傷跡が赤く盛り上がり、我慢できないほどのかゆみに悩まされていませんか?それはもしかしたら「肥厚性瘢痕」かもしれません。肥厚性瘢痕は、見た目の問題だけでなく、かゆみや痛みを伴うことが多く、日常生活に大きな影響を与えることがあります。本記事では、肥厚性瘢痕によるかゆみの原因から、ご自宅でできる対処法、そして専門的な治療方法まで、あなたの悩みに寄り添いながら徹底的に解説します。
肥厚性瘢痕とは?ケロイドとの違いと症状

傷が治る過程で皮膚が過剰に反応し、赤く盛り上がってしまう状態を「肥厚性瘢痕」と呼びます。この状態は、単なる傷跡とは異なり、かゆみや痛みを伴うことが少なくありません。まずは、肥厚性瘢痕がどのようなものか、そしてよく似た症状を持つケロイドとの違いについて理解を深めましょう。
肥厚性瘢痕とはどんな傷跡?
肥厚性瘢痕は、手術や怪我、やけど、ニキビなどの傷が治る過程で、皮膚の真皮層にある線維芽細胞が過剰に増殖することで生じます。その結果、傷跡が赤く盛り上がり、硬くなるのが特徴です。多くの場合、傷ができてから1~2ヶ月後に症状が現れ始め、数ヶ月から数年かけて徐々に改善していく傾向があります。しかし、その間、かゆみや痛みに悩まされることが多く、特に傷跡が引っ張られたり、摩擦を受けたりすると症状が悪化しやすいです。
ケロイドとの決定的な違い
肥厚性瘢痕とケロイドは見た目が非常に似ているため、混同されがちですが、医学的には異なる疾患です。最も大きな違いは、傷跡の広がり方にあります。肥厚性瘢痕は、元の傷の範囲を超えて広がることはありません。一方、ケロイドは、元の傷の範囲を超えて正常な皮膚にまで赤く盛り上がりが拡大していく特徴があります。また、ケロイドの方がかゆみや痛みが強く、自然に治ることが少ないとされています。
肥厚性瘢痕は適切な治療を行うことで治る可能性が高いですが、ケロイドは治療に難渋する場合が多いです。
肥厚性瘢痕でかゆみや痛みが生じる理由
肥厚性瘢痕でかゆみや痛みが生じる主な理由は、傷跡内部での炎症反応が持続しているためです。傷が治る過程で、炎症細胞や血管、線維組織が過剰に増殖し、これらが皮膚の神経を刺激することでかゆみや痛みを感じやすくなります。特に、傷跡の組織が硬く、周囲の皮膚が引っ張られることで、神経が圧迫され、不快な感覚が増すことがあります。
また、肥厚性瘢痕は、外部からの刺激(衣類との摩擦や乾燥など)にも敏感で、これらの刺激がかゆみをさらに悪化させる原因となることもあります。
肥厚性瘢痕のかゆみの原因と悪化させる要因

肥厚性瘢痕によるかゆみは、単に傷跡が治る過程で生じるだけでなく、さまざまな要因によって引き起こされたり、悪化したりすることがあります。かゆみのメカニズムを理解し、どのような要因が症状を強めるのかを知ることは、適切な対処法を見つける上で非常に重要です。
かゆみが生じるメカニズム
肥厚性瘢痕のかゆみは、傷跡内部で起こる炎症反応と密接に関連しています。傷が治癒する過程で、皮膚の線維芽細胞が過剰に増殖し、コラーゲン線維が不規則に配列されます。この増殖した組織には、多くの毛細血管や神経線維が含まれており、これらが刺激されることでかゆみを感じやすくなります。特に、ヒスタミンなどの炎症性物質が放出されると、かゆみ神経が活性化され、強いかゆみとして認識されます。
また、傷跡の乾燥もかゆみを引き起こす一因となるため、保湿ケアも大切です。
肥厚性瘢痕を悪化させる物理的刺激
肥厚性瘢痕のかゆみや盛り上がりは、外部からの物理的な刺激によって悪化することが知られています。特に、傷跡やその周囲の皮膚が引っ張られる「伸展刺激」は、炎症を促進し、肥厚性瘢痕の増大につながりやすいです。関節部や胸部、肩など、日常的に皮膚がよく動く部位に肥厚性瘢痕ができやすいのはこのためです。
また、衣類などによる「摩擦刺激」も、傷跡に炎症を引き起こし、かゆみを増強させる原因となります。テープを剥がす際の刺激も同様に炎症を誘発することがあるため、注意が必要です。
体質やホルモンも影響する?
肥厚性瘢痕の発生や悪化には、体質や特定のホルモンが関与している可能性が指摘されています。いわゆる「ケロイド体質」と呼ばれる、傷がきれいに治りにくい体質の人や、アレルギー疾患を持つ人は、肥厚性瘢痕やケロイドになりやすい傾向があります。また、妊娠中の女性の場合、局所の血流増加やエストロゲン・プロゲステロンといった女性ホルモンの影響で、肥厚性瘢痕が悪化する可能性も考えられています。
高血圧も肥厚性瘢痕・ケロイドを増悪させる原因の一つとして挙げられています。これらの要因は、個人の努力だけではコントロールが難しい部分もありますが、自身の体質を理解し、早期からの予防やケアにつなげることが大切です。
自宅でできる肥厚性瘢痕のかゆみ対策とセルフケア

肥厚性瘢痕によるかゆみは、日常生活に大きな不快感をもたらします。しかし、適切なセルフケアを行うことで、症状を和らげ、快適に過ごすことが可能です。ここでは、ご自宅で手軽にできるかゆみ対策とセルフケアの方法をご紹介します。
かゆみを和らげるための基本的なケア
肥厚性瘢痕のかゆみを和らげるためには、まず傷跡を清潔に保ち、乾燥を防ぐことが基本です。入浴時は、刺激の少ない石鹸を使用し、優しく洗いましょう。入浴後は、保湿剤を塗布して傷跡とその周囲の皮膚を十分に保湿することが大切です。乾燥はかゆみを悪化させる大きな要因となるため、こまめな保湿を心がけるようにしましょう。
また、かゆみが強い場合は、冷たいタオルなどで傷跡を冷やすと、一時的にかゆみが軽減されることがあります。ただし、直接氷を当てるなど、冷やしすぎは避け、肌に負担をかけないように注意してください。
市販薬やシリコン製剤の活用方法
市販薬の中には、肥厚性瘢痕のかゆみや赤みを和らげる効果が期待できるものもあります。例えば、ヘパリン類似物質を配合したクリームや軟膏は、保湿効果に加え、線維芽細胞の過剰な増殖を抑制する作用も期待できます。ただし、市販薬を使用する際は、必ず薬剤師や医師に相談し、ご自身の症状に合ったものを選ぶようにしましょう。
また、シリコンジェルシートやシリコンテープは、傷跡に貼付することで、圧迫と保湿効果により、かゆみ、赤み、硬さを軽減する効果が期待できます。これらは保険適用外の場合が多いですが、手軽に入手でき、ご自身で継続的に使用できる点がメリットです。毎日12~24時間の貼付を2~3ヶ月間続けることが推奨されています。
日常生活で気をつけたいこと
肥厚性瘢痕のかゆみを悪化させないためには、日常生活での工夫も重要です。まず、傷跡への物理的な刺激を避けることが大切です。きつい衣類や下着は避け、ゆったりとした素材のものを着用しましょう。特に、傷跡が摩擦を受けやすい部位にある場合は、保護テープなどでカバーするのも良い方法です。また、紫外線も傷跡の炎症を悪化させ、色素沈着の原因となることがあるため、外出時は日焼け止めを塗ったり、衣類で覆ったりして紫外線対策をしっかりと行うようにしましょう。
ストレスや疲労もかゆみを増強させる要因となるため、十分な休息をとり、ストレスを溜め込まないように心がけることも大切です。
肥厚性瘢痕の専門的な治療方法

自宅でのセルフケアだけではかゆみが改善しない場合や、肥厚性瘢痕の盛り上がりが気になる場合は、医療機関での専門的な治療を検討することが重要です。肥厚性瘢痕の治療には様々な方法があり、症状や状態に合わせて最適なものが選択されます。
医療機関での内服薬による治療
肥厚性瘢痕によるかゆみや炎症を抑えるために、内服薬が処方されることがあります。現在、国内で保険適用がある治療薬として「トラニラスト(商品名:リザベン®)」が挙げられます。トラニラストは抗アレルギー薬の一種で、皮膚線維細胞の増殖を抑えるとともに、傷の赤みやかゆみを軽減する効果が期待できます。また、漢方薬の柴苓湯(さいれいとう)が処方される場合もあります。
これらの内服薬は、単独で用いられることもありますが、他の治療法と併用することで、より高い効果が期待できます。
ステロイドテープや注射による局所治療
肥厚性瘢痕の治療において、ステロイド剤は非常に効果的な選択肢の一つです。副腎皮質ホルモンであるステロイドには、強力な抗炎症作用と組織の増殖を抑える作用があります。
- ステロイドテープ(貼付薬): 傷跡に直接貼るタイプのテープ剤で、炎症を抑え、かゆみや赤み、盛り上がりを改善する効果があります。患部の大きさに合わせてカットして使用し、毎日継続して貼ることが大切です。
- ステロイド局所注射(ケナコルト注射など): ある程度の厚みがある肥厚性瘢痕には、ステロイド薬を直接傷跡に注射する方法が用いられます。これにより、薬効が深部まで届き、かゆみや痛みの軽減、盛り上がりの平坦化が期待できます。通常、3~4週間に1回の頻度で複数回行われます。
これらの局所治療は、肥厚性瘢痕の症状を効果的に抑える方法ですが、医師の指導のもと、適切な使用期間や量で治療を進めることが重要です。
圧迫療法やレーザー治療の選択肢
肥厚性瘢痕の治療には、他にも様々な方法があります。
- 圧迫療法: 傷跡を物理的に圧迫することで、盛り上がりやかゆみを軽減させる方法です。サポーターや包帯、シリコンシートなどを利用して、持続的に圧力をかけることで、傷跡の成熟を促し、症状の改善を目指します。シリコン製剤と併用すると、さらに良い治療効果が期待できるとされています。
- レーザー治療: 赤みが強い肥厚性瘢痕に対しては、色素レーザー(Vビームなど)を用いた治療が行われることがあります。レーザーは、赤みの原因となる毛細血管に選択的に作用し、赤みを軽減し、瘢痕を平らにする効果が期待できます。早期に治療を開始することで、より効果が得られやすいと言われています。
これらの治療法は、肥厚性瘢痕の状態や患者さんの希望に応じて、単独または組み合わせて行われます。専門医とよく相談し、ご自身に合った治療計画を立てることが大切です。
手術による根本的な解決
肥厚性瘢痕が大きく、他の治療法では改善が難しい場合や、関節の動きを妨げるような場合は、手術が検討されることがあります。手術では、盛り上がった瘢痕組織を切除し、周囲の皮膚の緊張を減らすように丁寧に縫合します。しかし、単純な手術だけでは再発のリスクが高いため、術後にステロイドテープや注射、放射線治療などを併用して再発を予防することが一般的です。
特に、耳のピアスケロイドやへそのケロイドなど、特定の部位の肥厚性瘢痕は、保存的治療に抵抗性なことが多く、手術が第一選択となる場合もあります。
肥厚性瘢痕の予防と早期発見の重要性

肥厚性瘢痕は、一度できてしまうと治療に時間と手間がかかることがあります。そのため、傷跡が肥厚性瘢痕になるのを防ぐための予防策と、もしできてしまった場合に早期に発見し、適切な対処を始めることが非常に重要です。
傷跡をきれいに治すための予防方法
傷跡をきれいに治し、肥厚性瘢痕の発生を予防するためには、傷ができた直後からのケアが大切です。まず、傷を清潔に保ち、感染を防ぐことが基本です。傷が治癒する過程で、傷跡に過度な「伸展刺激」や「摩擦刺激」がかからないように注意しましょう。特に、関節部や胸部など、皮膚が動きやすい部位の傷には、傷跡ケア専用のテープを貼ることで、皮膚の引っ張りを抑制し、肥厚性瘢痕の発生を予防する効果が期待できます。
また、傷跡が赤く盛り上がり始める時期に紫外線を浴びると、色素沈着が起こりやすくなるため、紫外線対策も忘れずに行うことが大切です。
早期に医療機関を受診するメリット
もし傷跡が赤く盛り上がり始めたり、かゆみや痛みを伴うようになったりしたら、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。肥厚性瘢痕は、早期に治療を開始することで、症状の進行を最小限に抑え、より効果的な治療結果が期待できます。特に、肥厚性瘢痕とケロイドは見た目では区別が難しい場合があり、専門医による正確な診断が不可欠です。
皮膚科や形成外科を受診することで、ご自身の傷跡の状態に合わせた最適な治療法を提案してもらえるでしょう。自己判断で放置せず、気になる症状があれば迷わず専門医に相談することが、傷跡の悩みを解決するための第一歩となります。
よくある質問

肥厚性瘢痕のかゆみはいつまで続きますか?
肥厚性瘢痕のかゆみは、個人差がありますが、傷跡が成熟するまでの期間、数ヶ月から数年にわたって続くことがあります。傷跡の炎症が落ち着き、平坦化していくにつれて、かゆみも徐々に軽減していく傾向にあります。しかし、完全に消失するまでには時間がかかる場合が多いです。
肥厚性瘢痕のかゆみを抑えるにはどうすればいいですか?
肥厚性瘢痕のかゆみを抑えるには、保湿ケアを徹底し、乾燥を防ぐことが重要です。また、市販のヘパリン類似物質配合クリームや、シリコンジェルシート・テープの使用も効果的です。かゆみが強い場合は、冷たいタオルで冷やすのも一時的な対処法となります。医療機関では、ステロイド軟膏やテープ、内服薬(トラニラストなど)が処方されることがあります。
肥厚性瘢痕は自然に治りますか?
肥厚性瘢痕は、時間の経過とともに赤みが引き、盛り上がりも徐々に平らになり、柔らかい傷跡へと変化していく傾向があります。しかし、完全に目立たなくなるまでには数年かかることもあり、中には自然治癒が難しいケースもあります。早期に適切な治療を開始することで、より良い改善が期待できます。
肥厚性瘢痕は何科に行けばいいですか?
肥厚性瘢痕の治療は、皮膚科または形成外科を受診するのが適切です。これらの科では、肥厚性瘢痕とケロイドの鑑別診断を行い、症状に合わせた専門的な治療法を提案してくれます。
肥厚性瘢痕に市販薬は効きますか?
市販薬の中には、ヘパリン類似物質を配合した保湿剤や、傷跡ケア用のシリコン製剤など、肥厚性瘢痕のかゆみや赤みを和らげる効果が期待できるものもあります。しかし、症状が重い場合や、改善が見られない場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、専門医の診断と治療を受けることをおすすめします。
まとめ
- 肥厚性瘢痕は傷跡が赤く盛り上がり、かゆみや痛みを伴う状態です。
- ケロイドは傷の範囲を超えて広がるのに対し、肥厚性瘢痕は傷の範囲内に留まります。
- かゆみは傷跡内部の炎症反応や神経刺激が主な原因です。
- 伸展や摩擦などの物理的刺激は肥厚性瘢痕を悪化させます。
- 体質や女性ホルモン、高血圧も肥厚性瘢痕の発生や悪化に関与します。
- 自宅でのケアとして、保湿や冷却、刺激の少ない衣類の着用が有効です。
- 市販のヘパリン類似物質やシリコン製剤もかゆみ軽減に役立ちます。
- 医療機関では内服薬(トラニラストなど)による治療が行われます。
- ステロイドテープや局所注射は、炎症と盛り上がりを抑える効果があります。
- 圧迫療法やレーザー治療も肥厚性瘢痕の症状改善に用いられます。
- 重度の場合や機能障害がある場合は手術が検討されます。
- 傷跡ケアテープの使用や紫外線対策は肥厚性瘢痕の予防につながります。
- 早期に皮膚科や形成外科を受診することが、効果的な治療への第一歩です。
- 肥厚性瘢痕のかゆみは数ヶ月から数年続くことがあります。
- 肥厚性瘢痕は自然に改善することもありますが、専門的な治療でより良い結果が期待できます。
