「うっかり車検の満了日を過ぎてしまったらどうしよう」「災害で車検に行けない場合、満了日は延長されるのだろうか」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。
車検の満了日は原則として延長されませんが、過去には新型コロナウイルス感染症や自然災害の影響で、特例的に延長措置が取られた事例があります。本記事では、車検満了日が延長されるケースや、万が一車検が切れてしまった場合の対処法、そして満了日を正確に把握するためのコツを詳しく解説します。
車検満了日の基本原則と延長の可能性
車の安全性を確保し、公道を走行するために義務付けられている車検には、有効期間が定められています。この有効期間の満了日は、原則として個人の都合で延長することはできません。しかし、例外的に国が定める特定の条件下では、満了日が延長されることがあります。
車検満了日は原則として延長されない
車検の有効期間は、道路運送車両法に基づいて定められています。自家用乗用車の場合、新車登録から初回は3年間、それ以降は2年ごとに車検を受ける必要があります。この期間は、車の所有者が任意で変更したり、延長したりすることはできません。もし満了日を過ぎてしまうと、その車で公道を走行することは法律違反となり、罰則の対象となります。
例外的に延長されるケースとは
車検満了日が延長されるのは、大規模な自然災害や感染症の流行など、やむを得ない事由により継続検査を受けることが困難であると国土交通大臣が認めた場合に限られます。この延長措置は、個々の事情を考慮するものではなく、特定の地域に住む人々や特定の車両が一律に適用対象となるものです。
過去には、新型コロナウイルス感染症の拡大防止や、大規模な自然災害が発生した際に、国土交通省から車検の有効期間を伸長する旨が公示されました。このような特例措置は、社会情勢や災害の状況に応じて判断され、発表されます。
過去に車検満了日が延長された具体的な事例
車検満了日の延長は、非常に稀なケースです。しかし、過去には社会全体に大きな影響を及ぼす事態が発生した際に、国土交通省によって特例措置が講じられました。ここでは、その具体的な事例をご紹介します。
新型コロナウイルス感染症による特例措置
2020年、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、国土交通省は全国一律で車検の有効期間を延長する措置を発表しました。具体的には、2020年2月28日から3月31日までに満了する車検の有効期間が、同年4月30日まで伸長されました。
その後、緊急事態宣言の延長に伴い、対象期間がさらに拡大され、最終的には2020年7月1日まで延長される措置が取られています。この措置は、年度末の繁忙期に運輸支局等の窓口に不特定多数の申請者が集中することによる感染拡大のリスクを軽減することが目的でした。
自然災害発生時の特例措置
新型コロナウイルス感染症以外にも、大規模な自然災害が発生した際にも車検の有効期間が延長されることがあります。例えば、令和2年7月豪雨や東日本大震災、令和6年能登半島地震などの際にも、被災地域を対象に車検の有効期間が伸長されました。
これらの措置は、災害によって車両の移動が困難になったり、運輸支局の機能が停止したりする状況を考慮して行われます。対象となる地域や期間は、災害の規模や状況によって異なります。
延長措置が適用される対象地域や車両
車検満了日の延長措置が適用されるのは、国土交通省が公示した特定の地域に「使用の本拠の位置を有する自動車」です。また、被災地で救助や災害復旧、物資輸送などに使用されている自動車も対象となる場合があります。
個人の事情で車検の延長を申請することは原則としてできません。そのため、ご自身の車が延長措置の対象となるかどうかは、国土交通省からの発表を定期的に確認することが重要です。
車検満了日の延長が適用された場合の確認方法と手続き
もし車検満了日の延長措置が適用された場合、どのように確認し、どのような手続きが必要になるのでしょうか。ここでは、その進め方について解説します。
国土交通省からの発表を確認する
車検満了日の延長措置は、国土交通省のウェブサイトや報道発表資料で公示されます。ご自身の車が対象となるかどうかは、これらの公式情報を確認することが最も確実な方法です。発表には、対象となる車両の条件、対象地域、延長後の満了日などが明記されています。
特に、大規模な災害や社会情勢の変化があった際には、最新の情報をこまめにチェックするように心がけましょう。不明な点があれば、地域の運輸支局や自動車検査登録事務所に問い合わせることも可能です。
個別の申請は原則不要
国土交通省が公示する車検満了日の延長措置は、対象となる車両や地域に対して一律に適用されるため、原則として個別の申請手続きは不要です。車検証の記載変更も必要ありません。
ただし、自賠責保険についても同様の延長措置が取られることがありますが、詳細については契約している保険会社や代理店に確認することが大切です。
車検満了日が過ぎてしまった場合の対処法とリスク
車検満了日が延長されるのは特別なケースであり、原則として期限内に車検を受ける必要があります。もし、うっかり満了日を過ぎてしまった場合、どのようなリスクがあり、どのように対処すれば良いのでしょうか。
車検切れの車両で公道を走行するリスクと罰則
車検が切れた車で公道を走行することは、「無車検運行」という法律違反にあたります。これには厳しい罰則が科せられ、違反点数6点、30日間の免許停止、そして6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課される可能性があります。
さらに、車検切れの車は自賠責保険も切れているケースがほとんどです。自賠責保険が切れた状態で公道を走行すると、「無保険運行」となり、さらに重い罰則（1年以下の懲役または50万円以下の罰金、違反点数6点、90日間の免許停止）が科せられます。
万が一、車検切れ・自賠責保険切れの状態で事故を起こした場合、保険が適用されず、多額の損害賠償を自己負担しなければならないという非常に大きなリスクを伴います。
車検切れ車両の車検を受ける進め方
車検が切れてしまっても、再度車検を受けることは可能です。しかし、公道を走行できないため、車検場や整備工場まで車を運ぶ方法を考える必要があります。主な進め方は以下の2つです。
- 仮ナンバーを取得して自分で運ぶ：市区町村役場で仮ナンバー（自動車臨時運行許可番号標）を取得すれば、一時的に公道を走行できます。
- レッカー車などで運んでもらう：車検業者やロードサービスに依頼し、レッカー車などで車を運んでもらう方法です。
どちらの方法を選ぶにしても、事前に車検業者に連絡し、状況を伝えて相談することが大切です。
仮ナンバー（自動車臨時運行許可）の取得方法
仮ナンバーは、車検切れの車を車検場や整備工場まで移動させる目的などで、一時的に公道を走行する許可を得るためのものです。取得には以下の書類が必要です。
- 自動車検査証（車検証）
- 自動車損害賠償責任保険証明書（自賠責保険証）
- 身分証明書（運転免許証など）
- 自動車臨時運行許可申請書（窓口で記入）
- 印鑑（認印）
- 手数料（750円程度）
申請は、使用する当日または前日に、最寄りの市区町村役場の窓口で行います。仮ナンバーの有効期間は最長5日間で、許可された目的や経路以外での使用はできません。使用後は、有効期間内に申請した窓口へ返却する必要があります。
車検満了日を正確に把握するコツ
車検切れを防ぐためには、ご自身の車の満了日を正確に把握しておくことが最も重要です。ここでは、満了日を確認するための具体的な方法と、うっかり忘れを防ぐためのコツをご紹介します。
車検証で確認する
車検証（自動車検査証）は、車の所有者情報や車両情報が記載された重要な書類です。この車検証の中に「有効期間の満了する日」という項目があり、ここに正確な車検満了日が記載されています。
車検証は運転時に携行が義務付けられているため、グローブボックスなどに保管されていることが多いでしょう。ただし、2023年1月以降に発行された電子車検証には満了日が記載されていないため、その場合は「自動車検査証記録事項」または「車検証閲覧アプリ」で確認が必要です。
検査標章（ステッカー）で確認する
車のフロントガラス中央上部に貼られている四角いステッカーは「検査標章」と呼ばれ、ここにも車検満了日が記載されています。車外から見える表面には、大きく「年」と「月」が記載されており、車内から見える裏面には「年月日」が詳しく記載されています。
この検査標章は、日常的に目にする機会が多いため、満了日を意識する上で役立ちます。定期的に確認する習慣をつけることで、車検切れのリスクを減らせるでしょう。
リマインダーサービスを活用する
車検満了日をうっかり忘れてしまうことを防ぐために、リマインダーサービスを活用するのも有効な方法です。多くの車検業者や自動車関連サービスでは、車検満了日が近づくとハガキやメール、アプリの通知などで知らせてくれるサービスを提供しています。
これらのサービスに登録しておくことで、忙しい日々の中でも満了日を意識しやすくなり、計画的に車検の準備を進められます。スマートフォンのカレンダー機能に登録しておくのも良いでしょう。
よくある質問
- 車検満了日が土日祝日の場合はどうなりますか？
- 車検満了日前に車検を受けると損しますか？
- 車検の予約はいつ頃するのがおすすめですか？
- 車検切れの車を売却することはできますか？
- 車検の有効期間はどのくらいですか？
車検満了日が土日祝日の場合はどうなりますか？
車検満了日が土日祝日や年末年始などの休日に当たる場合、その翌開庁日が満了日として扱われます。特別な手続きは不要で、自動的に延長されます。
車検満了日前に車検を受けると損しますか？
2025年4月からの制度改正により、車検満了日の2ヶ月前までに車検を受けても、次回の有効期間が短縮されることはなくなりました。以前は、満了日の1ヶ月以上前に車検を受けると、次回の満了日が前倒しになり、実質的に有効期間が短くなるというデメリットがありましたが、この改正により解消されています。
そのため、現在は満了日の2ヶ月前を目安に車検を受けるのがおすすめです。
車検の予約はいつ頃するのがおすすめですか？
車検の予約は、満了日の1ヶ月前を目安にすると良いでしょう。 2ヶ月前から予約を受け付けている業者も多く、早めに予約することで希望の日時を取りやすくなります。特に、年度末の3月や9月などの繁忙期は予約が集中するため、余裕を持って2～3ヶ月前から計画を立てるのが安心です。
ただし、あまりに早すぎると、お店が受け付けてくれない場合や、自賠責保険料の二重払いなどのデメリットが生じる可能性もあるため、注意が必要です。
車検切れの車を売却することはできますか？
車検が切れていても、車を売却することは可能です。多くの買取業者は、車検の有無に関わらず査定を行い、買い取ってくれます。
ただし、車検切れの車は公道を走行できないため、買取業者に持ち込むことはできません。出張査定を依頼するか、仮ナンバーを取得して持ち込む、またはレッカー車などで運んでもらう必要があります。
車検の残り期間が長いほど査定額が高くなる傾向はありますが、車検を通す費用の方が高くなるケースが多いため、無理に車検を通さずに売却する方がお得な場合もあります。
車検の有効期間はどのくらいですか？
車検の有効期間は、車両の種類によって異なります。
- 自家用乗用車・軽自動車：新車登録から初回は3年間、2回目以降は2年間です。
- レンタカー（乗用自動車）：新車登録から初回は2年間、2回目以降は1年間です。
- 貨物自動車（8t未満）：新車登録から初回は2年間、2回目以降は1年間です。
- 貨物自動車（8t以上）：新車登録から初回は1年間、2回目以降も1年間です。
- 軽貨物車：新車登録から初回は2年間、2回目以降も2年間です。
ご自身の車の車検有効期間は、車検証や検査標章で確認できます。
まとめ
- 車検満了日は原則として延長されません。
- 例外的に、大規模な災害や感染症流行時に国が特例措置を公示することがあります。
- 過去には新型コロナウイルス感染症や自然災害で車検満了日が延長されました。
- 延長措置は国土交通省の発表で確認し、個別の申請は原則不要です。
- 車検切れの車で公道を走行すると、無車検運行や無保険運行で厳しい罰則があります。
- 車検切れの車は仮ナンバーを取得するか、レッカー車で運んで車検を受けられます。
- 仮ナンバーは市区町村役場で申請し、最長5日間有効です。
- 車検満了日は車検証や検査標章で確認できます。
- リマインダーサービスを活用すると満了日を忘れずに済みます。
- 満了日が土日祝日の場合、翌開庁日が満了日となります。
- 2025年4月以降は、満了日2ヶ月前までの車検で有効期間が短縮されません。
- 車検の予約は満了日の1ヶ月前、繁忙期は2～3ヶ月前がおすすめです。
- 車検切れの車でも売却は可能ですが、公道走行はできません。
- 車検の有効期間は車種により異なり、自家用乗用車は初回3年、以降2年です。
- 車検切れは事故時の保険適用外という大きなリスクを伴います。