製品に含有される化学物質情報の伝達は、企業の環境コンプライアンスにおいて非常に重要な要素です。その中で「ケムシェルパ(chemSHERPA)」という言葉を耳にする機会も増えているのではないでしょうか。しかし、「ケムシェルパのデータはどうやって開くの?」「ツールって何?」といった疑問を抱えている方も少なくありません。
本記事では、ケムシェルパの基本的な知識から、データファイルの具体的な開き方、そしてデータ作成支援ツールの活用方法まで、初心者の方にも分かりやすく徹底的に解説します。この記事を読めば、ケムシェルパに関する疑問が解消され、スムーズな情報管理への第一歩を踏み出せるでしょう。
ケムシェルパとは?基本を理解しよう

ケムシェルパ(chemSHERPA)は、製品に含まれる化学物質の情報をサプライチェーン全体で適切に管理し、効率的に伝達するための共通スキームです。経済産業省主導で2015年に開発・リリースされ、現在はCMPコンソーシアム(旧JAMP:アーティクルマネジメント推進協議会)が運用しています。
この名称は「chemical information SHaring and Exchange under Reporting PArtnership in supply chain」の頭文字を取った造語であり、登山時の案内役であるシェルパに「化学(chem)」を組み合わせたものです。製品含有化学物質の情報伝達における案内役としての役割が込められています。
ケムシェルパの概要と目的
ケムシェルパの主な目的は、製品含有化学物質に関する情報伝達の標準化と効率化です。以前は、各企業が独自のフォーマットで情報伝達を行っていたため、サプライチェーンの中間に位置する中小企業にとって、異なるスキームへの対応が大きな負担となっていました。
ケムシェルパは、この課題を解決するために、共通のデータフォーマットと情報伝達ルールを提供しています。これにより、企業は世界各国の環境法規制(RoHS指令、REACH規則など)への対応を円滑に進め、人の健康と環境の保護に貢献できるのです。
なぜケムシェルパが必要なのか?
現代の製造業では、最終製品が多数の部材や部品で構成されており、それぞれが規制対象化学物質を含有している可能性があります。これらの物質を正確に把握・管理し、サプライチェーン全体で情報伝達することは、企業の社会的責任として不可欠です。
ケムシェルパは、この複雑な情報伝達を体系化し、効率的に行うための基盤を提供します。共通のフォーマットを用いることで、情報収集の手間が省け、誤解や伝達ミスを減らすことが可能です。また、将来的な国際規格化も見据え、国際規格IEC62474のXMLスキーマに準拠している点も大きな強みと言えるでしょう。
ケムシェルパデータの種類とファイル形式

ケムシェルパで取り扱うデータには、大きく分けて2つの種類があります。これらは対象となる製品の形態によって使い分けられ、それぞれ異なるファイル拡張子を持ちます。データの種類とファイル形式を理解することは、ケムシェルパを適切に「開く」ための第一歩です。
chemSHERPA-AI(成形品情報)とは
chemSHERPA-AIは「Article Information」の略で、主に「成形品」を対象としたデータ作成支援ツールおよびデータ形式です。成形品とは、部品や最終製品など、特定の形状を持つものを指します。例えば、電子部品、自動車部品、家電製品などがこれに該当します。
chemSHERPA-AIデータは、製品を構成する各部品や材料に含まれる化学物質の情報、およびそれらの法規制への適合性(遵法判断情報)を伝達するために使用されます。ファイル拡張子は「.shai」です。
chemSHERPA-CI(化学物質情報)とは
chemSHERPA-CIは「Chemical Information」の略で、主に「化学品」や「混合物」を対象としたデータ作成支援ツールおよびデータ形式です。化学品とは、原材料や塗料、接着剤など、特定の形状を持たない化学物質そのものや、それらが混合されたものを指します。
chemSHERPA-CIデータは、化学品に含まれる化学物質の種類や濃度、安全性に関する情報などを伝達するために利用されます。ファイル拡張子は「.shci」です。
データファイルの形式(XML)について
ケムシェルパのデータファイル(.shaiや.shci)は、実は内部的にXML(Extensible Markup Language)形式で構成されています。XMLは、データを構造化して記述するためのマークアップ言語であり、異なるシステム間でのデータ交換に適しています。
具体的には、.shaiや.shciファイルは、複数のXMLファイルがZIP形式で圧縮されたものです。そのため、専用ツールがない場合でも、拡張子を「.zip」に変更して解凍することで、内部のXMLファイルを直接参照することが可能です。ただし、XMLファイルを直接編集することは推奨されません。
ケムシェルパデータを開く具体的な方法

ケムシェルパのデータファイルは、単にダブルクリックするだけでは開けません。専用のツールを使用するか、ファイル形式の特性を理解して別の方法でアクセスする必要があります。ここでは、それぞれの具体的な開き方を解説します。
JAMP ChemSherpa Toolで開く方法
最も一般的で推奨される方法は、CMPコンソーシアム(旧JAMP)が提供する「JAMP ChemSherpa Tool」を使用することです。このツールは、データの作成、閲覧、検証、出力といった一連の作業をサポートするために開発されています。
ツールの入手とインストール
JAMP ChemSherpa Toolは、CMPコンソーシアムのウェブサイトから無料でダウンロードできます。ダウンロードページでは、chemSHERPA-AI用とchemSHERPA-CI用のツールがそれぞれ提供されており、日本語、英語、中国語に対応したバージョンが用意されています。
ダウンロードする際は、使用規約への同意や会社情報の入力が必要です。ダウンロードしたファイルはZIP形式で圧縮されているため、解凍してからインストールを進めます。解凍後、AIの場合は「ARTICLE」フォルダ内の「Article.exe」、CIの場合は「CHEMICAL」フォルダ内の「Chemical.exe」をダブルクリックして起動してください。
データファイルの読み込み手順
ツールを起動したら、メニューバーから「ファイル」→「開く」→「chemSHERPAデータ形式」を選択します。次に、開きたい.shaiまたは.shciファイルを選択し、ダブルクリックすることでツールにデータが読み込まれます。
古いバージョンのツールで新しいバージョンのデータを開こうとした場合など、互換性の問題で警告やエラーが表示されることがあります。その際は、最新版のツールを使用しているか確認し、必要に応じてツールを更新してください。
データ閲覧画面の操作方法
データがツールに読み込まれると、基本情報、製品・部品情報、成分情報、遵法判断情報などの各画面で内容を確認できます。各項目をクリックすることで詳細な情報を閲覧でき、ツリー構造で表示される部品構成なども直感的に理解しやすい設計です。
特に、成分情報や遵法判断情報では、製品に含まれる化学物質の種類や含有率、法規制への適合状況などが一覧で表示されます。これらの情報を確認することで、サプライヤーから提供されたデータが適切であるか、自社の製品が規制に準拠しているかなどを判断できます。
XMLエディタやテキストエディタで開く方法
JAMP ChemSherpa Toolがない環境や、ツールの動作に問題がある場合でも、ケムシェルパのデータはXMLファイルとして開くことが可能です。この方法は、主にデータの内部構造を確認したい場合や、特定の情報を素早く参照したい場合に役立ちます。
XMLエディタの選び方と基本的な使い方
ケムシェルパデータはXML形式であるため、XMLエディタを使用すると、構造化されたデータを視覚的に分かりやすく表示できます。XMLエディタには、フリーソフトから高機能な有償ソフトまで様々な種類があります。
まず、開きたい.shaiまたは.shciファイルの拡張子を「.zip」に変更し、解凍します。解凍すると、複数のXMLファイルが現れます。これらのXMLファイルをXMLエディタで開くことで、タグ付けされたデータの内容を確認できます。XMLエディタは、データの階層構造をツリー表示したり、特定のタグを検索したりする機能を持つため、テキストエディタよりも効率的に情報を読み取れるでしょう。
テキストエディタで確認する際の注意点
XMLエディタがない場合でも、メモ帳などの一般的なテキストエディタでXMLファイルを開くことは可能です。同様に、.shaiまたは.shciファイルの拡張子を「.zip」に変更して解凍し、XMLファイルをテキストエディタで開きます。
ただし、テキストエディタではXMLの構造がそのまま表示されるため、非常に読みにくい場合があります。特にデータ量が多いファイルでは、目的の情報を見つけるのが困難になることもあります。文字化けが発生することもあるため、その場合はエンコード設定(UTF-8など)を確認・変更してみてください。
JAMP ChemSherpa Toolの活用方法

JAMP ChemSherpa Toolは、単にデータを開くだけでなく、ケムシェルパデータを作成し、管理するための強力なツールです。ここでは、データ作成から検証、出力までの進め方を解説し、効率的な活用を促します。
データ作成の進め方
JAMP ChemSherpa Toolを使ってデータを作成する進め方は、大きく分けて以下のステップで進みます。まず、ツールの基本情報画面で、依頼者情報や発行者・承認者情報、製品名、品番、質量などの基本情報を入力します。次に、製品・部品情報画面で、製品の構成部品を階層構造で登録し、それぞれの部品の名称や員数を設定します。
その後、最も重要なステップである成分情報と遵法判断情報の入力に進みます。成分情報では、各部品や材質に含まれる化学物質の種類、含有率、適用除外コードなどを詳細に入力します。遵法判断情報では、特定の法規制(RoHS、REACHなど)に対する適合性を判断し、その根拠となる情報を記述します。
データ検証のコツ
データ作成後には、必ずツールに搭載されているエラーチェック機能を利用して、入力ミスやルール違反がないかを確認しましょう。エラーチェックは、データがケムシェルパの利用ルールに準拠しているかを自動的に検証してくれるため、非常に重要です。
エラーや警告が表示された場合は、その内容を確認し、指示に従って修正を行います。特に、必須項目の入力漏れや、数値の範囲外入力、物質リストとの不整合などはよくあるエラーです。正確なデータ伝達のためには、この検証プロセスを丁寧に進めることが成功のコツです。
データ出力と共有の方法
作成・検証が完了したデータは、.shaiまたは.shciファイルとして出力できます。ツール上部のメニューから「ファイル」→「出力」を選択し、適切なファイル形式で保存します。この出力されたファイルが、サプライチェーンの次の企業へ伝達されるケムシェルパデータとなります。
データ共有の際は、メール添付やファイル共有サービスなどを利用するのが一般的です。相手側もJAMP ChemSherpa Toolを持っていれば、スムーズにデータを開き、内容を確認できます。また、必要に応じて、データの内容をPDF形式で出力する機能も活用すると良いでしょう。
ケムシェルパに関するよくある質問

- ケムシェルパのデータは誰でも開けますか?
- JAMP ChemSherpa Tool以外でデータを開く方法はありますか?
- ケムシェルパデータが文字化けしてしまいます。どうすれば良いですか?
- ケムシェルパの最新情報はどこで確認できますか?
- ケムシェルパのデータ作成は難しいですか?
- chemSHERPA-AIとchemSHERPA-CIの違いは何ですか?
- ケムシェルパのデータはExcelで編集できますか?
ケムシェルパのデータは誰でも開けますか?
ケムシェルパのデータファイル(.shaiや.shci)は、専用のJAMP ChemSherpa Toolがあれば誰でも開いて内容を閲覧できます。ツールはCMPコンソーシアムのウェブサイトから無料でダウンロード可能です。また、ファイルの拡張子を.zipに変更して解凍すれば、内部のXMLファイルをテキストエディタやXMLエディタで開くこともできますが、構造が複雑なため専門知識がないと読み解くのは難しいかもしれません。
JAMP ChemSherpa Tool以外でデータを開く方法はありますか?
はい、JAMP ChemSherpa Tool以外でもデータを開く方法はあります。ケムシェルパデータはXML形式で構成されているため、ファイルの拡張子を「.zip」に変更して解凍すると、複数のXMLファイルが現れます。これらのXMLファイルをXMLエディタや一般的なテキストエディタ(メモ帳など)で開くことが可能です。
ただし、XMLの構造を理解していないと内容の把握は困難であり、データの整合性検証などはできません。
ケムシェルパデータが文字化けしてしまいます。どうすれば良いですか?
ケムシェルパデータが文字化けする場合、主にエンコード(文字コード)の問題が考えられます。XMLファイルをテキストエディタで開く際に文字化けが発生したら、エディタのエンコード設定を「UTF-8」などに変更してみてください。また、JAMP ChemSherpa Toolで文字化けが発生する場合は、ツールのバージョンが古い、またはPCの環境設定に問題がある可能性も考えられます。
最新版のツールを再インストールするか、CMPコンソーシアムのFAQなどを参照することをおすすめします。
ケムシェルパの最新情報はどこで確認できますか?
ケムシェルパに関する最新情報は、CMPコンソーシアムの公式ウェブサイトで確認できます。ツールのバージョンアップ情報、管理対象物質リストの更新、セミナー開催案内、各種マニュアルなどが掲載されています。定期的にウェブサイトを訪れ、最新の情報を入手することが重要です。
ケムシェルパのデータ作成は難しいですか?
ケムシェルパのデータ作成は、初期段階では専門知識や慣れが必要なため、難しく感じるかもしれません。特に、製品の構成や含有化学物質に関する正確な情報を集め、ルールに沿って入力する作業は手間がかかります。しかし、CMPコンソーシアムが提供する操作マニュアルや学習動画、セミナーなどを活用することで、段階的に理解を深められます。
また、データ作成支援ツールにはエラーチェック機能があり、入力ミスを減らす助けとなります。
chemSHERPA-AIとchemSHERPA-CIの違いは何ですか?
chemSHERPA-AIは「成形品(部品や最終製品など、特定の形状を持つもの)」を対象とし、chemSHERPA-CIは「化学品(原材料や混合物など、特定の形状を持たない化学物質そのもの)」を対象としています。それぞれ異なるデータ作成支援ツールとファイル拡張子(AIは.shai、CIは.shci)を持ち、伝達する情報の内容も異なります。
サプライチェーンのどの段階にいるかによって、使用するツールが異なります。
ケムシェルパのデータはExcelで編集できますか?
ケムシェルパのデータはXML形式であり、直接Excelで編集することは推奨されません。Excelで開くと、XMLの構造が崩れたり、データが正しく表示されなかったりする可能性があります。データ作成や編集は、専用のJAMP ChemSherpa Toolを使用することが原則です。一部のツールでは、Excel形式での入出力に対応しているものもありますが、基本的にはツール内で作業を進めるのが安全です。
まとめ
- ケムシェルパは、製品含有化学物質の情報伝達を標準化・効率化する共通スキームです。
- 経済産業省主導で開発され、現在はCMPコンソーシアムが運用しています。
- 「開き方」とは、主に専用ツールでのデータ閲覧やファイル形式の理解を指します。
- ケムシェルパデータには、成形品向けのchemSHERPA-AI(.shai)と化学品向けのchemSHERPA-CI(.shci)があります。
- データファイルは内部的にXML形式で、ZIP圧縮されています。
- 最も一般的な開き方は、CMPコンソーシアム提供のJAMP ChemSherpa Toolを利用することです。
- ツールはCMPコンソーシアムのウェブサイトから無料でダウンロード・インストールできます。
- ツールでは、データファイルの読み込み、閲覧、作成、検証、出力が可能です。
- XMLエディタやテキストエディタでもXMLファイルを直接開けますが、構造理解が必要です。
- データが文字化けする場合は、エンコード設定(UTF-8など)を確認しましょう。
- 最新情報はCMPコンソーシアムの公式ウェブサイトで常に確認することが大切です。
- データ作成は初期に難しさを感じるかもしれませんが、マニュアルやセミナーで解決できます。
- chemSHERPA-AIとchemSHERPA-CIは対象製品が異なるため、使い分けが必要です。
- ケムシェルパデータをExcelで直接編集することは推奨されません。
- 正確な情報伝達は、企業の環境コンプライアンスとサプライチェーンの信頼を高めます。
