クインケ浮腫は、突然まぶたや唇、顔などが腫れ上がる病気で、血管性浮腫とも呼ばれます。見た目の変化に驚き、不安を感じる方も多いでしょう。特に喉に腫れが生じると、呼吸が苦しくなるなど命に関わる危険性もあります。本記事では、クインケ浮腫が起きた際の応急処置や、医療機関での治療、そして日常生活で気をつけたい予防のコツを詳しく解説します。
いざという時に落ち着いて対処できるよう、ぜひ参考にしてください。
クインケ浮腫とは?症状と原因を理解しよう

クインケ浮腫は、皮膚の深い部分や粘膜が突然腫れ上がる病気で、医学的には血管性浮腫とも呼ばれています。この腫れは、数時間から数日で自然に消えることが特徴です。しかし、見た目の変化が大きく、特に顔や唇、まぶたなどに現れると、日常生活に支障をきたすこともあります。また、喉の奥に腫れが生じた場合は、呼吸困難を引き起こす可能性があり、緊急性の高い状態となるため注意が必要です。
クインケ浮腫の主な症状
クインケ浮腫の症状は、主に体の特定の部分に突然現れる腫れやむくみです。特に、まぶた、唇、舌、顔、手足、性器などに多く見られます。 じんましんとは異なり、かゆみは少ないか、ほとんど伴わないことが多いですが、灼熱感や圧迫感を覚えることがあります。 腫れは数時間でピークに達し、通常1~3日、長い場合は数日間持続した後、跡を残さずに消えるのが特徴です。
また、消化管に浮腫が生じると、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れることもあります。 最も危険なのは、喉頭(のど)に浮腫が発生した場合で、声がかすれたり、息苦しさを感じたり、ひどい場合は窒息に至る危険性もあります。
クインケ浮腫を引き起こす原因
クインケ浮腫の原因は多岐にわたり、大きく「遺伝性」と「後天性」に分けられます。 後天性のクインケ浮腫では、特定の薬剤、食物アレルギー、感染症、物理的刺激(寒冷、温熱、圧迫など)、ストレスや疲労などが誘因となることがあります。 特に、高血圧の治療薬であるアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)や、一部の解熱鎮痛薬(アスピリンなど)、抗生物質などが原因となるケースも報告されています。
また、原因が特定できない「特発性」のクインケ浮腫も多く存在します。 遺伝性の場合は、血液中のC1インヒビターというタンパク質の欠損や機能異常が関係しており、アレルギーに対する薬が効かないことがあります。 このように、原因によって治療方法が異なるため、正確な診断がとても大切です。
クインケ浮腫の応急処置:緊急時の対応方法

クインケ浮腫が突然発症した際、どのように対処すれば良いのか不安に感じる方もいるでしょう。特に、症状が重い場合は迅速な対応が求められます。ここでは、緊急時の応急処置について具体的な方法を解説します。
まずは落ち着いて状況を確認する
クインケ浮腫の症状が現れたら、まずは落ち着いて状況を確認することが大切です。腫れている部位、腫れの広がり方、かゆみや痛みの有無、そして最も重要なのは、呼吸に異常がないか、意識がはっきりしているかを確認することです。特に、唇や舌、喉の奥が腫れてきて、声が出しにくい、息苦しい、飲み込みにくいといった症状がある場合は、命に関わる危険性があるため、すぐに緊急対応が必要です。
慌てずに、冷静に判断することが、適切な応急処置へとつながります。
呼吸困難や意識障害がある場合の対応
もし、呼吸困難、息苦しさ、声のかすれ、意識がもうろうとしている、全身にじんましんが広がっている、血圧が低下しているなどの症状が見られる場合は、アナフィラキシーショックの可能性も考えられます。 このような状況では、迷わず119番に電話し、救急車を呼んでください。 救急車が到着するまでの間は、患者を安静にさせることが重要です。
まっすぐに寝かせ、呼吸が困難な場合は座らせるなど、楽な姿勢をとらせましょう。 立ち上がらせたり、歩き回らせたりすることは避けてください。 医師からアドレナリン自己注射薬(エピペン)を処方されている場合は、指示に従って速やかに使用することが求められます。 エピペンは、アナフィラキシー症状を一時的に緩和する効果がありますが、使用後も必ず医療機関を受診する必要があります。
腫れを和らげるための対処法
呼吸困難などの緊急性の高い症状がない場合でも、腫れによる不快感や不安は大きいものです。腫れている部分を冷やすことは、血管を収縮させ、腫れや痛みを和らげる効果が期待できます。 清潔なタオルで包んだ保冷剤や冷たいペットボトルなどを優しく当てて冷やしましょう。ただし、凍傷にならないよう、直接肌に当てたり、長時間冷やし続けたりすることは避けてください。
また、医師から抗ヒスタミン薬などの内服薬を処方されている場合は、指示に従って服用することも有効な応急処置となります。 市販の抗ヒスタミン薬も一時的な症状緩和に役立つことがありますが、自己判断で安易に服用するのではなく、医師や薬剤師に相談することが望ましいです。
医療機関への連絡と受診の重要性
クインケ浮腫は、症状が自然に治まることもありますが、原因の特定や再発予防のためにも、一度は医療機関を受診することが強く推奨されます。特に、初めて発症した場合や、症状が改善しない、悪化する、または頻繁に繰り返す場合は、速やかに受診しましょう。 どの診療科を受診すれば良いか迷うかもしれませんが、一般的には皮膚科やアレルギー科、内科が適切です。
遺伝性血管性浮腫の可能性が疑われる場合は、専門の医療機関での検査が必要になることもあります。 受診の際には、いつから、どのような症状が出ているか、服用している薬、アレルギー歴などを詳しく伝えることが、正確な診断と適切な治療につながります。
病院でのクインケ浮腫の治療方法

クインケ浮腫の症状が改善しない場合や、原因を特定するためには、医療機関での専門的な治療が不可欠です。ここでは、病院で行われる診断の流れや、一般的な治療方法について解説します。
医療機関での診断の流れ
医療機関を受診すると、まず医師が患者さんの症状や既往歴、服用している薬について詳しく問診を行います。 腫れの部位や特徴、かゆみの有無、発症の頻度や持続時間などを伝えることが重要です。次に、視診や触診で腫れの状態を確認します。必要に応じて、血液検査が行われることもあります。 血液検査では、アレルギー反応を示すIgE抗体の数値や、C1インヒビターの量や機能などを調べ、アレルギー性か遺伝性か、あるいは他の原因によるものかを鑑別します。
特に、遺伝性血管性浮腫(HAE)は、通常のクインケ浮腫とは治療方法が異なるため、正確な診断が非常に大切です。
一般的な治療薬と処置
クインケ浮腫の治療は、その原因によって異なります。アレルギー性の場合は、抗ヒスタミン薬が治療の中心となります。 症状が強い場合には、ステロイド薬が一時的に使用されることもあります。 抗ヒスタミン薬だけでは効果が不十分な場合、抗ロイコトリエン薬やトラネキサム酸などが併用されることもあります。 遺伝性血管性浮腫(HAE)の場合、アレルギーに対する薬は効果が期待できないため、C1インヒビター製剤やブラジキニン受容体拮抗薬など、HAEに特化した薬剤が使用されます。
喉頭浮腫による呼吸困難など、緊急性の高い症状がある場合は、アドレナリンの注射や人工呼吸器による処置が必要になることもあります。
慢性的なクインケ浮腫との向き合い方
クインケ浮腫が慢性的に繰り返す場合、日常生活への影響は大きくなります。このような場合、症状が出ていない時でも抗ヒスタミン薬を長期的に服用するなど、予防的な治療が行われることがあります。 また、原因が特定できている場合は、その誘因を避けることが最も効果的な予防策となります。例えば、特定の薬剤が原因であれば、医師と相談して代替薬を検討します。
ストレスや疲労が誘因となる場合は、十分な休息をとり、ストレスを軽減する工夫も大切です。 医師と密に連携し、自身の病態を理解した上で、最適な治療計画を立て、継続的に管理していくことが、症状をコントロールし、より良い生活を送るためのコツとなります。
クインケ浮腫の予防と日常生活での注意点
クインケ浮腫の発症をできるだけ抑え、安心して毎日を過ごすためには、日頃からの予防と注意が欠かせません。ここでは、具体的な予防方法と日常生活で気をつけたいコツをご紹介します。
アレルゲンや誘因の特定と回避
クインケ浮腫の予防において、最も重要なコツの一つは、発症の引き金となるアレルゲンや誘因を特定し、それを避けることです。 例えば、特定の食べ物や薬を摂取した後に症状が出やすい場合は、それらを避けるようにしましょう。 薬剤が原因の場合は、自己判断で服用を中止するのではなく、必ず医師に相談し、代替薬の検討や服用方法の変更について話し合ってください。
また、寒冷、温熱、圧迫などの物理的な刺激が誘因となる場合は、それらの刺激を避ける工夫も必要です。例えば、冬場の外出時には防寒対策をしっかり行う、締め付けの強い衣類を避けるなどが考えられます。アレルギー検査によって原因物質が特定できる場合もあるため、医師に相談して検査を受けることも有効な方法です。
日常生活で気をつけたいこと
クインケ浮腫は、疲れや精神的なストレスが発症のきっかけとなることがあると言われています。 そのため、日頃から十分な睡眠をとり、規則正しい生活を送ることで、心身の健康を保つことが大切です。ストレスを溜め込まないよう、適度な運動や趣味の時間を取り入れるなど、リラックスできる方法を見つけるのも良いでしょう。
また、感染症が誘因となる場合もあるため、手洗いやうがいを徹底し、体調管理に気を配ることも重要です。 飲酒や喫煙は、血管に影響を与える可能性があるため、控えることが望ましいです。もし、クインケ浮腫の症状が頻繁に現れる場合は、担当医と相談し、予防薬の服用や緊急時の対応計画を立てておくことで、いざという時にも落ち着いて対処できるでしょう。
よくある質問

クインケ浮腫は自然に治りますか?
クインケ浮腫の腫れは、通常1~3日間で自然に消えることが多いです。 しかし、喉の腫れなど、命に関わる重篤な症状が現れる可能性もあるため、自己判断で放置するのは危険です。特に初めて発症した場合や、症状が重い場合は、速やかに医療機関を受診することが大切です。
クインケ浮腫とじんましんの違いは何ですか?
クインケ浮腫とじんましんは、どちらも皮膚が腫れる病気ですが、いくつかの違いがあります。じんましんは皮膚の比較的浅い部分に現れ、強いかゆみを伴うことが多く、数時間以内に消えるのが特徴です。 一方、クインケ浮腫は皮膚の深い部分や粘膜に腫れが生じ、かゆみは少ないか、ほとんど伴わず、腫れが引くまでに数日かかることがあります。
また、クインケ浮腫は喉の腫れなど、より重篤な症状を引き起こす可能性があります。
子供がクインケ浮腫になった場合、どうすれば良いですか?
子供がクインケ浮腫になった場合も、基本的な応急処置は大人と同様です。呼吸困難や意識障害がある場合は、すぐに救急車を呼んでください。軽症の場合は、落ち着いて状況を観察し、腫れている部位を冷やすなどの対処をします。子供の場合、症状の訴えが難しいこともあるため、保護者が注意深く観察し、不安な場合は迷わず小児科や皮膚科を受診しましょう。
クインケ浮腫は遺伝しますか?
クインケ浮腫の中には、「遺伝性血管性浮腫(HAE)」と呼ばれる遺伝性のタイプが存在します。 これは、血液中のC1インヒビターというタンパク質の異常が原因で起こります。家族に同様の症状を持つ人がいる場合は、遺伝性の可能性も考慮し、医師に相談して詳しい検査を受けることが推奨されます。
どの診療科を受診すれば良いですか?
クインケ浮腫の症状が現れた場合、まずは皮膚科やアレルギー科、またはかかりつけの内科を受診するのが一般的です。 喉の腫れなど呼吸器症状が強い場合は、耳鼻咽喉科や救急科を受診することも検討してください。遺伝性血管性浮腫の疑いがある場合は、専門の医療機関を紹介されることもあります。
まとめ
- クインケ浮腫は皮膚深部や粘膜が突然腫れる病気です。
- まぶたや唇、喉などに腫れが現れることが多いです。
- かゆみは少なく、圧迫感や灼熱感を伴うことがあります。
- 喉の腫れは呼吸困難を引き起こし、命に関わる危険性があります。
- 原因はアレルギー性、薬剤性、遺伝性、特発性など様々です。
- 呼吸困難や意識障害がある場合はすぐに救急車を呼びましょう。
- 軽症時は腫れた部位を冷やす応急処置が有効です。
- 医師から処方された薬があれば指示通り服用しましょう。
- 初めての発症や症状が悪化する場合は医療機関を受診してください。
- 皮膚科、アレルギー科、内科が主な受診先です。
- 診断には問診や血液検査が行われることがあります。
- 治療は原因に応じた抗ヒスタミン薬やステロイドが使われます。
- 遺伝性血管性浮腫には専用の治療薬があります。
- 誘因の特定と回避が予防の重要なコツです。
- ストレスや疲労を避け、規則正しい生活を心がけましょう。
