた食事で心臓への負担を減らしましょう。
- ストレス管理と質の良い睡眠も心臓の健康に不可欠です。
- 定期的な健康診断で心臓の状態をチェックしましょう。
- 服用中の薬が脈拍に影響することもあるため注意が必要です。