宇宙に浮かぶ惑星たちが、どのような規則性をもって動いているのか、考えたことはありますか?その謎を解き明かす重要な法則の一つが「ケプラーの第三法則」です。本記事では、このケプラーの第三法則がどのように導き出されるのか、その進め方をわかりやすく解説します。
物理学の基礎から丁寧に紐解き、複雑に思える数式も一つずつ解説していきますので、宇宙の壮大な法則を理解するための一歩を踏み出しましょう。惑星の運動に隠された普遍的な真理を、ぜひ一緒に探求してください。
ケプラーの第三法則とは?その本質を理解する

ケプラーの第三法則は、惑星の公転周期と軌道の大きさの関係を示す法則です。この法則は、ヨハネス・ケプラーが膨大な観測データから経験的に見出したもので、後にニュートンの万有引力の法則によって理論的に説明されました。宇宙の天体運動を理解する上で、非常に重要な役割を果たしています。
ケプラーの法則の全体像
ケプラーの法則には、第一法則から第三法則までの三つがあります。第一法則は「惑星は太陽を一つの焦点とする楕円軌道上を運動する」という楕円軌道の法則です。第二法則は「惑星と太陽を結ぶ線分が単位時間に描く面積(面積速度)は一定である」という面積速度一定の法則として知られています。
そして、第三法則は「惑星の公転周期の2乗は、軌道長半径の3乗に比例する」というものです。これらの法則は、太陽系の惑星だけでなく、中心となる天体とその周りを回る全ての天体(例えば地球と月、あるいは地球と人工衛星)にも適用できる普遍的な法則と言えます。
第三法則が示す惑星運動の規則性
ケプラーの第三法則は、数式で表すと T² ∝ a³ となります。ここで、Tは惑星の公転周期(一周するのにかかる時間)、aは軌道長半径(楕円軌道の長い方の軸の半分の長さ)です。この式は、公転周期の2乗を軌道長半径の3乗で割った値が、常に一定になることを意味しています。
つまり、太陽に近い惑星ほど公転周期が短く、遠い惑星ほど公転周期が長くなるという、惑星運動の明確な規則性を示しているのです。この比例定数は、中心となる天体の質量によって決まるため、太陽系の全ての惑星に対しては同じ値を取ります。
ケプラーの第三法則導出に必要な物理学の基礎知識

ケプラーの第三法則を導出するためには、いくつかの物理学の基本的な法則と概念を理解しておくことが大切です。特に、ニュートンが提唱した運動の法則と万有引力の法則、そして円運動の考え方が重要になります。
ニュートンの運動の法則
ニュートンの運動の法則は、物体の運動を記述するための三つの法則です。特に、第二法則である「運動方程式」は、力と加速度の関係を示しており、F = ma という形で表されます。ここでFは物体に働く力、mは物体の質量、aは物体の加速度です。この法則は、惑星の運動を解析する上で中心的な役割を果たします。
惑星が太陽の周りを運動する際、その運動は太陽からの引力によって引き起こされます。この引力がFに相当し、惑星の質量mと、その引力によって生じる加速度aの関係を運動方程式で表現するのです。運動方程式は、天体の動きを数学的に記述するための土台となります。
ニュートンの万有引力の法則
ニュートンの万有引力の法則は、「全ての質量を持つ物体は互いに引き合う力(引力)を及ぼし合う」という法則です。この引力の大きさは、二つの物体の質量の積に比例し、物体間の距離の2乗に反比例します。数式では F = G(m₁m₂)/r² と表されます。
ここで、Gは万有引力定数、m₁とm₂は二つの物体の質量、rは物体間の距離です。ケプラーの第三法則の導出では、太陽と惑星の間に働く万有引力が、惑星を軌道上に留める力として機能することを理解することが重要です。この引力が、惑星の運動方程式における力Fとなります。
円運動の基礎と向心力
惑星の軌道は厳密には楕円ですが、導出を簡略化するために、まずは円軌道を仮定して考えます。円運動をする物体には、常に円の中心に向かう力「向心力」が働いています。この向心力の大きさは、物体の質量m、速さv、円の半径rを用いて F_c = mv²/r と表されます。
また、円運動の加速度(向心加速度)は a = v²/r です。惑星が太陽の周りを円運動していると仮定すると、太陽からの万有引力がこの向心力として働いていると考えることができます。向心力の理解は、惑星がなぜ軌道から外れずに運動し続けるのかを説明する上で不可欠です。
ケプラーの第三法則の導出手順をわかりやすく解説

いよいよ、ケプラーの第三法則を実際に導出する進め方を見ていきましょう。ここでは、理解しやすいように円軌道を仮定して導出を進めます。基本的な物理法則を組み合わせることで、宇宙の壮大な規則性が数式として現れる様子を体験できます。
円軌道を仮定した導出の準備
まず、以下の仮定と記号を設定します。
- 惑星は太陽の周りを半径
r
の円軌道で運動しているとします。
- 太陽の質量を
M
、惑星の質量を
m
とします。
- 惑星の公転周期(一周するのにかかる時間)を
T
とします。
- 惑星の速さ(速さ)を
v
とします。
- 万有引力定数を
G
とします。
この仮定のもとで、惑星に働く力と、その運動を記述する式を立てていきます。円軌道を仮定することで、複雑な計算を避け、法則の本質を捉えやすくなります。
運動方程式と万有引力の関係
惑星が円軌道上を運動しているとき、太陽からの万有引力が向心力として働いています。この関係を運動方程式として表現します。
- 万有引力の法則による力
F_g
:
太陽と惑星の間に働く万有引力は、F_g = G(Mm)/r²
です。
- 円運動の向心力
F_c
:
惑星が半径r
の円軌道で速さ
v
で運動しているときの向心力は、
F_c = mv²/r
です。
これらの二つの力が等しいと考えることができるため、
F_g = F_c
と置くことができます。つまり、
G(Mm)/r² = mv²/r
という式が成り立ちます。
周期と軌道半径の関係式の導出
上記の式から、公転周期
T
と軌道半径
r
の関係を導き出します。
- 速さ
v
を周期
T
で表す:
惑星が円軌道を一周する距離は円周2πr
です。これを周期
T
で割ると速さ
v
が得られます。したがって、
v = (2πr)/T
となります。
- 運動方程式に
v
を代入する:
先ほどのG(Mm)/r² = mv²/r
の式に、
v = (2πr)/T
を代入します。
G(Mm)/r² = m((2πr)/T)²/r
G(Mm)/r² = m(4π²r²)/ (T²r)
G(Mm)/r² = (4π²mr)/T²
- 式を整理して
T²
と
r³
の関係を導く:
両辺から惑星の質量m
を消去し、
T²
について解くと、
GM/r² = (4π²r)/T²
GMT² = 4π²r³
T² = (4π²/GM)r³
この最終的な式は、
T²
が
r³
に比例することを示しています。ここで、
(4π²/GM)
は定数であり、これがケプラーの第三法則における比例定数
k
に相当します。
導出結果の解釈と注意点
導出された
T² = (4π²/GM)r³
という式は、ケプラーの第三法則
T² ∝ r³
を見事に説明しています。この比例定数
k = 4π²/GM
は、太陽の質量
M
と万有引力定数
G
、そして円周率
π
のみで構成されており、惑星自身の質量
m
には依存しないことがわかります。
これは、太陽の周りを回る全ての惑星に対して、この比例定数が同じ値を取ることを意味します。ただし、この導出は円軌道を仮定したものであり、実際の惑星の軌道は楕円です。しかし、楕円軌道の場合でも、軌道半径
r
を半長軸
a
に置き換えることで、同様の関係が成り立ちます。
ケプラーの第三法則の応用例と宇宙への影響
ケプラーの第三法則は、単なる理論的な法則にとどまらず、私たちの宇宙理解に多大な影響を与え、様々な分野で活用されています。この法則がどのように応用されているのかを見ていきましょう。
太陽系内の惑星運動への適用
ケプラーの第三法則は、太陽系内の惑星の運動を予測し、理解するために不可欠です。例えば、ある惑星の公転周期と軌道長半径が分かっていれば、別の惑星の公転周期や軌道長半径を計算することができます。これにより、太陽系の構造や惑星間の距離関係を正確に把握することが可能になります。
また、この法則を用いることで、観測された惑星の運動が理論と一致するかどうかを確認し、天体物理学のモデルを検証する上でも重要な役割を果たします。太陽系内の天体間の相互作用を理解するための強力なツールです。
人工衛星の軌道計算への活用
現代社会において、人工衛星は通信、気象観測、GPSなど、多岐にわたる分野で利用されています。これらの人工衛星の軌道を正確に設計し、維持するためには、ケプラーの第三法則が不可欠です。地球の周りを回る人工衛星の公転周期と軌道半径の関係は、この法則によって厳密に計算されます。
例えば、静止衛星のように地球の自転周期と同じ周期で公転する衛星の軌道高度を決定する際にも、ケプラーの第三法則が用いられます。これにより、衛星が常に同じ地点の上空に留まるように調整できるのです。
太陽系外惑星の発見と第三法則
近年、太陽系外惑星(系外惑星)の発見が相次いでいますが、これらの惑星の存在を確認し、その特性を推定する上でもケプラーの第三法則が重要な役割を担っています。系外惑星は、直接観測が難しい場合が多く、主星のわずかな揺らぎ(ドップラー効果)や、主星の光の減光(トランジット法)からその存在が推測されます。
これらの観測データから、系外惑星の公転周期を特定し、ケプラーの第三法則を適用することで、主星からの軌道長半径を推定することが可能になります。系外惑星の軌道特性を解明するための基礎的な方法として、第三法則は欠かせません。
よくある質問

- ケプラーの第三法則はどのような仮定のもとで導出されるのですか?
- ニュートンの万有引力の法則とどのような関係がありますか?
- 第三法則の「比例定数」は何を意味しますか?
- 楕円軌道の場合でも第三法則は成り立ちますか?
- ケプラーの法則は誰が発見しましたか?
ケプラーの第三法則はどのような仮定のもとで導出されるのですか?
ケプラーの第三法則の導出は、主に以下の仮定のもとで行われます。まず、惑星は中心の恒星(太陽など)の周りを円軌道で運動していると仮定します。また、中心の恒星の質量が惑星の質量に比べて非常に大きいとみなし、恒星は静止していると考えます。さらに、惑星に働く力は中心の恒星からの万有引力のみであり、他の天体からの影響は無視します。
ニュートンの万有引力の法則とどのような関係がありますか?
ケプラーの第三法則は、ニュートンの万有引力の法則から理論的に導出されます。ケプラーは観測データから経験的に法則を見出しましたが、ニュートンは万有引力の法則と運動方程式を用いることで、ケプラーの法則が必然的に導かれることを示しました。これにより、ケプラーの法則は単なる経験則ではなく、普遍的な物理法則の一部として確立されたのです。
第三法則の「比例定数」は何を意味しますか?
ケプラーの第三法則における比例定数
k = T²/a³
は、
k = 4π²/GM
と表されます。ここで
G
は万有引力定数、
M
は中心となる天体(例えば太陽)の質量です。この比例定数は、中心天体の質量と万有引力定数、円周率のみで決まり、周回する惑星の質量には依存しません。そのため、同じ中心天体の周りを回る全ての惑星や衛星に対して、この比例定数は同じ値を取ります。
楕円軌道の場合でも第三法則は成り立ちますか?
はい、楕円軌道の場合でもケプラーの第三法則は成り立ちます。この場合、軌道半径
r
の代わりに、楕円軌道の「半長軸」
a
を用います。つまり、公転周期の2乗は半長軸の3乗に比例するという関係が成立します。導出は円軌道の場合よりも複雑になりますが、ニュートン力学によって厳密に証明されています。
ケプラーの法則は誰が発見しましたか?
ケプラーの法則は、ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーによって発見されました。彼は、デンマークの天文学者ティコ・ブラーエが残した膨大な天体観測データを分析し、17世紀初頭にこれらの法則を導き出しました。第一法則と第二法則は1609年に、第三法則は1619年に発表されています。
まとめ
- ケプラーの第三法則は、惑星の公転周期と軌道長半径の関係を示す法則です。
- 「公転周期の2乗は軌道長半径の3乗に比例する」と表現されます。
- この法則は、
T² ∝ a³
という数式で表されます。
- 導出にはニュートンの運動の法則と万有引力の法則が基礎となります。
- 簡略化のため、円軌道を仮定して導出を進めるのが一般的です。
- 万有引力が向心力として働くという関係から導き出されます。
- 導出される比例定数は、中心天体の質量と万有引力定数で決まります。
- 惑星自身の質量には比例定数は依存しません。
- 実際の楕円軌道でも、軌道長半径を用いることで法則は成り立ちます。
- 太陽系内の惑星運動の理解に不可欠な法則です。
- 人工衛星の軌道計算にも広く活用されています。
- 太陽系外惑星の発見と特性推定にも応用されます。
- ケプラーはティコ・ブラーエの観測データから法則を発見しました。
- ニュートンが万有引力から法則を理論的に証明しました。
- 宇宙の普遍的な規則性を示す重要な物理法則の一つです。
