「づ」から始まる魚の名前を探している方へ。実は、日本語の標準和名において「づ」で始まる魚は非常に珍しいのが現状です。本記事では、この疑問に答えつつ、発音が似ている「ず」から始まるユニークな魚たちや、地域で「づ」と呼ばれるカニ「ズガニ」について詳しくご紹介します。
「づ」から始まる魚はなぜ見当たらないのか?

日本語の魚の名前を探していると、特定の音で始まるものが極端に少ないことに気づくかもしれません。特に「づ」で始まる魚は、標準和名としてはほとんど存在しないのが実情です。この背景には、日本語の音韻的特徴や魚の命名における慣習が深く関わっています。
日本語の音韻と魚名の関係
日本語には「づ」と「ず」という二つの音がありますが、現代の共通語ではほとんど区別されずに発音されます。しかし、歴史的には異なる音として扱われており、特に言葉の始まりでは「ず」が使われることが一般的です。魚の名前も例外ではなく、多くの場合は「ず」の音で始まるものが採用されてきました。例えば、魚の図鑑の索引を見ても、「ず」の項目はあっても「づ」の項目は設けられていないことがほとんどです。
これは、日本語の音の体系が、言葉の始まりに「づ」を用いることを自然と避けてきた結果と言えるでしょう。魚の名前は、その発音のしやすさや聞き取りやすさも考慮されて付けられることが多いのです。
魚の命名規則と標準和名
魚の名前は、分類学上の専門家によって「標準和名」として定められています。この標準和名は、学術的な正確さだけでなく、一般の人々にも広く認識され、混乱なく使用されることを目指して命名されます。命名にあたっては、その魚の形態的特徴、生息環境、行動、発見場所、あるいは発見者の名前など、様々な要素が考慮されます。
例えば、体形が細長い魚には「ナガ」が、頭部が特徴的な魚には「ズナガ」といった接頭語が付くことがあります。しかし、「づ」という音自体に、魚の特徴を直接的に表すような意味合いが少ないため、命名の選択肢として選ばれにくい傾向があると考えられます。また、一度定着した標準和名は、その安定性を保つために安易に変更されることはありません。
「ず」から始まる魚たちとその特徴

「づ」から始まる魚は非常に稀ですが、発音が同じ「ず」から始まる魚はいくつか存在します。これらの魚たちは、それぞれユニークな特徴や生態を持っています。ここでは、代表的な「ず」から始まる魚たちをご紹介しましょう。
ズナガニゴイ:頭が長い淡水魚
ズナガニゴイ(学名:Hemibarbus longirostris)は、コイ科カマツカ亜科に分類される淡水魚です。その名の通り、「頭長(ズナガ)」という漢字が示すように、他のニゴイの仲間と比べて頭部がやや長いのが特徴です。 体には小さな黒い斑点があり、銀色の体が光を反射して美しい姿を見せます。主に河川の中流域の底層付近に生息し、流れの緩やかな場所を好みます。
昼間には水面近くまで浮上する習性があり、この行動から「ウキガモ」という地方名で呼ばれることもあります。 食性は主に水生昆虫で、特に止水性のカゲロウなどを食べます。 ズナガニゴイは、そのユニークな形態と生態から、淡水魚愛好家の間でも注目される存在です。
ズナガテングハギモドキ:深海に潜むユニークな姿
ズナガテングハギモドキ(学名:Naso lopezi)は、ニザダイ科テングハギ属に属する海水魚です。その名前には「頭長(ズナガ)」と「天狗剥(テングハギ)」「擬(モドキ)」という複数の意味が込められています。テングハギの仲間は、その名の通り天狗の鼻のような突起を持つものが多いですが、ズナガテングハギモドキにはその突起がありません。
「モドキ」という名は、テングハギに似ているが角がないことに由来しているのです。 体長は最大で55cmほどになり、体高の約3倍という細長い体形が特徴です。 水深70mから80mの深い岩礁域に生息しており、30mより浅い場所で目にすることは稀です。 沖縄県などでは刺し網で漁獲され、刺身やムニエル、フライなどで食用として利用されます。
深海にひっそりと暮らすズナガテングハギモドキは、その珍しい生態と姿で人々を魅了します。
【番外編】ズガニ(モクズガニ):地域で愛される川のカニ
「づ」や「ず」の音で始まる水生生物を探す際、魚ではありませんが「ズガニ」という名前によく出会います。ズガニは、モクズガニ(学名:Eriocheir japonica)の地方名の一つで、特に伊豆地方や高知県などで親しまれています。 モクズガニは、河川に生息する淡水性のカニで、秋になると産卵のために海へ下るという回遊性の生態を持っています。
その特徴的な毛深いハサミから「ヒゲガニ」と呼ばれることもあります。 日本各地で古くから食用とされており、特に高知県の「ズガニ汁」や島根県の「つがに汁」など、地域に根ざした食文化の一部となっています。 ズガニは、その濃厚な旨味と独特の風味で、多くの人々に愛される秋の味覚です。
魚の名前に関する興味深い豆知識

魚の名前には、その生態や特徴、さらには人々の暮らしや文化が反映されていることが多く、知れば知るほど奥深いものです。ここでは、魚の名前に関するいくつかの興味深い豆知識をご紹介します。
面白い由来を持つ魚の名前
魚の名前には、時にユーモラスだったり、意外な由来を持つものがあります。例えば、「オジサン」という魚は、口元に生えたひげが老人のように見えることから名付けられました。 また、「ババア」という別名を持つタナカゲンゲは、その見た目から連想される名前ですが、正式名称は魚類学者の名前にちなんでいます。 「キタマクラ」という魚は、食べると命に関わる毒を持つことから、死んだら北枕で寝かされるという意味で名付けられたと言われています。
これらの名前は、昔の人々が魚を観察し、その特徴を捉えて名付けた知恵や感性が詰まっています。魚の名前の由来を調べることは、その魚の生態や、昔の人々の暮らしに触れる良い機会となるでしょう。
地域によって異なる魚の呼び名
日本は海に囲まれた国であり、地域ごとに多様な魚介類が漁獲され、食されてきました。そのため、同じ種類の魚でも地域によって異なる呼び名、いわゆる「方言名」が存在することがよくあります。例えば、ブリは成長段階によって呼び名が変わる出世魚として知られていますが、地域によってその呼び名も様々です。 モクズガニも、先に述べた「ズガニ」の他にも「ツガニ」「ヤマタロウ」「ヒゲガニ」など、多くの地方名を持っています。
これらの地方名は、その地域の歴史や文化、食習慣と密接に結びついており、地域の人々にとっては標準和名よりも馴染み深いものです。地域ごとの魚の呼び名を知ることは、日本の豊かな食文化と多様な自然を再認識するきっかけとなるでしょう。
よくある質問

「づ」から始まる魚について、よくある質問とその回答をまとめました。
「づ」と「ず」の使い分けにルールはありますか?
現代の日本語では、「づ」と「ず」は発音上ほとんど区別されません。しかし、書き言葉では使い分けのルールがあります。一般的には、単語の頭では「ず」を使い、連濁(前の語の清音が濁音に変わる現象)や同音の繰り返しの場合に「づ」を使います。例えば、「水(みず)」は「ず」ですが、「手綱(たづな)」のように、前の音に引っ張られて「づ」となるケースがあります。
魚の名前においては、単語の頭に来る場合は「ず」が採用されることがほとんどです。
魚の名前はどのように決められるのですか?
魚の標準和名は、主に日本魚類学会などの専門機関が定めています。命名にあたっては、国際的な学術基準に基づき、その魚の形態、遺伝子情報、生息地、生態などが総合的に考慮されます。また、既存の和名との重複を避け、分かりやすく、かつ学術的に正確な名前が選ばれるよう努められています。
「ズナガ」と付く魚は他にもいますか?
「ズナガ(頭長)」という接頭語は、その魚の頭部が長い特徴を表すため、ズナガニゴイやズナガテングハギモドキ以外にも、頭が長い特徴を持つ他の魚にも使われる可能性があります。しかし、標準和名として広く知られているものは多くありません。魚図鑑などで「ズナガ」を含む名前を検索すると、さらに多くの種類が見つかるかもしれません。
モクズガニはなぜ「ズガニ」と呼ばれるのですか?
モクズガニが「ズガニ」と呼ばれるのは、主に地方名、つまり方言によるものです。特に伊豆地方や高知県などでこの呼び名が使われています。 地域によって、その土地の人々が長年親しんできた呼び名があり、それが定着しているためです。モクズガニは日本各地の河川に生息しているため、地域ごとに様々な呼び名が存在します。
まとめ
- 「づ」から始まる標準和名の魚は非常に珍しい。
- 日本語の音韻的特徴により、言葉の始まりでは「ず」が一般的。
- 魚の標準和名は専門機関が学術的根拠に基づき命名する。
- 「ず」から始まる魚にはズナガニゴイやズナガテングハギモドキがいる。
- ズナガニゴイは頭が長い淡水魚で、水面近くに浮上する習性がある。
- ズナガテングハギモドキは深海に生息する細長い海水魚。
- ズナガテングハギモドキの「モドキ」は天狗の鼻がないことに由来。
- 「ズガニ」はモクズガニの地方名で、特に伊豆や高知で使われる。
- モクズガニは河川に生息し、産卵のために海へ下るカニ。
- 魚の名前には、その特徴や生態が反映されていることが多い。
- 「オジサン」や「キタマクラ」など、面白い由来を持つ魚もいる。
- 同じ魚でも地域によって異なる呼び名(方言名)が存在する。
- 魚の名前の由来を知ることは、日本の文化や自然への理解を深める。
- 「づ」と「ず」の使い分けは、単語の頭では「ず」が基本。
- 魚の名前は、学術的な正確さと一般への普及を両立させている。
